Jahkingのエサ箱猟盤日記

日々これ猟盤 エサ箱漁りの毎日....。

Kid Thomas

2009年07月03日 | Blues,R&B,Gospel
1,Here's My Story/Kid Thomas (Wolf) 1CD 740円
50年代から60年代にL.A.を中心に活動をしていたシンガー/ハーピスト、キッド・トーマスが1960年にL.A.のマイナー・レーベルに吹き込んだ"Rockin' this Joint Tonight"なるをご存知でしょうか?
先ずは聴いてみてください。

Kid Thomas - Rockin' this Joint Tonight


まるでリトル・リチャードがハープを吹きながら歌ったかのような凶暴無比なクレイジーR&B。この曲は今やブルース/R&Bファンのみならずロカビリーからガレージ系R&Rのファンからも好まれていてその総本山とも云うべきあのNorton Recordsはアナログ・シングルで再発しています。また、65年に吹き込んだ"Wail Baby Wail"という更にギターとサックスまでもが暴れまくる同タイプのハイテンションなロッキンR&Bも残しています(こちらのMy Spaceで聴けます、是非!)。

私が初めてこの人の名を知ったのは少し前にこちらで取り上げた「ブルース-その源流のさすらい人」なるシリーズの第2集「ロンサム・ハーモニカ」に入っていた"Willow Brook Blues"で。実はこの時はこの曲よりもこの人の悲惨なバイオグラフィー(後述します)が印象に残ったのですが。

で 次の出会いは英JSPから出た「Rockin' this Joint Tonight」なるキッドとエース・ホルダーとフロイド・ディクソンの3人を治めたLP。ジャケットを飾っていたキッドのポートレイト(今回入手したCDと同じ写真です)の髪型のユニークさにビックリしたのもさることながらここで初めて上記の"Rockin' this Joint Tonight"と"Wail Baby Wail"というクレジーR&Bと出合ってぶっ飛んだのです。そのLPには60年から68年に掛けて吹き込まれた6曲が収録されていたのですが、先の2曲のほか絶妙なスロー・ブルースからダウン・ホーム・ブルース、まるでバディ・ガイを思わせるシカゴ風のブルースまであってその多彩な顔にゾッコン、キッド・トーマスの名前はしっかり刻みつけられました。

で 今はEl Diabloなるマサチューセッツのレーベルが93年に出した「Wail Baby Wail」なるキッド・トーマスの未発表も含めた全録音を集めた31曲入りのCDで楽しんでおります。

ということでハイテンションなクレイジー・ロッキンR&Bという顔だけでなくダウンホームなブルースマンの顔を持つキッド・トーマスですが、69年の9月にビバリーヒルズで自転車に乗っていた10歳の白人の少年を自動車ではねて死なせてしまいます。裁判でトーマスの瑕疵は立証できず無罪とされるのですが、その翌年の4月に少年の父親に射殺されてしまいます。この父親は一旦は殺人罪で拘束されるもすぐに釈放され、更にキッド・トーマスが勤めていた自動車輸入会社を相手取って訴訟を起こし損害賠償金を勝ち取るという極めて不可解な結末となります。キッドは黒人、射殺した父親は白人ということが背後で作用しているのは明らかでキッドの死は報われない....これが1970年のことです。

キッド・トーマスのディスコグラフィーはこちら

ということで、キッド・トーマスの紹介に終始してしまいましたが、今回入手のCDはオーストリアのブルース専門レーベルWolfが出した同社からの2枚目のキッド・トーマスのCD。1枚目がジェリー・マッケインとのカップリングでオフィシャルに出された45'sの曲を10曲集めたものでしたが、本盤はその57年にFederalで録られた初録音の際のアウト・テイクと未発表曲をあつめたもの。そのFederalからは"Wolf Pack (a.k.a. Wolf Call) b/w The Spell"の2曲、一枚の45'sしかリリースされなかったのですが、その2曲を含み7曲/16テイクが本盤には収録されています。ここではクレイジーなR&Rではなく、レイジーなダウンホーム・ブルースマンとしてのキッドが聴けます。(このアウト・テイク/未発表曲ですが、実は先に書いた私が愛聴しているEl Diabloから出ている「Wail Baby Wail」に収録されているものと同じものでした)

このキッド・トーマス、そのユニークな髪型写真でも知られるのですが、サッパリ頭になった後年の写真はかつてこちらで取り上げたコンピレーションCD「Just Shuckin' Around 1953-1963:Wild and Crazy L.A. R&B」のジャケットを飾っています。


El Diablo盤
Kid


60年代半ばに撮られたL.A.のV.I.P.Clubに出演中のキッドの写真を使った「Just Shuckin' Around 1953-1963」
Kid

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