ひよひよ日和、書き日和

並がいい……けど大盛でっ。
リボ話中心……だったけど今はうたプリかもっっ。

瓜と獄寺君そのさん。

2009年07月28日 |   小話-瓜と獄
 梅雨の合い間な今日の午後 (瓜獄で5題より*瓜獄同盟さん


 
03 炎不足


 びちょびちょに濡れたからだ、拭いてもらうのはママンがいい! きょうこでもいい! って思って勢い良く逃げ出したトコで、
 ……にょお?
 かくん、て前足にちから入らなくなってつんのめってコケ、た。
 にょおお?
 勢いが付いてて止まれなくて、縁側からたたみの上、ごろごろ転がってテレビの台にぶつかって止まった。
「……にょっ!?」
 ぱちぱちまばたきして、現状を把握する。
 今、なにが起こった!?
 あおむけで、大の字で、片足テレビの台にひっかけたまま呆然としてたら、つなのママンにやさしく濡れたからだふきふきされる。
 ふきふきされるのが気持ちよくて眠たいみたいな感じ、なんだけど、なんかちょっと気持ち悪い、気も、する。……にょほん……?
 からだにちから入らなくて、ママンにされるがままにうにょうにょする。だるだるする。
 この感じは、あれだ。
「にょぉ、にょぉ」
 拭いてくれてるママンの手、ニクキュウでぺちぺちする。ごくでら、ごくでら呼んでー。
 ママンは、あらあらどうしたの? って頭撫でてくれて、それから両手でぶらーんて抱っこして、どうしたの? ってのぞき込んできたから、にょおん、てないたら、そういえば猫ちゃんのおやつまだだったわねーっていそいそキッチンに行った。
 ……にょぉ。
 お、や、つ。
 おなかへった、ことは伝わった。けど。
 ママンに抱っこされなくなって、たたみの上にぺったり伸びる。尻尾ぺしぺしして探してもごくでらいない。
 ごーくーでーらー。
 おやつのミルクもにぼしもおしいいけど、そうじゃなくて、それじゃなくて。
 火ぃくれ!
 ……て、前にいったら、それ聞いてたナッツが、瓜もタバコ吸うの!? ってびっくりしてた。つな並の思考回路だと思った。次郎はそういやはらへったなー、てのんびりしてた。やまもと並ののんびりだと思った。
 とか、思い出してる場合じゃなくて、おなかとせなかがひっつくー、ごくでらどこいったー、死ぬ気の炎よこせー。力なく両手、ぱたぱたたたみ叩いたら、せなかなでてきたきょうこが、
「ツナ君の炎じゃダメなの?」
「えー、ダメなんじゃないかなあ。クロームのフクロウみたいに属性変わっちゃったら大変だし」
「そんなことあるんだね?」
「あるみたい」
 獄寺君、ホースしまいに行っちゃったんだよね、早く戻ってこないかなあ。
 つながぼやくのを聞きながら、このさいなんの炎でもいいからくれ! って思ったけど、
「………………にょおん」
 ごくでらがさっさと戻ってくればいいだけだ、とかも思う。
 思ってたら、十代目片付け終わりました! ってこっちは死にそうなのにバカみたいに元気にごくでらが戻ってきて、このやろーーー、って飛びついた。
 ほのおよこせーーーー。
 顔面にミラクルジャンプで飛びつくつもりだったのに、ちから足りなくて、ごくでらの腹にひっかかった。爪立ててしがみついて、尻尾ぺちぺちして、ほ、の、お、ほ、の、お!
 死ぬ気で催促してるのに、ごくでら、
「あぁ?」
 なにやってんだ、って、か弱い子猫を! 愛らしい子猫を! ぺって振り払った! ぺって!
「んにょ!?」
 あまりの仕打ちに、ぺってやられたまま、ぺってやられた先の縁側でにょにょと打ちひしがれる。おなかいっぱいだったら五十倍返しくらいしてやるトコだけど、なんかもうその気力もない。
 にょーーーーー。
 このままだともうすぐ、じ、えんどおぶ、おれ!
 みじかい生涯でした。いままでありがとう。ごくでらのせいでぐっばいです。
「……なんか変わった芸風でスネ始めたから、獄寺君、炎あげてあげてよ」
 つなに抱っこされる。ごくでらに差し出される。
 ごくでらは面倒そうにタバコくわえて、
「今のうちに匣にしまっちまいます」
 あ、そう? ってつなはそれもいいかもって納得しかける。こら待てつな! そこ納得するとこと違う!
 にょっ、にょっ。
 匣はいやだー。死んでもいやだー。ころすならシャバでころせー。助けろー、たすけて、きょ、う、こ。
 うるうるした目で、一番まともそうなきょうこにたすけもとめたら、愛らしさが伝わったのか、哀れさが伝わったのか、なんかわかってんのかわかってないのか、
「ツナ君のお母さんがおやつ持ってくるから、急に瓜ちゃんいなくなっちゃったら変だよ?」
 ナイスなこといった! 
 ごくでらは、猫が気まぐれにどっかいったっておかしくねーじゃねーか、とかいいながらも、そのあほでゆたかな想像力で、あら猫ちゃんいなくなっちゃったの? とがっかりしたママンを思うい浮かべて、しょーがねーなー、ってリングに炎、灯した。ぼんごれリングに。ぼんごれとか、どーでもいいけどっ。
 ほのお!
 いただき!
「にょおん!!」
 復活!!
 猫ちゃんおやつよー、ってママンがちょうどきたから、ごくでらの横っ面両後ろ足で蹴飛ばしてママンに飛びついた。勢いでよろけたごくでらが、ごくでらを助けようとしたつなと一緒に庭に転がった。
「にょおおーーん」
 ざまーみろーーー。

