えもだれ

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だとすぐにわかった

2016-10-26 14:55:56 | 日記


 塔のてっぺんの部屋はひろび公開大學 課程ろとした円形の部屋で、目を疑うちらかりようだった。部屋の中を見まわしながら、ベルガラスの目にうんざりした表情がうかんだ。「こりゃ何週間もかかるな」
 エランドは室内のありとあらゆるものにひきつけられたが、いまのベルガラスにあまり期待できないことはわかっていた。老人はあれこれ見せたり、説明したりする気分ではなさそうだった。エランドは暖炉のありかを見つけ、変色した真鍮のスコップと柄の短いほうきを発見して、すすで黒くなった暖炉の開口部の前に膝をついた。
「なにをしているんだ?」ベルガラスはきいた。
「新しい家へいったら、まっさきにしなくちゃならないのはいつでも火をおこせるようにすることだって、ダーニクが言ってます」
「ほう、ダーニクが?」
「たいていそれはあんまり重要じゃない仕事なんだけど、それがとっかかりを作るんです――いったんはじめてしまえば、残りの仕事はそれほど大変じゃなく見えてくるって。ダーニクはそういうことについてはすごく賢明ですね。バケツかごみ入れのようなものはありますか?」
「どうしても暖炉を掃除するというのかね?」
「あの――さしつかえなければ。だって、すごくきたないもの、そう思いませんか?」
 ベルガラスはためいきをついた。「ポルとダーニクははやくもおまえを堕落させてしまったわけだ。わしはおまえを救いだそうとしたんだが、最後はいつもそういう悪影響が勝利をおさめることになっとるんだな」


「そのようですね」エランドは同意した。「バケツはどこにあるって言いましたっけ?」
 夕方までにふたりは暖炉の周囲を半円形にかたづけ、その過程で一組の寝椅子と、数脚の椅子と、がっしりしたテーブルを見つけていた。
「どこかに食料のた公開大學 課程くわえはないでしょうね?」エランドはものほしげに言った。腹時計がそろそろ夕食の時間であることをはっきり告げていた。
 ベルガラスは寝椅子の下からひっぱりだした羊皮紙の巻物から目をあげた。「なんだって? ああ、そうだな。うっかりしてた。双子のところへ行こう。きっとなにかを料理しとるにちがいない」
「ぼくたちが行くって知っているんですか?」
 ベルガラスは肩をすくめた。「知っているかいないかは本当はどうでもいいんだよ、エランド。友人や家族がなんのためにあるのか、学ばなくちゃならんな――かれらはあてにするためにあるのさ。余計な努力をせずに生きていきたけりゃ、なにはともあれ、友人親戚にたよることが基本ルールのひとつなんだ」
 双子の魔術師、ベルティラとベルキラはかれらを見て大喜びした。そして〝料理中のなにか?はポルガラの台所からあらわれるものにまさるとも劣らないいい匂いのシチューであることがあきらかになった。エランドがそう言うと、ベルガラスはおもしろそうな顔をした。「ポルに料理を教えたのはだれだと思う?」
 ベルディンがやっとベルガラスの塔にたちよったのは、それから数日たって、塔の掃除がだいぶはかどり、十二世紀分の汚れがはじめて床からこそぎおとされたときだった。
「なにをしているんだ、ベルガラス?」醜い小男は問いただした。ベルディンは異常に背が低く、よれよれのぼろをまとって、古いカシの切株のように体がよじれていた。髪もひげも垢でかたまり、小枝やら藁やらがそこらじゅうにくっついていた。
「なに、ちょっと掃除をな」ベルガラスはどぎまぎしたように答えた。
「なんのために?」ベルディンはたずねた。「どうせまたきたなくなるんだろう」カーブした壁ぎわにおいてあるたくさんの古い骨をベルディンはながめた。「おまえが本当にやるべきことは、床を煮とかしてスープの出し汁をつくることだぞ」
「わしに会いにきたのか、それとも文句をつけにきたのか?」
「ここの煙突から煙がでているのが見えたんだ。だれかがここにいるのか、このごみが自然発火したのか、たしかめたかっただけさ」
 エランドはベルガラスとベルディンが本当は相手が大好きなのこの言い合いも、彼ら流の楽しみかたのひとつなのだ。エランドは聞き耳をたてながら、仕事をつづけた。
「酒をどうだ?」ベルガラスがきいた。
「おまえが作った酒ならいらん」ベルディンはにべもなく答えた。「おまえのような大酒のみなら、上品な酒のつくりかたくらいいいかげんにおぼえたらど公開大學 課程うなんだ」
「この前のはそう悪くなかったはずだぞ」ベルガラスが抗議した。
「おれが飲む水だってあれよりはましだ」
「心配するな。この樽は双子のところから借りてきたんだ」
「おまえが借りているのを連中は知ってたのか?」
「だったらどうなんだ? とにかくわしらはなんでも共有しているんだよ」
 ベルディンのもじゃもじゃの眉毛が片方だけつりあがった。「双子は食べ物と飲み物をわけあい、おまえは食欲とのどの渇きをわけあうってわけか。それならうまくいくな」
「もちろんだ」ベルガラスはかすかに傷つけられた顔でふりかえった。「エランド、どうしてもそれをやる必要があるのか?」
 せっせと板石をこすっていたエランドは顔をあげた。「邪魔ですか?」
「あたりまえだ。人が休んでいるときにそんなふうに働きつづけるのは非常に失礼なことなんだぞ、知らんのか?」
「忘れないようにします。どのくらい休む予定ですか?」


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