身体の景色 (karada no keshiki)

久しぶりに鮮明な夢をみた

夜だった
おそらく深夜なのだと思う

そこは住んだ記憶のない家屋であった
僕は1階にいて 旧友が2階にいた

旧友は2階で稽古をしていた
その声が大きいので僕は注意をしに2階へいった
旧友は次の舞台の説明を僕にしてくれた
どんな劇場でどんな俳優とどんな演出で上演するのかを

そこにもうひとり知らない俳優がいつの間にか現れ じっと僕を見ていた
僕はその知らない俳優に見られている違和感を覚えながら旧友の話を聴いていた

次の瞬間 突然僕は1階に戻っていた
窓には大きな大きな月が浮かんでいた
僕はその大きな大きな月を見ていた
旧友がやはり僕に話し掛け続けている
僕は適当な相槌を打ちながらずっと大きな大きな月を見ていた
僕の知らない俳優はやはりじっと僕を見詰めていた

月がゆっくりと まるで風船のように動き始めた
僕らの家の周りをぐるりぐるりと
初めは慎重に やがて大胆に それはいつしか速度を増していった

たくさんの月の破片が 火球となり僕らの家屋の周りに落ち始めた
ひとつ またひとつと 火球は僕らの家屋の周りにある家屋を焼き尽くしてゆく
僕は瞬きもせずその光景を見詰めている

火球は地上に流れるように横滑りするように
あまたの家屋を押し潰し薙ぎ倒し焼き尽くしてゆく

僕らは避難をする
僕は不思議なものを手に避難を試みる

僕の手には 小さな小さなポーチ
そのポーチの中には何故かペンチが入っていた (その他にも何かが入っていたのだが思い出せない)

避難所(古い映画に出てくる宇宙船内を思わせる無機質な白い空間であった)では避難してきた人たちがゲームをしていた
芸能人のような人が司会を努めていた

「娯楽が人々の不安を消し去ってくれているのよ わかる?」
見たことはあるが名前の知らない可愛い女優が僕の耳元で囁いた
彼女はとても親しみを込めて僕に微笑んでくれた

しかしその次に瞬間 その可愛らしい女優は
旧友と話している時にじっと僕を見詰めていた僕の知らない俳優になった

その僕の知らない俳優は僕に言った
「それがお前に出来るのか?いまのお前の方法でだ」

僕は「できる」と答えようとしたが声が出ない

僕のかわりに旧友が答えた
「できる」

僕は声がする方を見るが 旧友は居なかった

そこで夢は終わった

【語り 配信中】
珠玉の短編 声と音 想像力が織り成す豊かな物語を是非
⬇⬇⬇

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言葉の景色

短編小説を使ったささやかな語りの世界を 継続的に発表してゆきます 速度と軽快さに満ち溢れたこの膨大な情報世界に 静寂と余白の向こうを見詰める...

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