瓜と獄 そのに。

2009年06月26日 |   小話-瓜と獄
 梅雨の合い間な今日の午後 (瓜獄で5題より*瓜獄同盟さん



02 不器用なてのひら 

 にょにょっ!??
 ものすごく目覚めよく目を覚ましたら、なにかが背中に乗ってて、なんだこれってあばれたら、なにかにぐるぐる巻きにされてさらにあばれたらどうにもこうにもどうにもならなくなって、
「にょーーー! にょーーー!」
 なんだこれーーーー、て叫んだら、
「うっわ、なにやってんのおまえ」
 ちょっとおとなしくしてて助けてあげるから。言われてしぶしぶちょっとだけおとなしくしたら、つなに救出された。ぺらぺらの肌掛け、から。
 ……にょうん?
 肌掛け……?
 さっき、つながごくでらにかけたやつ、が、かかってた。ごくでらに、じゃなくて。
 ごくでら……。
 にょおおお?
 ごくでら、は?
 尻尾でぺしぺし探しても、ごくでらがいない。ぺしぺしできる距離で寝てたのに。
 にょっにょっ。
 つなの肩に飛び乗って、尻尾でつなのほっぺぺちぺちしたら、いたた、痛い、瓜、痛いっ、っていいながら、つなが窓の外を見せてくれた。
「獄寺君、今さっき、なんか突然庭に飛び出して行っちゃったんだよね」
 どうしたのかなあ。つなは小首を傾げる。なんかまたとんでもないことしでかさなきゃいいけどなあ、といいたそうな顔もする。
「アジサイじゃないかなあ」
 きょうこも一緒に窓の外を見た。
 アジサイ? ってつなが聞く。
「うん、ほら、ツナ君の庭のアジサイ。梅雨なのに晴れてばっかりで、元気がなく見えるよね、って、さっき獄寺君と話してたの」
「えー、獄寺君と、花の話ー?」
「獄寺君、最初は全然興味なさそうだったんだけど」
 あはは、と笑うきょうこに、だよねえ、とつなが納得する。
 にょおん。
 ごくでらに、花がきれいとかいう情緒はない。と、つなも思ってる。
 にょうにょう。
 ないない。
 だからますます、なにしに行ったのかなあ、ってつなが窓から身を乗り出したときに、水が、地面からぶわって降ってきて、ぎゃあ、とか、きゃあ、とか、にょおお!? とか叫んで避けた。
「なになにーー!?」
 つながおそるおそる、窓の外、の、下、を確かめる。そしたら、あらあら、ってつなのママンの声がした。
「お手伝いしますお母様! オレに任せてください!」
 ごくでらの声もした。つなはまた身を乗り出す。ごくでらの姿を確認する。
「獄寺くーん? なにやってんのー?」
「水撒きです、十代目ぇ!」
 呼ばれてごくでらがくるんと上を向く。またっ! 水が! 地面からばっしゃり降ってきた!
「獄寺君、ホース、ホース! 上向けないで!」
 つなは必死で、ごくでらも、すんませんーっ、て必死にいう。必死に、ホース、庭木に向ける。水の勢いつけようと、ホースの先っちょ指先でつぶしたら、変なふうに潰れて、水の勢いがあっちこっちに向いて、そのうちのどれかがつなを直撃した。ぎゃああ、って、つな、水浸し。申し訳ありません! て、ごくでらこっち向いたら、もうそれわざとだろってくらいまた水が降ってくる。
「十代目ーーー!」
 つなは、ごくでらの大声に負けない大声で、いいから、大丈夫だから! 
「水撒き、するなら、集中して、がんばって! お手伝いありがとう!」
 応援する。けど、え、水撒きだよね? たかが水撒きだよね?? なんでこんな大惨事!? 水撒きがうまくできないごくでらにものすごく疑問抱いた顔もする。びしょびしょになって、もうなんでもいっかってやる気なくして座り込む。きょうこがハンカチ差し出すのを、いいよいいよって遠慮するつなを見ながらぴょんと窓の枠に乗ってごくでら探すと、ホースからじゃばじゃば出る水がお日様でキラキラして見えた。
「にょっっ」
 きらきら!
「あ、瓜、おまえまで行ったらなんかもっとひどいことになりそうだから、おとなしくしててっ」
 つなの叫び無視して、にょーんと屋根に飛び移った。
 ごくでらがじゃばじゃば水撒きしながら、縁側にのんびり座るつなのママンに、
「アジサイは濡れてたほうが元気に見えるらしーですよ、お母様!」
「そうねえ、獄寺君、素敵なこと言うわねえ」
