冷凍都市通信

映像を中心に都内で活動しているアイスマンの通信

武器とは

2015-10-22 11:35:01 | 日記
カメラで何かを意図的に撮影する。

人物、風景、モノ、何であれ昨今では『撮影』という概念が当たり前になってきている。

僕が映像を始めた4年前ぐらいから見ても『撮影』のハードルはどんどん下がってきている。

それとは反比例に画質の向上や編集機能の充実と簡略化は進んでいる。

誰もが当たり前のようにプロと遜色ない映像を撮影・編集できつつある時代というわけだ。

僕は去年まで一眼レフカメラのレンズを収集することが仕事でもあったし趣味にもなっていた。

レンズの違いで驚くほど描写力も変わってくる。

逆にしっかりとした機材と知識があれば個人でも素晴らしい映像が作成できるという楽しさがあったからだ。

デジタルの進化に人間が追いついていない。

そして僕はむやみやたらに追いつく必要もないのではないかとここ最近は感じている。

スマートフォンという画期的なアイテムは今も進化を続けている。いまや4Kの映像も撮れてしまう。

絶対的な素人とプロの差というものは無くなりはしないであろう。

技術の向上は必要不可欠である。それこそ手に職をつけているような場合は。

しかしもっと必要なことは時代の流れを先読みする能力である。

まぁこれは自分の意思で生きて行く、自分で仕事を見つけていくような人間の場合であるが。。。

しかし仕事という人生の大半を費やす作業において、そこにもはやプライベートと仕事の差などないほうが良いのかと思う。

なぜならどちらも自分の意思で生きるというのは必要最低限の能力であるから。

話を戻そう。

「技術の向上」これを僕は学校の勉強のように科目として捕らえる。

学校と違うのは向上した技術分が仕事やお金といった形で直接的に自分に帰ってくる点だ。

しかし技術だけで人生を楽しく出来るのかというと疑問が残る。

想像力という目には見えない能力の向上こそが楽しむ為には必須なのではなかろうか?

想像し、直感し、行動し、楽しむ。

映像のような人類史でも最先端な技術には想像力を行使し時代の先を見てないといけない気がする。

僕の矮小な想像力は今の重過ぎる機材や大掛かりなセットの撮影などは時代錯誤な感覚をどうしても受けてしまう。

投資をして大作を作る映画のような総合芸術はまた違う分野として扱う。

日々加速度的に情報が溢れ帰るネットという世界観が中心な現代社会において

瞬発的な想像力と行動力が求められているだと思っている。

様々な武器を持って社会と相対する。それがネット社会であろうと会社の中であろうと。

想像力とはもっと大きいものであっていいのだと思う。今日この頃。

アイスマン、2015年、秋、もうすぐ31歳。

最後に舞台は違うが通じるものがあるので一説をご紹介。

漫画「バガボンド」の天下無双人、上泉秀綱の言葉




『技の研鑽は素晴らしい。

 だが心の中は我、それのみであると師は言われた。

 ならば剣とは?

 相手に勝ってやろう

 己の力を

 強さを

 存在を誇示したい

 師は言われた

 そんなことのために剣は

 武はあるのかね?
 
 我々が命と見立てた剣は

 そんな小さなものかね?

