囲碁の果樹園(囲碁の木がすくすく育つユートピアを目指して)

人間とAIが集い囲碁の真理を探究する場の構築をめざして、皆様とともにその在り方を探っていきます。

強くなるための方法論

2018-04-08 08:22:27 | 実験

前回(キリコミ)の続きの変化を検討しますが、ちょっと一言はさみます。

朝日新聞デジタルの4月2日の記事で、将棋の藤井聡太六段の「強くなるための方法論をしっかり考えないといけないのかな、と思う。」という発言を読み、感銘を受けました。囲碁将棋を問わず、プロであればだれでもどうやったら強くなれるかということは常に考えていることとは思いますが、「方法論」という言葉を使ったところに、他にないものを感じます。

その後、藤井六段の朝日新聞への寄稿が掲載され、方法論という言葉の背景や意図が少し明らかになりました。勉強方法を変えることによって三段当時の伸び悩みから脱却してその後の飛躍を成し得たという体験が、方法論を意識する根底にあるようです。そして、「今後さらなる高みを目指していくためには改善すべき点をしっかり見据えて、自覚的に取り組んでいくことが必要だろう。」と述べています。今の勉強方法そのままで努力を続けたとしても、他を圧倒する存在になることは間違いないと思われる少年棋士が、その勉強方法の改善にも意識して取り組むと言っているのです。どこまで高く飛翔してくれるのか、大いに楽しみです。

囲碁界でも、これを機会に方法論についての議論が活発になるのを期待します。世界という舞台を持つ囲碁の世界では、方法論の検討を個人だけにまかせるのではなく、組織としても取り組むことが必要に思われます。

さて、前回の続きです。図1の白1と押す変化です。

図2Aの黒2に白3とハネて、黒4と受ければ白5と黒の4子を制することができます。黒のつぶれかと思うとそうでもありません。黒6とマゲた後、同図Bの白1とノビルと黒2のカケがぴったりです。黒8まで進んだ後、同図Cの白1と頑張ることができません。黒2から4で、黒の4子が生還してしまいます。

図3のAの白1と根本をツグところでしょう。天頂の囲碁7の評価は黒50パーセントでぴったり互角です。白が1手多いにしても白地が大きく見えて、この形勢判断は俄かには信じられないのですが、同図Bの2段バネ定石と比較すると、そうかなという気もします。Aの方がBと比較して、隅の地が若干損していますが、中央への発言権は幾分まさりそうです。天頂の囲碁7は、図1の配置で図3Bは黒49パーセントと評価し、黒満足という定説に若干不同意のようです。

 

もちろん、黒の立場としては、図2白3のときに、図4の黒1とこちらを助ける方が普通でしょう。白2から4と2子を取ったときに、黒5からアテルのが筋が良いようです。同図Bの白1ツギならば、黒2と開いて、黒満足です。絶対のアタリの効き二通りを選択できるのが自慢です。白としては、同図Aのまま手を抜きたいくらいですが、黒は同図Cの黒2の方から切って中の白1子を切り離す厳しい狙いが残ります。

結論として、黒の三々入りに対して2子頭ハネからキリコンで行く白の工夫は、(特に黒のシチョウが良い場合は)あまりうまく行かないようです。


キリコミ

2018-04-01 09:18:23 | 実験

これもネット碁に現れた形です。図1の右下で白1のハネから白3とキリコミました。右図の前回取り上げた形と似た趣旨で、一子を犠牲に右辺を止めてしまおうという手です。(右図は前回と手順が違っていますが、この手順も自然です。)

こんな意外な手からも、調べてみると実に多くの変化があり、天頂の囲碁7がほぼ互角とする形(黒から48パーセント~52パーセント)がたくさん現れるのに驚きます。

今回の形では、図2の黒1と素直に取っているのもあるようです。右図の白1がなかなか利かないのがポイントです。次に白3と打ってもまだ劫です。

図3Aの黒1とノビル変化が面白い。同図Bのように白がキリコンだ石を捨ててくれば黒も満足です。同図Cの白2から最強にくるのはシチョウの良し悪しが関係します。

図1の局面では、黒シチョウが良いので、図4Aの白1オサエは成立しません。黒2のキリから手順よく黒6まで、白の種石2子がシチョウです。仮に、黒のシチョウが悪いとすると、同図Bのように単に黒4とノビルしかなく、黒8まで一応シボリ形にはなりますが、白良しです。シチョウが悪いならば同図Cの段階で黒4とノビルのが良く、白5の取りならば黒6まで、今度は天頂の囲碁7はわずかに黒乗りです。