「いえ、あのっ、笹川が、言ってました」
「あらあら、さすが女の子ねえ」
「はいっ、オレには花が元気とかよくわかりませんっ」
 ごくでら、情緒のないことを自信満々にいう。ママンはいろんなことがおもしろそうに楽しそうに笑う。
 おもしろくて、楽しいこと。
「にょおおおお」
 混ぜろー、って思って、水のきらきらとか、濡れた地面や葉っぱのきらきらとか、一瞬、
 ……に、ょ、お!?
 一瞬、見えた、虹の、きらきらとかに、目を輝かせて、屋根の上からごくでらに飛びついた。
「にょーにょーーーー」
 虹、虹、今、見えた!! どーやった!? もっかいやれ!!
 華麗なじゃんぷで、華麗にごくでらの肩に着地する予定だったのに、なんでかごくでらの顔面に顔面でぶつかって、ばったり、ごくでらと一緒に濡れた地面にべちょって落ちた。
 にょっ??
 猫なのに、なんて様!?
「わーーー、獄寺君っ、瓜っ!」
 事態にびっくりしてごくでらと一緒に仰向けにぶっ倒れたまま青空見てたら、青空の隅っちょの窓から顔出したつなが、なにやってんのーーー、って慌てる。
 水びたしで、土まみれでどろどろで、
「てっめえ、瓜、このやろう」
 どろどろのごくでらに、ひょいってひっ掴まえられて睨まれる。そうされるともう反射で、しゃーーってごくでらの顔ひっかき攻撃して、手が離れたら華麗に身軽に空中一回転して、今度こそ軽やかに着地、した。
 にょーーん。
 百点満点ーーー。
 で、いつもならすたこらってごくでらから逃げるけど、今日は逃げないでごくでらの靴、かりかりひっかいた。
「ああ?」
 引っかき傷の顔さすりながら、なんだよ、って見下ろされて、要求する。
「にょっ、にゃっ、にょっ」
「なんだ、洗えってか」
 どろどろのからだに、自分で汚したくせに、って文句いいながらホースの水かけてくる。
「にょおーーーーっ」
 違っ、ちょ、水の勢い、強……っ。
 にょおにょお鳴いて、それ違うっていうのに、ごくでらには通じない。部屋から降りてきたつなが、なにやってんの、って顔した。
「獄寺くーん、それ、違うと思うよー」
「いやでもこいつ、どろどろなんで」
「ああ、うん、獄寺君もどろどろだけどね」
 なんでかなあ、なんでこんなどろどろになってんのかなあ、っていいたげなつなに気を取られたごくでらのホースからどばどばあふれた水、が、また、
「にょっ、にゃっ、にょっ」
 いまのだ、それだ、ごくでら、もっかいやれ!
 もっかい、もっかい、ってごくでらの靴とかズボンの裾とかかりかりひっかいても、鈍いごくでらは相変わらず気がつかない。
 タオルを持って現れたママンときょうこが、一緒にいった。
「虹のことじゃないかしら」
「虹じゃないかな」
 ほへ? って顔してごくでらとつながママンときょうこを見た。
「に、ゃ、っ」
 それだ、虹だ。虹見せろ。ごくでら。見せろ見せろ、ぴょんぴょん飛んでアピールする。
 ごくでらは、虹ぃ? とかいいながら、ホースの先っちょ、今度は慎重につぶして霧みたいな雨、にした。
 にーじ、にーじっ。
 期待して、きらきらの水を見る。でも、虹、見えなくて、にょ? にょお? 見えない。見えない。にょーにょーないたら、ごくでらがつま先でおなかのあたり、ぐりぐりした。なんだ? って思って、ごくでらのつま先にぶら下がる。ぶら下がったら、ちょっと場所移動したとこに、ぽいって落とされた。
「虹はそっちからじゃねーと見えねーんだよ」
「にょおん?」
 なんで? どーして? って思ったけど、その場所からはきらきら虹が見えた! から、どーしてとかどーでもよくなった!
 にょんにょん。
 虹、虹、
 触りたくて手を伸ばす。でも濡れただけで、虹触るつもりだったのに濡れたのの意味がわからなくて、しばらく水と格闘した。そんで、虹とかにもちょっと飽きてきた頃に、
「おら、もー終わりだ」
 ホースの水が止まる。タオル、がばってかけられて、濡れたからだがしがし拭かれた。
 今日は、なんとなく、拭かせてやるぜーって気分だった、けど。
「に、にょ、おおおお!」
 やっぱりどうにもいつも通りに不器用にがしがしするから、今日もやっぱり、ごくでらなんかに拭かせてやんないー、って、すたこら逃げた。

