J’sてんてんてまり

はじまりは黎明期。今は、記憶と記録。

声二題~ヴォイスセラピー

2009年09月27日 | 今回のお知らせ

ヒーリングという言葉が、日本でも使われるようになり始めたのは、いつのころだったか。
経済が物を言う世界から、経済がいやおうなく世界を動かす時代になったころだったか。

日本では、なかなか市民権を得られなかったヒーリングという言葉が、
何とはなしに、説明なしでも済むようになったころ、
「癒し」という日本語が、あっという間に広まった。

”ヒーリングって何?”
”ヒール、癒すってことだよ。”
”癒しか。”

語感で言えば、ヒという音は、日本人には、「暗い明るい」で言えば明るく、
「強い弱い」で言えば、強いイメージがある。
日にも火にも通じ、ヒヒヒヒという笑いはあまりいい気持ちがしないことでもわかる。
音で聞いていると、「ヒーリング」は、癒されない音なのだ。
しかし、説明をする日本語の「いやし」という言葉は、いかにも癒しだ。
強い音はなく、最後の「し」にいたっては、「し~しずかに。。」。の「し」。

受け入れれば広まるのは早い。
あっという間に、まさしく日本中を「癒し」が埋め尽くしてゆく。

「カワイイ」という言葉が、カッコイイもステキもユニークも目立つも、すべての感覚を包含して
本来の可愛いから離れ、新たな言葉になったように、
「癒す」「癒し」もまた、”くつろぐ”や”ほっとする”や”和む””落ち着く”などに充てられるようになった。

治癒が必要なほどに傷ついているのではなかろうに、何が癒されるのだ、と、
「癒し」の大切さを思えば、少しあほらしくテレビを眺めることがある。

「癒し」を知り、癒すことの難しさと癒されるありがたさを知る人々は、簡単には癒しとは言わない。




ヴォイスセラピーの上藤美紀代さんが持ってきた一枚のCDから歌が流れてきたとき、
さかむけのできた心を、柔らかく撫でてゆくような歌だな、と思った。

静かに、決して張り上げない抑えた歌声、しかし、芯が通りふくよかな中音域、
ふと気づけば、いつの間にか歌が聞こえてくるような、心を荒げない歌声。
穏やかなのだ。

職場の関係で知り合った二人が、今、声で結びついている。
今日は静岡市の江崎ホールで、歌の堀江きよさんと、ヴォイスセラピーの上藤さんのコンサートが開かれた。
はじめに歌を届け、次に声の大切さを話し、最後には、観客を交えて、全員で歌を歌う。
そんなコンサートを開いて3回目。

上藤さんは、放送局のアナウンサーを経て、父親の介護に携わった。
その折に、声が何如に大切かを、実感する。
そして静岡大学のヒューマンコミュニケーション学科の新設時に、
コミュニケーションに関することなら何でも、という文字に誘われて入学、
自身で、声の持つ癒しの力を研究するヴォイスセラピーを、始めることとなる。

声を出す楽しさを味わうこと、相手にとっての優しい声を出すこと、人の話に耳を傾けること、
この三つを柱に、朗読や、傾聴、声の響かせ方の実践などを行っている。

医療の現場では、病を持つ本人もさることながら、周囲の介護をする家族、看護士などから感謝が届く。

静岡市葵生涯学習センターでは、講座が用意され、
そこで学んだ人々が、その後も集っては勉強会を開き、社会に還元しているのだそうだ。




秋からは、子供のためのヴォイスセラピー講座が始まっている。

子供たちは、昔も今も変わらず、そして私たちと同じように、たくさんの感情を抱えている。
しかし、それを表す方法が、今、手に入れられない、学べない社会になっている。
内にあるものを外へ出せない苦しさ。
それが続けば、やがて、感情に向き合えず、細やかに表すこと適わず、感情の起伏だけが著しい人物になってゆく。

キレるとか、すぐ爆発するとか、楽しいのかどうかわからない、とか、
彼らの話を聞いていると、自分の感情に言葉を与えられない事態が招く切なさや、
分かり合うことが困難な原因が見えてくる。

上藤さんの講座では、子供たちに、いろんな声を出してもらい、いろんな響かせ方を体験してもらい、
声を出すって、ほんとに楽しい、と思える時間をすごしてもらっているそうだ。
これから回を重ね、ますます生き生きと、子供らしい笑顔に満ちた自分を発見してゆくのだろう。

家族が多く、いろんな立場の人間が一つ屋根の下に住まい、
近所を歩けば、さまざまな人間が同じ地域に住んで、声を掛け合い、
学校や遊びの時間は、年上の子供が下の子供たちと群れなして集団でいた時代、
子供時代に、コミュニケーションを習うともなく習っていた。

現在は、とにかく子供のころに、生き物として大切なことを身につける機会も時間も、少なすぎる。
上藤さんの活動は、今、まさしく必要とされる仕事となってゆくだろう。

日々を穏やかに過ごしたい。

本当は、人間の願いって、そんなものなんじゃないだろうか。
そして、それは案外ちょっとしたことで、実現が可能なんじゃないだろうか。

そこを思い出させてくれる活動でもあろうと思うのだ。

堀江きよ、上藤美紀代。きよとみきよ。
この二人の活躍は、今後、目にすることが多くなりそうで、楽しみだ。



◎こころを癒すヴォイス・セラピー入門 上藤美紀代
https://audio.shosai.ne.jp/asp/itemdetail/MB20061100218281204501P01/

◎堀江きよ ウェブサイト
http://www4.tokai.or.jp/kiyo/




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