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鉄道と都市のサイト「Web-Rail.com」、その模型サイト「Web-Rail MODELS」の管理者「ワシ」によるブログです。

尼崎事故とJR西日本

2005-04-28 15:40:07 | Weblog
尼崎事故の凄惨な現場をテレビやWebで見る度、ワシのJR西日本に対するイメージが少しずつ変わっていく…今はそんな状態である。そもそも、「アーバンネットワーク」と称する快速列車網を初めとした本業での積極策は、JRグループの中では際立っていると思っていたし、1鉄道ファンとしてJR西日本の列車に乗っているのは楽しいという印象が強かった。

「新快速」に乗って東海道線を疾走する、あの爽快感。上りで芦屋の駅が近づくと、先行していた「快速」をジリジリと追い上げ、同時にホームへ進入し停車。これが新快速と快速の接続となる。次に停車する尼崎もそう。
ところが尼崎は東海道線に加え、福知山線からJR東西線へのラインも合流し、ともすれば3列車同時進入で接続をとる事もある。こうした、文字通り「寸分違わぬ」列車ダイヤをスマートに利用できた時の爽快感は、まるで「義経の八艘飛び」を味わったかのようなもの。が、こうしたダイヤがある意味、今回の悲劇に加担したと言えなくは無い。

何故、今度の事故を起こした運転士は、問題のカーブで速度超過をしてしまったのか…その理由として、まさに次の尼崎での接続に遅れを生じさせたくないという意識は、間違いなくあったのではなかろうか。そう考えると、ある一面利用者には爽快なJR西日本の現行ダイヤが、もしJR東日本的な「余裕のヨッチャン的ユルユルダイヤ」であったなら、起こり得なかった悲劇なのかも知れない。

そうは言っても、ワシ的には、問題の本質は他にあると思いたい。
一つ手前の停車駅である伊丹で、問題の列車は40mものオーバーランをしている。2車体分もの距離のオーバーランを考えると、運転士は居眠りをしていた可能性が無いとは言えない。この運転士は過去に3度の処分暦があると報道されているが、驚くのはそれだけではない。前日から途中の小休止を挟みながら20時間もの連続勤務中であったそうで、当日は朝から既に3本目の列車を運転しており、まさに事故を起こした列車で京橋まで乗務すればその日は終わりだったという。

伊丹を出ると、問題のカーブ直前までは制限120キロの直線がちなコース。加速を終えて次の制動まで、しばしウトウトしていた可能性もある。脱線の原因としてカーブ途中の非常制動が挙げられ始めたが、はっきり意識して100キロ以上でカーブに入ったとすれば、そこで非常制動を掛けるのは通常の意識下ではないだろう。カーブ進入時の横動に驚き、目を覚ますと同時に非常制動を掛けたのかも知れない。このあたり、あまり想像だけで発言してはいけないだろうが…

いずれにしても、運転士が眠気を感じていたとすれば、そうした勤務実態の方がダイヤよりも問題ではないだろうか。更に、この4月からは秒単位で遅れを申告する制度も始まっていたらしい。ダイヤを守らせる事自体は、安全性を重視する事とは矛盾しない。しかし、勤務実態が現実離れしている中で、ダイヤ上の遅れを頻発させた者に精神論で再教育したり、果ては給与カットまでされてしまうのでは、本来、鉄道マンとしてのプライドや誇りで確保すべき乗客の安全を守る事が不可能になってしまう。

鉄道界全体に衝撃を与えたこの事故が、JR西日本自体に与える影響は甚大であろう。しかし、ワシは思う。どうかJR西日本最大の旅客サービスであり、ビジネス的積極策としての列車ダイヤ自体が、誤った認識の下でその良い面までも失わないようにと…