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ワシントンDC駐在員が見た素顔の米国

ワシントン・ポスト紙の読み方

2008-01-21 19:55:35 | 米メディア
米国政治を理解するためには、何はともあれワシントン・ポスト紙(以下、ポスト)を読むことが必須となる。新聞なので、使われている英語はそれほど難しくない。しかし、通信社電(APやロイターなど)に比べると読みにくいかもしれない。一本の記事が非常に長いから、読むのがおっくうになることもあるだろう。

でも読まざるを得ない。最も重要なポイントは、事象を流れのある動きとして説明している部分をしっかり把握することだ。ニュース記事は通常、現状を分析する際に、過去の経緯や今後の展開を紹介するものだが、ポストはこうした流れをうまく解説してくれる。特に、今後の展開についての記述は参考になる。日本の新聞記事だと、こうした流れがうまく伝えられていない気がする。「岐路に立たされている」とか「正念場」とか「予断を許さない」といった情緒的な表現でお茶を濁しているケースが多いのではないか。

流れを解説してくれる点では、ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルなど他の米主要紙も同様なので、別にポストにこだわる必要はない。ただ、米国政治のカバレッジではポストが質量ともに他紙を圧倒しており、米国政治を詳しくフォローしたい向きには同紙がベストだろう。

ポストなどを読む際の注意点として、米紙の党派性がある。リベラルなポスト、超リベラルなニューヨーク・タイムズは民主党寄りだし、保守的なウォール・ストリート・ジャーナルやワシントン・タイムズは共和党寄り、といった政治路線の違いを頭に入れておかなくてはならない。各紙とも、それぞれの政治路線に従った記事を掲載するのが普通だし、それぞれの路線に読者を誘導しようとして記事の書き方にも様々な工夫を凝らす。日本の新聞のような客観報道はあまりない、と考えた方がいい。

難しいのは、先に説明した事象の流れの記述なども、読者を誘導するために意図的に事実関係をゆがめた書き方をしている場合があるかもしれないということだ。大統領選でのネガティブ・キャンペーンは有名だが、それほどあからさまでないにせよ、本質的には同じことが新聞紙上で毎日展開されていると思えば間違いない。こうしたブービー・トラップをかいくぐりながら、真実を読み取るのは簡単ではない。筆者にもできない。「ワシントン政治を見る眼」(中公叢書)といったガイドブックを頼りに、少なくとも見当違いな見方だけは避けようとしてもがくのがせいぜいだ。