瓜と獄とかいーですねっ。

2009年06月22日 |   小話-瓜と獄
 梅雨の合い間な今日の午後 (瓜獄で5題より*瓜獄同盟さん



01 添い寝

「行き倒れたおっさんかこいつは」
 という声で目を覚ました。
 ……にょ?
 それは誰のことだろうとおもって、目が覚めたばかりで、寝ぼけたまま周りをきょろきょろ見回す。
 おっさん……おっさん?
 おっさんなんて、この部屋にいたっけか。
 にょ?
 いない。
 うん、いない。
 つなの部屋に、おっさんはいない。
 にょーん。
 いない、と納得して、あくびをする。つなの部屋に今いるのは、つなと、きょうこと、ごくでら。なんとなく、なんかへんなめずらしいメンツだなあ、とおもう。
「あ、瓜ちゃん、目が覚めちゃったね」
 きょうこに、みみとみみの間を指先でぐりぐりなでられてむにゃむにゃする。近付いてきたえがおがかわいい。ぐりぐりがきもちいい。このまま撫でられたら、もっかい寝れる。にょー、とのびをして、つなのベッドでばったりうつぶせでうとうとしかけたら、ごくでらに右みみひっぱられた。
「だから、おまえは行き倒れたおっさんか」
 おっさん!!
 おっさん?
 ……だれがおっさん?
 にょおお?
 眠たいところになんか言われて不機嫌にごくでらをにらむと、やんのかこら、と高いところから見下ろされた。おまえこそ、やんのかこらあ。
 に、に濁点つけて、に゛ょーーーー、てうけてたとうとしたら、
「え、なんでおっさん?」
 きょうこの背後から覗き込んできたつなが、獄寺くん猫と本気で喧嘩しないでー! って言いながら、みみとみみの間はきょうこがぐりぐりしてたから、背中を、なでなでしてきた。
 ごくでらは、だってこいつ見てくださいよ、って、ひとのこと指差して、
「もーちょっと丸まってんならともかく、伸びたいだけ伸びて寝やがって、酔いつぶれて行き倒れたおっさんみたいじゃないですか」
 つなは、あ、ほんとだ、ってなにかをおもい出した顔をした。
「父さんが酔いつぶれるとこんな感じだよね」
 いえ決して十代目のお父様のことではっ、ありません、と言い訳したごくでらに、いいよいいよといいながら、つなはさらに背中をなでなでした。
 なでなでされて、ぐりぐりされて、それでごまかされるところだったけど。
 ……に、ょ?
 おっさんて。
「にょー!」
 おっさんて。
「獄寺くん、子猫におっさんとかひどいよ」
 よくも言ったなこのやろー、ねこぱーんち、を、してやろうと思ってからだを丸めて力を溜めて、飛びつーく! ってしようとした直前につなに抱っこされた。
「にょ、にょ、にょーーーーー」
 はなせーーーー。暴れても、よしよしってなだめられた。
 つなは小さいものの扱いがうまい。ヘタなごくでらだったらぴょんと腕の中抜け出してねこぱんちして、それからねこひっかきしてやる、のに。
 にょおん。
 つなは抱っこがうまいから、まあいい。ごくでらをひっかくよりも、つなにすりすりしたほうがいい。
「瓜っ、十代目のお手をわずらわせるんじゃねえっ」
「いやべつに、わずらわされてないから」
 つなもこういってるのに、ごくでらが乱暴にせなか引っ掴んだ、から、つなから離されて、今度こそごくでらにひっかき攻撃をおみまいした。ごくでらは、んぎゃー、とか悲鳴をあげる。ざまみろ。すっきりして、ぴょんと飛んだ先がきょうこのひざだった。
