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別冊「バビル2世」マガジン

「バビル2世」のコミックス&アニメその他を中心に、オールドファンがあれこれ語ります。

高橋良輔監督作品その4「太陽の牙ダグラム」~中編

2009-02-23 21:55:29 | 高橋良輔監督作品関連
ちょいと以前に書きましたが、わが職場と付き合いのある業者さんの中で、アニメファンだった人(男性)がいます。
彼が小学生の時、リアルタイムで夢中になっていたのが「太陽の牙ダグラム」とか「装甲騎兵ボトムズ」だったそうです。
(ちなみにガンプラも集めていたけれど、ガンダムの作品自体はそれほど好きじゃなかったらしい)
私はかねてからの疑問を、この人にぶつけてみました。「ダグラムとかボトムズの内容、放送当時に理解できてました?」
その答えは「全然!っていうか、ダグラムなんて今でも意味がわかりませ~ん(爆)」
おいおいおいおいおい
ま、つまりですね。「小学生男子なんて、ロボットが出てきてドンパチやれば満足だったんですよ」ということらしいんですな。
実際ダグラムは、スポンサーだったタカラ(現タカラトミー)が、玩具を売らんがために作ったような作品。小学生男子はまんまと夢中になっていたというわけです。
とはいえ、ですね。前編でちょっと書きましたとおり、これが結構力作なんですよ。高橋監督はじめスタッフが「ガンダムとは違うものを作ろう!」と意気込んで、はっきりいってやりたい放題、思う存分にやってます。
その結果、ストーリーはやや難解で、かなり込み入ってます。小学生には無理でしょうなあ。
逆に言えば、大人の鑑賞に堪えうる精緻な物語です。ので、ちょいとご紹介しましょうね。


家族を描く大河ドラマ

遠い未来、新暦が施行され、人類の宇宙進出が盛んになった時代の物語。
地球から遠く離れた殖民星・デロイア。開拓民の決死の努力によって開かれたこの星は、地球連邦の一員とはいえ、最下層の地位に甘んじていた。
宗主国・地球は、デロイアに芽生え始めた独立運動の動向を注視していた。地球連邦を構成する地球7州のうち、メドール州の有力者で、地球連邦評議会議長のドナン・カシムの末子、士官学校生のクリン・カシムは、ひょんなことからデロイア出身の若者たちと知り合う。そして、デロイア人が地球人に蔑まれ、いわれなき差別を受けている現実を知る。デロイア人は、まるで地球人の「奴隷」だった。
しかしクリンには希望があった。彼の父、ドナン・カシムは、デロイアをきちんとした独立国として地球連邦に加盟させるべく奮闘している。尊敬する父がいる限り、デロイアの未来は明るいと思っていた。
しかし、その父が地球連邦評議会のためにデロイアに赴いたとき、クーデターを起こしたテロリストたちに拉致されてしまう。
矢も盾もたまらずに家を飛び出し、単身でデロイアに向かうクリン。それが、まさか長き闘争のはじまりだとは、彼自身も気づかなかった。
クーデターは「やらせ」だった。デロイア独立派を抑圧し、地球連邦の傀儡政権を作るためのでっち上げだった。そして、その首謀者はクリンの父だったのだ。
クリンは父に、ひいては地球連邦に反逆する道を選ぶ。地球人でありながら、デロイア独立のために戦うことを決意したのである。
そして、デロイア人科学者にして独立派の指導者・サマリン博士が作った二足歩行型兵器「ダグラム」のパイロットとなる。
デロイアの動乱は、ここに火蓋が切って落とされた・・・。

父に反逆し、乗り越えようとする息子。う~む、定番ですが、心が燃えます。ドナン・カシムが星一徹に見えます。
実は主人公のクリンは、父の後妻の息子なのです。上に兄二人と姉一人がいるのですが、いわゆる腹違いです。歳も結構離れています。
兄二人はすでに実業家としてバリバリ活躍しており、はね返り者の末弟が疎ましくてならない。なにせデロイア反乱軍に身を投じちゃったので、「名門カシム家の面汚し」だと思っています。
いっぽう、さすがに姉はクリンを気遣っています。「やんちゃな弟」と思っていて、姉の旦那レーク・ボイドさん(デロイア首都・パルミナの行政官)もクリンが心配でたまりません。
実はこのレークさん、物語中でいちばん立派な人物です。あまりに高潔すぎて、現実の政治にはちょいと不向きな人です。権謀術数には無縁なのですな。
実の兄貴たちがとことん冷たい態度なので、レークさんの義弟に対する愛情が際立ちます。(ドナン閣下、いい娘婿に恵まれました)
こうして、家族に背き出奔したクリンですが、やがて父の本当の心を知ることになります。これは最終盤のエピソードですが、いよいよ死の床についた父を、クリンが見舞うシーンは涙ナシには~っ

