『全員悪人』村井理子
なかなかすごい本でした。
翻訳家の村井理子さんが書いた、リアルな認知症介護の本。
というと、こんな時はこんな風にしたらいいとかいう本かと思うと、びっくりします。
この本の主人公はまさに認知症になったお義母さん。
お義母さんの思考をそのまま書いている。
そのままと言っても、村井さんが観察した事を書いているのですが、とてもリアルです。
認知症になった人はこういう風に感じて、考えているのかというのが納得できて、ある意味とても怖いけれど、ご自分の中では筋が通っているんだなと。
そして、それまで生きてきた間のこだわりや執着が出てくるのがわかったです。
このお義母さんはとても真面目な人で、それまでちゃんと生きてきているってことがわかる。だからこそ、その部分が災いしてしまうというのが 認知症という病気なんでしょうね。
全員悪人に見えちゃうのに、本当に悪い人は悪人に見えないという矛盾。。。
これを読むと、切実に親の事や自分の将来を考えさせられました。
それにしても、村井さんがお義母さんに対して冷静にそして親切に対応していて、その上よく観察しているのが素晴らしい。
義理のお母さんだからこそ、ある程度客観的になれるというのもあるとは思うけれど、誰かが感情を抑えて必要なことをやっていかないといけない。そして、本当のところはもちろん分からないけれど、困った事言ったりしたりすると思うだけでなく、どうしてそういう事になるのかをよく見て、またよく調べていると思います。
どうして急にお義父さんをなぐちゃったか?というのも、すごく唐突に見えるけど、こういう気持ちの動きがあったのかと思うとなるほどと思うけど、これは困るな〜〜。
とにかくこの本は認知症になったらどうなるの?という事をすごくリアルに書かれていて、これからの人生にすごく役立つ本でした。
この本のお義母さんはとても真面目な方のようだけど、私のようなあまり真面目でない人はどんな感じになるのかな?と思いました。
真面目でない方がもっと大変なのかな?
とにかく、この本は認知症の方が身近にいる方、これから認知症になるかもしれない方も読んだら参考になると思います。ということは、全ての人ってことになりますね。
同じ著者の『兄の終い』も最近読みました。
kindleで期間限定ですごく安くなっていたので、kindleで読みました。
こちらは実の兄の事を書いたものですが、こちらも凄くリアルで、シビアなお話です。
別の意味で人生を考えさせられる本ですが、こちらでも著者の判断力が素晴らしいし、本当に困った人に対して思う気持ちが手にとるようにわかるのと、その哀しみがひしひしと伝わってきました。
村井さん、色々あって大変だったんだなあ、と思った2冊でした。