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さよならの儀式 宮部みゆき

2020-03-24 | 

SF短編集。宮部みゆき作品の後味が好きだ。真っ暗な気持ちになったままではなく微かな希望が残る。

児童虐待の蔓延る社会の、ちょっと先の未来を描いた「母の法律」。マザー法という法律が施行されている社会。その反対派と被虐待児の心の内を描く。ラスト、これってどっちがどっち?という疑問を読者に与えたまま物語は終わる。ジワジワ来る一篇。もしかして、化かされた?という心持ちにもなる。

途中から奇妙なジュブナイル風味の「戦闘員」。日常の怖さ。

「わたしとワタシ」は、中間地点でさらっと読ませる。過去の自分と45歳の自分。諦観?いいや、受容だ。

表題作の「さよならの儀式」

家事ロボットの廃棄現場にいる「俺」という人間と、ハーマンというオンボロロボットと最後の別れをさせてくれと言う女の子。

ロボットを作ったが故に、人間がいた場所にロボットが嵌ってしまって居場所を失う人間。なんという矛盾。

ロボットと人間の共存・矛盾というテーマはラストの「保安官の明日」でも描かれる。

「海神の裔」は第二次世界大戦を模した戦争の中、屍者という死体を使って作成された兵士がとある漁村に流れ着く。村人からの聞き書きというテイで描かれる屍者の最期。

 


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