力ずくでデロイアを屈服させようとした父の真意は、決して私利私欲によるものではありませんでした。地球にはもはや自力で食料を生産する力もなく、デロイアの豊かな資源に頼るしか生きる道はなかったのです。
もしもデロイアが完全に独立国家となり、地球への食糧や資源の供給をストップさせるようなことがあれば。それは地球連邦の大いなる危機です。
だからこそ、デロイアを完璧な支配下に置かねばならない。全地球の同胞たちのために。
これが、ドナン・カシムがあえて手を汚し、策を弄してデロイアを陥れた理由でした。

「お前もいずれは家族を持つ。その時にこそ、私の気持がわかるだろう」
父はそう言い残しますが、それでもクリンは「違う」と思います。
だからといって、デロイアの人々を踏みにじり、搾取していいわけがない。デロイアはまるで地球の奴隷ではないか。
「地球人、デロイア人の区別なく、皆が手を取り合っていけたなら」
クリンは、反乱軍の指導者・サマリン博士の言葉を噛み締めます。そして、やはり父とは違う道を行くことをあらためて決意するのです。
ドナン・カシムにとって真の後継者といえるのが、実は末子のクリンだったのです。獅子の如き情熱、決して型にはまらないスケールの大きさ。それをきっちりと受け継いだのが主人公、クリン・カシムです。
だからこそ彼は、父の懐には収まることができなかったのです。
「太陽の牙ダグラム」は、このように壮大な家族の物語でもあります。


個性派ぞろいの脇キャラ

さて、カシム家をとりまく人々や、クリンの仲間たちのキャラも、いちいちいちいち立っています

前段で述べたレーク・ボイドさんも重要な役どころですが、そのほかにも傀儡政権のトホホ司令官、フォン・シュタインもいい味出してます。最後にきっちりと意地を見せるところは泣けますね。

しかし、お約束の悪党側もナイスですよ。
まず、いっちばんスゴイのが、ドナン・カシムの副官で「腹黒さ一手に引き受け!」なヘルムート・J・ラコック。
いやもうたまりませんな!○○のシーンに至るまで、とことん見せ場っ

そして、その手先になってちょろちょろ小細工をする裏切り者のコール・デスタン。でも、意外や「汚れちまった悲しみ」にひたっているオッサンです。
たぶん全共闘世代の鬱屈した心情を表現したキャラです

反乱軍側は、まずリーダーのデビッド・サマリン博士。ダグラムの設計者で、清濁あわせのむすぐれた革命家でもあります。フィデル・カストロやホー・チ・ミンあたりを元ネタにしているのかな?という感じの人物です。

そして、この人を忘れちゃなりませぬ。チェ・ゲバラくりそつで、この作品中(たぶん)一番カッコイイ人物、J・ロックさんです。ゲリラ部隊「デロイアの星」のリーダーで、部下からも慕われています。
おまけに連邦軍から旧知のザルツェフ少佐をスカウトしてきて、反乱軍の指揮官に迎えるという荒業も行使。
そして最後の最後まで連邦軍と闘い続け、武装解除の後も「まだまだ俺たちはやるぜ!」と言いつつ去っていくという超絶的かっこよさ。
この人物は、おそらくデスタンの真逆に位置するキャラクターです。すなわち「汚れちまった悲しみ」に沈む全共闘世代オヤジたちが、脳裏に思い描く理想の「闘う男」なんですな。「こんな風に生きたかったんだぁ!」ってことです。
だから、ゲバラそっくりな姿なんですよ

もうひとり忘れてはならない人物が、ジャーナリストのディック・ラルターフです。デロイア動乱を客観的に見つめる記者で、クリンの恋人・デイジーをしばしば助けます。ま、狂言回し役です。
この人の「第三者的視点」が、さらに物語に深みを与えています。

あ、ちなみに「太陽の牙」というのは、クリンたちのゲリラグループの名前です。
リーダーでアニキっぽいロッキー、アネゴのキャナリー、抜けてるように見えて「実は凄いんです」なナナシ、お騒がせキャラのジョルジュ、お約束のガキんちょビリー、そして渋すぎるぜ!なチコ。
これに、無理やり仲間にされた(爆)ハックル、と。
これが主人公の仲間たちです。

う~ん、どいつもこいつも味があるなあ

というわけで、ゆるゆるとつづく。

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2 コメント

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ホントに絵がトホホでしたねぇ (早虎)
2009-02-23 23:05:13
こんばんは。

「ダグラム」は声が009でブレイクした井上和彦さんだったのに、人気がなくて。キッパリ、絵のせいだな、やっぱり。ヒロンのデイジーのカオは本当に気の毒でしたわ~。皆で言ってました(爆)。
確か、デビルマンこと田中亮一さんも出てたのに、私もほとんど見てませんでした。

こっちでは、金曜日の夕方やってたと思います。
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あえてトホホに? (一人虫)
2009-02-24 20:43:47
早虎さん、やはり考えることは皆同じですね・・・。
頬骨。頬骨がよぅ

もしかして、わざとやったんでしょうか。美形キャラをあえて出さないってことで。確信犯かもしれません。

だって、ムサいオヤジばっかゾロゾロと(以下自粛)
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