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別冊「バビル2世」マガジン

「バビル2世」のコミックス&アニメその他を中心に、オールドファンがあれこれ語ります。

徹底分析「翠星のガルガンティア」第5回

2013-12-02 22:21:31 | 「翠星のガルガンティア」関連

まるで「やるやる詐欺」のようだった当企画(苦)、約3ヶ月ぶりに再スタートします。
というわけで、久々に本編第1話を見直してみたら、やっぱいいんだなこれが
何が素晴らしいかって、オリジナル作品でここまで出来た、というのが一番すごいですね。
では、第1話から「伏線完全発掘!」、いってみましょう

おっと、その前に。
この作品には、コミカライズとノベライズが存在します。
コミックの方は、ほぼアニメ版をなぞってますが、ノベライズ本の方は、アニメに描かれなかった部分までかなり詳細に記載されています。
また、前日譚小説の「少年と巨人」もあります。
ですが、ここではそれらの関連作品は取り上げません。というのも、私はアニメ作品のノベライズというのは、二次創作物と同じであると考えているからです。アニメ作品それ自体が完結した物語であって、それを文章で補完するのは邪道ですらあると思います。ただし、それが二次創作物ならばノー・プロブレムです。
こういうことです。あくまで私の考え方ですが、これでいきますのであしからず。


第1話「漂流者」

「長きに及んだ漂泊の時代は終わり、我ら人類はあまねく銀河に繁栄の世界を手に入れた─」
しょっぱなからバリバリにSF、SFしたナレーションが流れます。なんせ石塚運昇さんの声ですから、「キター!」感がハンパないですな。
このように、いきなりハッタリをかます(?)というのは、お客さんを呼び寄せる常套手段。たとえば、TVアニメ版「ヨルムンガンド」で、物語冒頭のナレーションが森山周一郎さんだったのも同じでございますよ。
と、このように「つかみは上等」で始まりますが、実はこのナレーション、人類銀河同盟の兵士達に義務付けられた睡眠学習の教材なんですな。「ヒディアーズ」と呼ばれる人類の敵は、絶対に倒さねばならないのであると、繰り返し繰り返し“啓発”しているわけです。ちなみに「教導レム睡眠」と称してます。
そこまでやらないとダメ?・・・はい、これがまず伏線です。毎日毎日、睡眠時には常にこんな情報を刷り込まないと、人々は容易に反逆の道に走る、ということなんでしょう。つまり、人間の生存本能をねじ伏せて、死を恐れない兵士に改造するためには、ことほどかように執拗な洗脳が必要だということです。
従いまして、このあとガルガンティア船団に拾われる主人公・レドが、人々とのふれあいの中で思春期の少年らしい有り様に変化していくのは、人間の持つ潜在力のすごさと言えるでしょう。

もっとも、レドは特別なのです。すなわち、反逆の萌芽を既に内包しています。それを暗示する伏線が、相棒・チェインバーとの会話です。
チェインバーは、レドの軍務期間が規定を超えたので、この戦闘が終わったあと、人類銀河同盟の本拠地・アヴァロン(巨大宇宙ステーション)への4週間の休暇が許可される、と告げます。(自由生殖、できるんだとさ
ところがレドは「へえ、そうだったか」と、実にそっけない返事。すかさずアドレナリン値等々をチェックしたチェインバーが、「貴官の反応は期待値を満たしていない」とツッコミます。
この会話の背後にあるものを考察しますと、つまりアヴァロンは人類にとって羨望の場所であり、狂喜するのが当然である、ということです。が、レドはまったく興味がない。彼の潜在意識の中に、同盟を忌避するような本心が隠されていることの暗示です。
もうひとつは、もしや同盟の中枢機関は、こうやって「反逆しそうなヤツ」を常にチェックし、異分子の排除に努めているのではないか?ということです。まさに典型的ディストピアです。まあ、ろくでもないモンだよな、ということを、第1話のAパートでさっそく表現しているんですね。
ちなみにレドの階級は「少尉」で、年齢は16歳。もろに少年兵です。
そして、レドが睡眠学習から目覚めたとき、例の「爪笛」がコクピットの中でフワフワ浮いています。このさりげない演出!く~っ

この後、主人公のレドは、人類銀河同盟を殲滅せんとする異形の敵・ヒディアーズとの戦闘に入っていきますが、ここで登場する人間はレドと部隊長のクーゲル中佐だけです。
いや、母船の乗組員とか、声だけはいっぱい出てきます(こういうのは、他の出演声優さんたちが適宜担当するんでしょうか)。
つまり、本筋に関係ない人物は徹底的に登場しません。他の兵士は、さっくりスルーされちゃってます。1クール13本という流れで行くと、枝葉部分をばっさり切らないと、尺に収まらなくなるからですね。
従いまして、マシンキャリバー隊には夥しい数のチェインバー型がいるんですが、もうアリンコと同じです。パイロットの顔も見えないまま、ひたすら宇宙の藻屑に。まさに兵隊アリ・・・なんか切ないっすね
その中のたった一機、チェインバー型機体№K-6821が、レド少尉と共にとんでもない場所へ飛ばされるわけです。お約束の「ワームホール」ですね。
ここまでがAパートですが、10分ちょっとの間にエッセンスがぎゅっと詰まってます。

ところでヒディアーズですが、奇妙な水棲生物みたいな?アンモナイトみたいな?イカタコかよ!みたいな姿です。
で、連中の巣がまた!見かけの禍々しさや不気味さ、もうビジュアル的に素晴らしいの一言です。つくづく「SFは、絵だねえ」と言いたくなりますな。