 我が剣は、天地と一つ

 ゆえに剣はなくともよいのです。』








ブリングリング

2015-10-18 21:15:47 | 写真館
シネマ週間第四段『ブリングリング』☆☆☆



5人の少女たちは、セレブの豪邸をインターネットで調べ、次々に侵入し高級ブランド服やジュエリーの数々を盗み出す。

という特に『何か』が起きるわけではない映画。事実に基づいた話でもあるからだろうが、

監督のソフィア・コッポラのセンスのみで一時間半見せる力技だ。

現代の若者像といえば短絡的だが、その若者像の中の大人に見えづらい隙間を上手く切り取っている。

本当の友達と呼べる仲間もいなく、ファッションやゴシップネタで承認しあう表層的な空疎な若者。

要所要所に使われるSNSを使用している主人公たち窃盗団。

彼らにとって大切なのは外郭であって内郭ではない。むしろ内郭を装って見えにくくさせることが大切なのだ。

実際に窃盗の被害にあったハリウッドセレブが出ていたりとアメリカならではの演出も面白い。

しかしなんといってもソフィアコッポラで僕が好きなのはBGMのずば抜けたセンスである。

それはヴァージンスーサイズから一貫して変わりない。

彼女のチョイスする楽曲で一気に作品の品質がシャレオツなものへと変化する。

特にオープニングは最高である。久々に開始1分から心を掴まれた。

しかし僕自身、あのような若者の時代が過ぎ去ったからだろうか、あのような物欲的な自己表現をする若者へ共感できなかった。

まぁ共感する必要はないような演出であったが、ただただバカでどうしようもなく反省の色も見えない若者の話。

といったらそれまでだが、これは現代の空疎化する若者への警告としても映っているのだろう。

結局のところ欲望は果てしなく、自己を保管するには遠く至らないのだ。

けどこの作品を見て、数年ぶりに洋服を買いに行きたくなってしまった僕がいた。

こういう若者を描く監督の中でいつもクールな演出をするソフィア・コッポラの映画を僕は見続けるんだろうなと思った。






特殊メイク

2015-10-16 09:43:57 | 写真館
先日撮影で日本を代表する特殊メイクアップアーティスト「百武さん」に

ハロウィン企画でモデルの女の子に特殊メイクをしてもらった。

百武さんは最近では映画の『寄生獣』や『進撃の巨人』などの特殊メイクも手がけている。

実際にすごかったのは、モデルの造形を崩すことなく、あっという間に仕上げるスピード。

気がついたらリアルなグロさや怖さが表現されている。

しかし本人らしさを消すことはしないのでどこか可愛らしい感じ。

様々な職種の一流と呼ばれる人がいる。

何かを極めるということは芸術と呼称できるのだなぁ、と思い耽る。

想像力を刺激し感性を磨き続ける。

僕の中に常にある「モノ作りとはなんぞや?」というテーマにまた一つ

回答に近づく刺激をもらえたのであった。













キッズ・リターン

2015-10-08 20:39:46 | 写真館
シネマ週間第参段『キッズ・リターン』☆☆☆☆☆



1996年に公開された北野武の6作目となる監督作品。

さまざまな青年たちが大人の世界に踏み込み、さまざまな現実に直面する模様を描く青春映画。

高校三年生からそれぞれの夢への軌跡と挫折がここまで見事に描けている作品は少ない。

特に新人の安藤政信は男目線からもカッコいい。

そしてこの不良の世界とユーモアの融合。北野武の得意技。

彼らは些細なことで夢を描き、些細なことで夢を諦めてゆく。

そんな「些細」がこの十代の頃は何よりも重大な価値観だったりするわけだ。

主軸におかれた「マーちゃん」と「シンジ」の兄弟分な友情は男にとってはその重要さが痛いほどわかる。

そこに友情があるからこそ夢も追える。あいつも頑張っているから俺も頑張る。

お笑い芸人を目指すコンビ、ボクサーを目指す不良たち、勤めだしタクシーの運ちゃんになるもの。

多種多様な十代の若者たちがそれぞれの舞台を見つけていく。

エンターティメントの中でも重要な役割である成長物語。

成長はひとえに大きくなるためだけではなく、大きな挫折や間違いも孕んでいる。

ただ僕らいつだって其処から第一歩目を踏み出すことが出来る。

若者たちの名シーン、名台詞であるラストシーンは映画史にずっと残っていくことだろう。

僕だっていつもまだ始まってもいないと自分に言い聞かせる。

そしてそんなことが言い合える、バカができる友達がいたことに感謝する。

そんなほろ苦い青春を彩る久石譲のメインテーマが恐ろしい程ツボにはまる。

出演者、脚本、構成、音楽、どれもが僕の原点の一つになっている。

☆五つは必然でしかないのだ。

何かのきっかけにこれからも見直すことであろう。


スカーフェイス

2015-10-01 10:50:55 | 写真館
シネマ週間第二段『スカーフェイス』☆☆☆



1983年のアメリカ映画。監督はブライアン・デ・パルマ、主演はアル・パチーノ。

なりあがりギャング映画のお手本のような映画。

ゴッドファーザーシリーズのパチーノのキャラとは打って変わって本作では気性の荒いチンピラヤクザ役だ。

この時代はカストロの革命のおかげで様々な移民と犯罪者がアメリカに入り込んだ。

そんな時代の革命とマイノリティの雰囲気とテーマソングが最高にマッチングしている。

トニー・モンタナ(アル・パチーノ)が麻薬の運び屋から一気に大富豪の麻薬王までのサクセスストーリーの疾走観は未だに気持ちよく見れる。

ただしトニー・モンタナの若干気性の荒すぎるところが共感性にかける。

というかあそこまで様々な人間に牙を向き殺戮するチンピラは、帝王に行き着くまでに確実に殺されているだろう。

トニー・モンタナは持ち前の正直さとガッツでまっすぐに進んでいく。80年代のゴージャス感もまたノスタルジックでよい。

家族を大切にするがゆえ起こってしまう悲劇。親友を手にかけるトニー・モンタナは駄目なジャンキーとしか映らない。

しかしどうしようもないからこその映画史に残る壮絶なラストシーン。

男は決して曲げてはいけないものがあるということを死ぬまで魅せ続けるトニー・モンタナの姿を見るだけでこの映画の価値はあると思う。

かりそめに映る"The World is Yours"(世界はあなたのもの)。(ラストシーン)

僕のような東京の田舎から常に少数派に属してきたものにとってはバイブル的に映るのも致し方ないだろう。

映画全体のクオリティは低いと感じる。しかしテンションは確実に上げてくれる。

主人公は物凄くきつい暴力的な男だが、常に自分に対しては正直以外の何者でもない。

この映画を見る価値はトニー・モンタナの実直な暴力、彩る音楽、ラストシーン。

それだけで☆三つの価値があると思う。