全国の不動産好きの皆様、ご覧いただきありがとうございます。
ドラマ「結婚できない男」風のタイトルにしてみました。
さて、レオパレス問題などで賃貸物件の壁の薄さが問題になりました。
隣の部屋の人の爪を切る音が聞こえるとか、
チャイムが鳴ったので出たら隣の家だったとか、色々言われてます。
ところで、壁が薄いのはどの程度悪いことなのでしょうか?
以前私は、身内に買ってほしいと頼まれて、古い五階建ての団地の二階を所有していたことがありました。
その部屋は、壁が薄かったです。
築何十年の大好きな昭和の物件(別に大好きなわけではない、購入できるものが古いと言うだけです。うーんでも好きかも)
実は購入した理由は、この団地は古くて老朽化が進んでおり、建て替えの提案が出ていたのです。古くて狭い団地ですが、敷地は大変広く、素晴らしい眺望に恵まれていて立地も悪くない場所にある建物でした。
私は建て替えが実現すれば、新しく綺麗なマンションを、格安で手に入れることができると思ったのです。(短絡的で欲深い考え)
建て替え決議には、住民の5分の4の賛成が必要ですが、実際建て替えの提案は当時どのくらい現実的だったでしょうか。
建て替えを希望する人が代表で、建て替え検討委員会を作り、時々集まって話し合いを続けている段階でした。
所有者は建築された当時から住んでいる年配の方々と、私のように建て替えを期待して購入した若い人達が半々くらいです。
不動産会社の人にアドバイザーになってもらったり、弁護士の方にも相談に乗ってもらっていたはずです。
その部屋は私の友人が借りてくれまして、一人で暮らしていました。
友人は南向きの一番小さな部屋に寝ていました。
壁が薄いので、なんと隣に住んでいる男性のいびきが毎晩聞こえてきたそうです。
一つの階段に、二つの家が左右対象になっている団地なものですから、ちょうどベッドが壁を挟んで隣り合わせだったのですね。
ある時期そのいびきが全然聞こえなくなって、何日かしたら隣の人の知人が訪ねてきて、名前を呼んで隣のドアをガンガン叩いていたそうです。
友人は、ある種の第六感というか、ただならぬ気配を感じて、悩んだあげく警察に電話しました。
その結果、一人暮らしのお隣さんが部屋の中でお亡くなりになっていたことがわかったのです。
わりと早く発見され、亡くなられた方のご家族にも感謝されました。
友人のファインプレーだったのですが、実を言うと、周りの家のお宅の方たちも、
何人かは気づいていたというオチがつきました。
その友人は、近隣の人の事なかれ主義を怒っていました。
もしこれが普通の賃貸マンションであれば、
管理会社に電話を一本するだけで友人の心配はなくなったでしょう。
ところが、分譲タイプの団地の賃借人だっただけに、どこに連絡したらいいかもわからず、友人は、玄関ドアをガンガン叩いたり、
ベランダから身を乗り出して相手の名前を呼んだりしたそうです。
勇気と行動力があるなと感心しますが、それにしても何故、他の住民は何もしなかったのでしょうか?
分譲のマンションの場合、古くから住んでいる人たちの交流は密ですが、
後から越してきた賃借人は交流の輪の中に入れないことが多いみたいです。
その方は男性の一人暮らしですから、主婦の井戸端会議を見かけたとしても参加することはなかったでしょう。
友人は若く、行動力がありました。
でも、古くから住んでいる方達は、変化を好みません。
何かおかしいと気づきながら、警察に通報するなんて思いつかなかったのかもしれないですね。
管理組合はありましたが、費用の節約のためか、自主管理という方法を取っていました。
現在では考えられないことですが、当時管理組合は全ての世帯の合鍵を預かり保管していました。
事務所内で一括保管していて、ある日その全ての鍵が盗まれるという事件が起きて、驚きました。
しかも、管理組合からシリンダーの交換費用は自己負担と言われたのです。
管理組合の保管が悪くて盗難という最悪な事態を起こしたのに、自己負担で交換しろとは(怒)
私は納得できず、管理組合に抗議しましたが、
「鍵は組合員が自主的に管理事務所に置いていたものであり、保管責任は管理組合にあるものではない、交換するかしないかは所有者の判断です、費用負担が嫌ならそのままにしておけばいい」と言われました。
賃貸している留守宅管理世帯と言うことで、管理組合の役員もやっておりませんでしたから、よそ者のお前何を言っているんだ位の感じだったのでしょう。
もちろん、入居者に鍵が盗まれた部屋を使わせるわけにはいきません。
鍵はシリンダーごと交換しました。
お隣さんがお亡くなりになった件の後何年かして、住んでくれていた友人は、マンションを購入して引っ越していきました。
その後10年間も、60代の男性の方が気に入って住んでくれました。
10年たっても建て替え決議は一向に進まなかったので、私はこの男性の方の退去を機に、この物件を売却しました。
50代の女性の方が購入してくれて、今も住んでらっしゃいます。
おそらく、建て替えは当分の間、実現しないでしょう。
長く住んでいる方は、以前と変わらず同じように住むことが一番大切なのです。
新しく広くきれいになり、資産価値が上がる、だから満足だろうと言う押し付けは、後からやってきた者のエゴなんだと思います。
そのことを学びました。