はい、お次はBパート。
バリバリの宇宙戦争、はたまたロボットアニメ?といった風情から一変。この切り替え、本当に見事です。
っていうか、突然元気な少女が現われて駆け回ってますので、「????」です。宇宙戦争、どないなってん!です。
すぐに謎は解けて、主人公レド少尉の乗ったチェインバーが、どうやらここに漂着したらしいと分かりますが、なんと!
言葉が違うんだ、言葉が!見た目は同じ人類なのに、言語がまったく別。意思疎通がスムーズに行きません。
こういう状況の描写って、難しいですよねぇ。いや、文章で表現するなら容易ですが、映像作品でこれは難しい。しかも、この作品の場合、双方の視点が交互に入れ替わります。なんと複雑なんでしょうか。
しかし、優秀な翻訳機能を持つチェインバーが間に入ることにより、問題解決。
ところで、かの「スター・ウォーズ」では、ロボの3POが万能な翻訳能力を発揮しますが、なんかご都合主義っぽいんだよね。その点、チェインバーはですね、周囲の言語を猛スピードで分析することで一人前の翻訳者(?)になるというプロセスがきちんと描かれていて、この点もポイントが高いです。

ここで、ちょっとBパートのストーリーをざっとおさらいします。
ワームホールに飲み込まれたあと、どうやらチェインバーはレドをコールドスリープ状態で保護し、自らも活動を休止していたようです。ちなみこの間、水球と化した地球に落下し、海底にいた模様。これが約6ヶ月間。
ところが、ガルガンティア船団の敏腕サルベージ屋・ベローズ(ないすばでーの姐さん)に引き上げられました。
船団の修理屋・ピニオン(チャラいリーゼント男)たちは、「お宝だぁッ!」とばかりにチェインバーにへばりつき、中をこじ開けようとしますが、なんせテクノロジーの水準が違うもんですから不可。
ここで、全身いじられ状態のチェインバー、「事態は静観しがたい方向に推移しつつある」とかなんとか言いながら、レドを蘇生させます。ようするに「どうすればいいか、指示して~レドきゅん(泣)」です。ここんとこ、杉田ボイスは沈着冷静を装いつつ、けっこう切羽詰った風情に感じられますよ。

ま、とにかく目覚めたレドは、自分たちに群がっているのが、どうやら銀河同盟からはぐれた漂流部族であるらしいと類推します。
このときチェインバーが、この場所を破壊して脱出することをレドにもちかけます。が、彼はそれを一蹴。
「壁の外は真空かもしれないぞ。こいつら、気密服を着ていないんだぞ」
さあ、これがなにげに重要なセリフであり、伏線です。このあと、何度か同じような状況でチェインバーが「ねえ、やっつけちゃう?レドきゅん」と提案しますが、そのつどレドは断ります。
これが、最終13話におけるクライマックスシーンに繋がっていくのです。そして、これこそがチェインバーの人工知能を成長させ、「くたばれ!ブリキ野郎」へと・・・うっ、だ、ダメだ・・・

先に進みます。
どうやら周囲は野蛮人どもらしいと悟ったレド。この組織の中で確固たる優位を保ちつつ、銀河同盟へ帰還するサポートを受けようとかなんとか考えて─っていうか、もう出たとこ勝負でチェインバーの中から飛び出し、たまたま側にいた少女・エイミーを人質に取って交渉に持ち込もうとします。(チェインバーのセリフ「貴官の行動に論理性を見出せない」が笑えます
エイミーを人質にするときの描写がね~、これがまたいいんですよ。エイミーの頭部のクローズアップなんですが、それが「ひょいっ」と浮き上がるんですね。レドが彼女を抱えたところなんですヮ。
これ、結構ぐっと来るシーンですよ。“お姫様抱っこ”に通じるものがあります。また、細っこいレドが、実は大変に体育会系であるということも表現しています。
つまり、この物語は「ボーイ・ミーツ・ガール」の王道でもあると、ここで宣言しているんですな。

はい、Bパートもいよいよラストのクライマックス。
エイミーを抱えて船の中を─船とは夢にも思わず─逃げ回り、とうとう外に通じる扉を開けたレド。そこに待っていたものは─。
ここ、またまた重要です。無機質な宇宙空間しか知らなかったレドが、眩しい朝の光に包まれた大海を見て驚愕するシーン。
「ここはいったい、どこなんだ?」
まるで歴史大作映画のように、カメラがぐるっと180度回ります。ここで、観客もガルガンティア船団の姿を始めて目にするのです。レドの心の動きを、観客もまた共有するシーンです。
いや~、演出がすばらしいですね。
極めつけはチェインバーのセリフ。ここは「太陽系第三惑星、地球。これまで記録においてのみ存在を示唆されてきた、人類発祥の星である」

SF、それはセンス・オブ・ワンダーの世界。そして、つくづく「SFは、絵だねえ!」なんである。

というわけで、つづく。


~本日の一枚

エイミーを抱えて逃げ回り、やがて追い詰められたレドが、「チェインバー!」と叫んで相棒を呼ぶシーン。
肌の色はひたすら青白く、目つきは殺伐としています。
ここから彼の成長物語が始まります

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2 コメント

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これもそそる! (アブダビ)
2015-02-27 00:47:07
これもです!
なんかマンガも映画もアニメも遠ざかってあるうちに(フューリーは7年ぶりのロードショーでした)、色んな面白そうなのが作られたいたんだ。当分、楽しめそうです。
管理人さんありがとう。
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2013年のベスト1or2作品 (一人虫)
2015-02-28 16:09:00
2013年は、ワタクシ的にはエポックメイキングな年でした。
なんせウチのチーム(日ハムね)が最下位・・・げふげふ。
じゃなくて、「十数年に1本レベルの大傑作TVアニメ」が2本も出現したのです。
1本はアルペジオで、もう1本がこれです。レンタル屋さんで是非。
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