“何かに凝る”ということは、人間いくらでもある。ある技能を身につけることに凝ればその領域の職人に、ある分野の知識習得に凝り努めれば学者になれる。そういう凝り方は病気とはみなされない。しかし、「ブランドもの買い物症候群」「グルメ食べ歩き症候群」「不倫症候群」ともなれば、病気である。家庭や関係を壊したり、人を傷つけたりするからである。大平健『豊かさの精神病理』はそれを教えてくれる。 . . . 本文を読む
法律は用語が難しくていやだという人が多いが、法律はことばを現実へ適用するとどうなるかという問題をシビアに思考訓練できるものである。その意味で、現実から遊離したことばの独り歩きを防ぐものとして、誰でも読めば学ぶことが多いはずである。『入門著作権の教室』(尾崎哲夫著)は、入門なので、わかりやすく、しかもインターネット時代の著作権問題を網羅しながら上手に説明している。 . . . 本文を読む
老子の世界を日本語の詩文にして著した、加島祥造著『タオ-老子』誰が読んでも得るものがあるが、特に、指導的立場にあって、リーダーシップを発揮しなければならない人に読ませたい書だ。自分も忸怩たるものありだが、あまりにも逆を行っている人が多いように思うからだ。Tao(老子の教える道)とZen(禅)は、国際語である。加島氏は、西欧文化に広まっているTaoを英語からキャッチしたそうである。 . . . 本文を読む
計見一雄氏、もし自分の心が壊れたらこの人に診察を頼みたいと思う人だ。その著『脳と人間-大人のための精神病理学-』は、私にそういう感想を抱かしめた書である。精神科救急医療という分野の開拓者で、現在も臨床の最前線にいる人だそうだ。本書は、未知の事柄がたくさんある精神医療の現場から、脳科学という近年爆発的に研究が進んでいる分野への深い提言の意味がこめられた書である。 . . . 本文を読む
「グローバリゼーション」といったことが日常語られる。その実際がどうなるか、オーストラリアの例で具体的に語られるのが『多文化主義社会の到来』(関根政美著)である。オーストラリアは「多文化主義社会」でしか国家の発展を望めない国の成立の仕方だった。けれど、世界のグローバル化の中で、多かれ少なかれ「多文化社会」の意義を認めないと国はどこも未来像を描けなくなってきている。日本も例外ではない。 . . . 本文を読む
“The willy-willy and The ant”は、オーストラリアアボリジニのドリームタイムの民話の典型らしい。ドリームタイムというのは、日本で言う神話の時期の物語という意味のようだ。神話の一つなのだろう。オーストラリアには、アリ塚がそこここにたくさん見られる。そのアリ塚がいかに強固であるかのトピックである。 . . . 本文を読む
オーストラリア・アボリジニの民話第3弾“How the Cassowary got its Helmet”である。Cassowaryとは、ヒクイドリ、ダチョウに似た大型の飛べない鳥だそうだ。頭にカブトのようなものがくっついているらしい。Helmetとはそのカブトのことである。そのカブトがどうしてくっついてしまったか、という擬人化した話にして、教訓話にしたものだ。 . . . 本文を読む
オーストラリアの民話第2弾“The Frog who wouldn't laugh”「笑わない蛙」とでも訳すのだろうか。オーストラリアの民話は動物に関するものが多い。自然や動植物が多いことを誇ることだけのことはある。掘り起こされる民話が、現在の環境問題などに触れるようなものが選ばれている感触がある。これもその一つといえる。 . . . 本文を読む
アボリジニの民話と聞いて買ってみたのが、『The Magic Colours(マジックカラー)』熱帯地方の鳥たちのカラフルな色と模様がなぜそうなのかを物語りながら、子どもたちへの教訓が自然に語られている。ヨーロッパ人が上陸した1000年以上も前に存在していたというこういう物語が掘り起こされつつあるのはそんなに古い話ではない。 . . . 本文を読む
故郷は遠きにありて思うもの、というのがあるが、時空を隔てた方が良いものがまだあった。「イルマーレ」は、そういう映画だった。若い人が見るのだろうと思い、入る時気恥ずかしかったが、さにあらず、年代の人も多かった。しかも年代のカップルなども・・・。視てから韓国映画のリメークと知った。かのブームの理由が解けた感じだ。 . . . 本文を読む
サル社会の研究や人類発祥の由来、コミュニケーション力やコミュニケーション表現のサルと人間の比較研究などに造詣の深い著者正高信男氏が著した、IT世間の描写『他人を許せないサル』。若者に限らず、相当の割合のケイタイ依存者がいる日本社会の病理を明らかにしようとした書。 . . . 本文を読む
強いストレス、忙しすぎる仕事、パソコンヤインターネットに浸りすぎの人要注意!「思考が止まる、言葉に詰まる」と副題にある。それが『フリーズする脳』の「フリーズ」の意味だ。年齢がある程度以上の人のことかと思っていたら、意外に若い人も脳がフリーズしているらしい。筆者は脳神経外科専門医築山節氏である。症例に基づいて語られているから分かりやすい。 . . . 本文を読む
脳科学者の脳研究の書は専門的すぎ、こまかすぎて、とても普通には読めない。素人が専門の概念をよく掴んで、噛み砕いて人に説明できるというのは、こういう形でできるのだなと感じ入る。TV放送されたものを書として著したそうだ。『ジュラシック・コード』(渡邉健一著)のタイトルは、爬虫類からの分岐が人間の進化のポイントだという意味。 . . . 本文を読む
またしても内田樹氏である。くどいと思われるだろうが自然と手に取ってしまうのだから仕方がない。『街場の現代思想』タイトルも良い。氏は、若い頃ベンチャー企業にも手を染めたことがあるらしい。学者一筋でなく、いろいろな経験を積んでいることが性根が座っている由来だったかもしれない。『街場』ということばが気に入った。 . . . 本文を読む
拝金主義がいかに人間をダメにし、社会をダメにし、世界をダメにするかを描き、どうしたらいいかを提言する『中学生マミちゃんの大疑問-日本ってお金に復讐されてるの』福田秀樹著。中学生マミちゃんが生活のなかで遭遇するものの考え方、特にお金にまつわる疑問を巡って、解析する体裁で書き進められた書物。変わらなければならないのだが、人間も社会も「変わる」ことの難しさを説く書でもある。 . . . 本文を読む