図5Aの白1とシボリを拒否すれば、黒2のマガリ、以下黒6までの振り替わりは結構いい勝負のようです。同図B白3とこちらも助けようとするのはどうか。一例として白13までは、黒が打っただけ取られたように見えて、天頂の囲碁7は黒持ち、面白いものです。さて、図4Aに戻って、現実には黒シチョウがよく白1とは打てないので、図5Cの白1と押すしかありません。この後も面白いので次回検討を続けます。

 


ハマリ

2018-03-25 06:43:37 | 実験

下の図はネット碁にあらわれた形です。星への三々入りからの変化で、黒1のツケに対して、白2から4が意表を突きました。

黒は、下図黒1と一子を取りましたが、これがハマリだったようです。

白2から4とツイで、右辺も左辺も止まってしまいました。この形は右方の図のように、白1と白3のさがりが両方利くのが黒にとってつらいところです。黒は、下図黒1のノビがはっきり優りました。

白2から4と隅に食い込まれるのがつらいようにも思えますが、結果の形を見ると黒白同数で、黒は完全に活きていて取られるまでは4手ぐらいかかりそうです。一方の白は発展性はあるものの、まだ眼がありません。

天頂の囲碁7で評価してみると、図2の局面では黒46パーセント、図3の局面では黒55パーセントとかなりはっきりした差がでます。

図2は黒番で、図3は白番という違いには注意する必要があります。そもそも、三々にはいった黒の意図は、先手で隅を活きて、その結果に応じて明確になる大場に先行するというものでした。図2は、先手を取るという意図にこだわったもので、下辺も右辺も大きくなって失敗しています。図3は先手こそ相手に渡しましたが、次にそれほど大きい手がないので問題がないと考えることができます。


コスミツケ

2018-03-18 08:32:34 | 実験

囲碁AIの影響で見直されているコスミツケの手法の機微を、天頂の囲碁7を使って調べてみました。

図1の手順で、黒2と白3の交換は白を強くして悪いというのが古来の通説でした。天頂の囲碁7の候補手のなかにも黒2はいっていません。

そして、図1の局面評価も、読み始めでは黒48パーセントで若干黒不利なのですが、読みの手数が増えるにつれて図2(A)の黒1の評価が高まり、黒50パーセントに改まります。つまり、天頂の囲碁7としては、読んでみると図1は思ったよりも黒にとって有力ということになります。

図2(A)の黒1の後の変化を調べました。基本は、図2(B)の白2という穏健策が全くダメなことです。黒9までの結果は隅の黒地が大きすぎます。コモクのツケヒキ定石から生ずる類似系(C)と比較するとよくわかります。(C)のわかれの優劣は全局の配置によりますが白有力、(B)ははっきりと黒有利です。なお、この(C)で白2と黒3の交換は大きな利かしで、この交換の有無によって天頂の囲碁7の局面評価値に5パーセントの差が生じます。数値の意味や正しさは別として、従来感覚的に表現されていた利かしの効果が数値によって示されるのは興味深いところです。

図2(A)がだめであれば、図3(A)の白2からの戦いが必然に思われますが、ツケヒキ定石の場合とは違い、白からは第三の選択肢として(B)の白2がありました。黒3のワタリを許してから白4のツケは不思議な手順ですが、黒からの最強手段(C)の黒1に対して白2の反発ができるのがミソのようです。白6となれば、白Aと黒Bの交換が見事に働いてしまいます。

 

さらに面白いのは、図3(B)は白4までで一段落で、図4のように大場が優先されることです。

右上の形は新定石になりそうですが、従来の定石と少し違った趣があります。それは、この状態で一段落である、つまり黒からも白からも一手の価値が第一級の大場ほど大きくはない、という判断には深い読みの裏付けが必要だということです。周囲の状況によって読みの結果が変わるため、運用は容易ではありません。囲碁AIの影響で今後開発される新定石では、「定石その後」の処方箋の重要性が増してきそうです。


外切り

2018-03-11 05:31:42 | 実験

しばらくは、淡々とみんなの碁盤を使った検討の実験を続けていきます。

下の図は、前々回に取り上げた芝野虎丸対AQ戦からの変化です。

黒3のハネから5と外を切る変化です。ネット碁でみかけた黒9が特にこの局面では有効そうに見えますが、果たしてどうか。

上図白1のカケツギに対して、黒2のキリを決めてから黒4とあくまで利かしに行きます。利かされを拒否する白5に対してシボッてから黒10のキリ。

上図の黒8までとなったとき、中の黒5子を取りに行くまたは締め付けに行くのは白があまりうまく行かないようです。しかし、白9が冷静で隅の攻め合いは白勝ち。結論は、白良しのようです。

最初の図からのその他の変化をみんなの碁盤で見ることができます。http://igokaju.com/index.php?sequence=ppdppcdcdececfcddggccqdqcpcnbnbmcodndoeodrerenfocrfqdl