 つなの抱っこもいいけど、きょうこのひざもいい。てゆーか、ごくでらんとこじゃなきゃいい。
 にょうにょう。
 きょうこのひざの上で丸まる。
 このやろーって言いたげにごくでらがにらむ。でもつなもいるし、きょうこに乱暴はなしない。にょほほ。
 きょうは、きょうこで当たりだった。
 放課後に、せまっ苦しい匣からやっと出された。
『てめえ、暴れんなよ』
 放課後まで、匣のなかで、がたがたがこがこ、出せ出せ出せ出せがこがこやってて、やっと出されて、いつまでも閉じ込めやがってこのやろー、って気分で、にょおーーーん、と華麗に飛び出た、ら、教室、の中だった。
 ………………にょっ?
 いつもみたいに、つなの家か、ごくでらの部屋だと思ったら、教室、だった。見上げれば、ごくでらと、つなと、やまもと、が、いた。
 こんなところで出してあげるなんて珍しいねえ、とつなが言う。だってこいつうるせーんですよ、とごくでらが言う。
 いやでもなんかこいつ、と言ったやまもとが、続けてぽつんと言った。なんかびびってるぜ?
 教室、の、なかの、にんげんに。
 つなとごくでらとやまもとは同じ格好。それはいい。それは見慣れてる。でも、教室にはほかにもたくさん、同じ格好の人間がいた。
 にょ!?
 知らないにんげんがたくさん。
 たくさんいるのに、ハルとか、ひばりとか、りょーへーとか、は、いない。
 あ、ほんとだ、なんか怯えてる? つなが言う。
 おおおおおおお怯えてなんかない、んだもんね。ちょっと口調がランボになった。
 そうっすか? ごくでらが言う。
 こいつ鈍い! じゃなくて、そうだ、怯えてなんかないぜー、って教室、ぐるんと見回したら他にも知ってる顔がいて、飛びついた。
 きょうこーーーーー。
 怯えてんじゃなくって、今日はきょうこと一緒の気分ーーー。
 胸元めがけてすぺしゃるじゃーんぷをして、それからがりがり肩までよじ登ろうとしたら、そのまえに、こんにちは瓜ちゃん、て抱っこされた。
「にょおんにょおん」
 きょうこ、こんにちはー。
 そうだった、ごくでらはいいけど、きょうことかハルの肩には乗っちゃダメだった。女の子には重いからね、ってつながいってた。
『うわ、どこの猫?』
 急にした声に頭を撫でられて、
 ぅにょ?
 だれだ? って思ったけど、
『獄寺くんのねこちゃんの、瓜ちゃんでーす。瓜ちゃん、こちら、わたしの友達の花です』
 紹介されて、にょおんとこたえた。
 はなは、ところで今この猫、なんか小箱から出てこなかった? と不思議そうな顔をした。やまもとは、そーだなー、ととくに隠す様子もなく、だからってそうだぜー、ともいわず、ごくでらは、それがどうしたって顔をして、つなだけが、ばれちゃいけないことばれそうになってあわあわして、逃げるみたいに帰り支度をして、早く帰ろうってごくでらとやまもとにいった。
 瓜も帰るよ、っていわれて、えー、って思う。
 今日はきょうこの気分ーーー。
 だったから、
『にょんっ』
 やだねっ、ってきょうこにしがみついてそっぽ向いたら、ごくでらのげんこつが飛んできた。にょーーー、こいつ、いっつも思うけどか弱い子猫を全力で殴るのやめろー!
