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さよならの儀式 宮部みゆき 感想パート2

2020-03-27 | 

『星に願いを』しっかり者のお姉ちゃん。妹、離れて暮らす離婚した父、母、学校の教師。お姉ちゃんは毎日頑張っている。そんな日常に宇宙人がスルリと入り込んできてからの展開。宇宙人が寄生するとものの見え方が変質する。その恐怖。宇宙人を、他のものに置き換えて考えてみても怖いストーリー。

『聖痕』とある調査事務所に訪れた初老の男性。彼が語るにわかには信じ難い話。しかし調査事務所の所長はその話をなぜかよく知っていた。

『聖痕』は

ガッツリ正面から、オカルティックなテーマを描いている作品だと自分は受け取ったのだが

読みようによってはこれはすべて登場人物らが見ている幻覚だとも取れなくもない。

児童虐待、毒親、カルト宗教とその教祖という素材などを極めて今日的な解釈で描き出す一作。

鉄槌のユダやヨハネの黙示録などという、現代日本においてもさんざん料理され続けているキリスト教の文言が沢山出てくる。

言葉が先だったのか神が先だったのか。言葉が無ければ神を語ることも出来ない?


さよならの儀式 宮部みゆき

2020-03-24 | 

SF短編集。宮部みゆき作品の後味が好きだ。真っ暗な気持ちになったままではなく微かな希望が残る。

児童虐待の蔓延る社会の、ちょっと先の未来を描いた「母の法律」。マザー法という法律が施行されている社会。その反対派と被虐待児の心の内を描く。ラスト、これってどっちがどっち?という疑問を読者に与えたまま物語は終わる。ジワジワ来る一篇。もしかして、化かされた?という心持ちにもなる。

途中から奇妙なジュブナイル風味の「戦闘員」。日常の怖さ。

「わたしとワタシ」は、中間地点でさらっと読ませる。過去の自分と45歳の自分。諦観?いいや、受容だ。

表題作の「さよならの儀式」

家事ロボットの廃棄現場にいる「俺」という人間と、ハーマンというオンボロロボットと最後の別れをさせてくれと言う女の子。

ロボットを作ったが故に、人間がいた場所にロボットが嵌ってしまって居場所を失う人間。なんという矛盾。

ロボットと人間の共存・矛盾というテーマはラストの「保安官の明日」でも描かれる。

「海神の裔」は第二次世界大戦を模した戦争の中、屍者という死体を使って作成された兵士がとある漁村に流れ着く。村人からの聞き書きというテイで描かれる屍者の最期。