 てことで、ここがごくでらの部屋だったら真剣勝負なバトル開始になるとこだったけど、教室、だったから、つなに止められて、やまもとにまあまあってやる気ない感じでなだめられて、なだめられたわけじゃないけど、ちから技でがっつりやまもとにホールドされたごくでらが、今日は十代目のお宅で一緒に宿題片付けるんだからさっさと帰るぞ、十代目をお待たせするんじゃねえ、とか言ったらきょうこが、じゃあわたしツナ君のお家まで瓜ちゃん抱っこしていっていいかなあ、とにっこり笑って今に、いたる。
 つなの部屋で、じゃあついでにってきょうこもしゅくだいを始めて、つなとノート開いてノートとにらめっこする。そういえばごくでらは、さっさともう終わらせたのか、自分のぶんなんて最初っからやる気がないのか、なんか、つなときょうこが向かい合ってる机からちょっとはなれて、ベッドにもたれて、じめじめ梅雨入りしたっていうのに晴れたそらをぼけらと見てる。
 はなは用事があって、やまもとは部活があるっていってた。だから、つなの部屋には、つなときょうこと、ごくでらのさんにん。
 きょうこのひざの上でうとうとしながら、しゅくだいにうんうんうなるつなに、きょうこが、ここはこの公式使うといいんだよ、とか教えてる。ちらって見たら、つなはしゅくだい解けないのが恥ずかしいのか、きょうこが近いのが恥ずかしいのか、赤くした顔でそっかーっていいながらしゅくだいの数字と格闘する。
 たまに、きょうこにもわからない問題があると、獄寺君獄寺君、てつなに呼ばれてごくでらが、なんすか、オレの出番ですか、ってやる気満々のうざい眼鏡モードでエセ教師ヅラして、わかりやすいんだかわかりにくいんだかよくわからない理屈っぽい説明をいきいきと始める。でもその問題が解けちゃうと、ごくでらはまた、ぼけらと窓の外を見る。
 きょうこが、いなかったら、二十四時間体勢で、どんな問題でも聞いてくださいまかせてください十代目! モードだった、かも、しれない。かも、じゃなくてぜったいそーだった、うざかった、つなもたじたじ。
 ごくでらにはたじたじのつなは、きょうことだとほわほわしてて、ごくでらはぼけらとする。
 ごくでらが静かだから、きょうこのひざの上で、うとうとする。
「ねえ、ツナ君」
 うとうと、まぶた重くて、耳だけアンテナぴくってさせたら、
「あ、おれ、母さんに肌掛けとか出してもらってくる」
 つなの足音が部屋から出て行った。
 にょおん?
 重いまぶた、わざわざ持ち上げて、なんだなんだ? って見てみたらごくでらが寝て、た。じゅうだいめ! を放って寝てて、それにきょうこが気付いて、つながごくでらのために毛布持ってこようとしたりする。
 ……ぅにょん
 すっごいすっごい眠いけど、ごくでらが寝てる、から。
 すっごいすっごい眠いから、ぴょーんと身軽に動けなくてきょうこのひざの上からずり落ちるみたいによたよたしながら、それでも、よっこらせって、ごくでらが頭預けてるベッドによじ登った。ごくでらのほっぺのことろ、近付きすぎたら、髪の毛くすぐったくってうにゃってなってちょっと離れて、あんまり離れるのもあれだったから、尻尾でぺしぺしごくでらの頭叩けるくらいの距離で、にょおおおってあくびしたら、ずっと見てたきょうこが、瓜ちゃんもおやすみ、って言ったから、
「にょおん」
 おやすみ、って、寝た。