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別冊「バビル2世」マガジン

「バビル2世」のコミックス&アニメその他を中心に、オールドファンがあれこれ語ります。

高橋良輔監督作品その5「装甲騎兵ボトムズ」~その5

2009-08-19 21:45:28 | 高橋良輔監督作品関連
惑星サンサにて、またまたキリコの前に現われ、絶妙のサポートをしてくれちゃうのがゴウトたちお騒がせ3人組です。もはやキリコの旅には必要不可欠な守護天使トリオですな。
なかでもゴウトは「見た目もバリバリのオヤジ」で、まさにキリコにとっては「かりそめの父」。声は富田耕生さんです。
最初は狡猾な商売人、という風情だったのが、クメンからサンサではいっぱしの武器商人となっています。そりゃもうバララントのお偉いさんとタメ口がきけるほどの。

いっぽう、3人組の紅一点ココナ(声・川浪葉子)は、キリコに惚れてます。愛している、というよりも、イケメンアイドルに夢中になっているような風情です。
ココナは、キリコのカノジョであるフィアナさんとの初対面で「があ~ん!」となりますが、それでも「・・・くやしいけど、きれいだね」と言います。
いい娘だよねえ、ココナ。ほんとに素直でまっすぐな性格です。だからバニラが惚れてるんだよね、という感じです。
ま、ココナはなんだかんだとキリコを追っかけてますが、心の底ではバニラの気持というか、大きな愛に気づいているので、あえてやんちゃをしているんじゃないでしょうか。このあたり、なんか少女マンガちっく
ちなみに、本編から30年後のお話であるOVA「赫奕(かくやく)たる異端」の、さらに後日譚である小説「孤影再び」(作・高橋良輔)におきまして、すっかりいいトシになった3人組が出てきます。
バニラとココナは熟年夫婦、ゴウトは彼らの「父」としていまだ健在、というストーリーだそうです。
だそう、というのは、私はこれを読んでませんので(涙)。お願いですから一冊の本にして発売してください~

では、サンサ編のつづき、いきます。


恩讐の彼方に in サンサ(後編)

サンサは死の星だった。ここは、かつてバララントの一大拠点があり、そのためにギルガメス軍との激しい戦闘に巻き込まれた。住民の9割が死に絶えたとも言われ、あたりは荒涼とした砂漠が広がるばかり。大気中の酸素濃度もきわめて低く、酸素ボンベなしには生きていけない。
そんなサンサに、キリコたちは降り立った。ここには、打ち捨てられた武器を再生し、売りさばく商人たちが巣くっていた。ゴウトのコネにより、一行は再生武器商人たちの世話になることに。
しかし、ココナが不用意にキリコについて口にした言葉─「レッドショルダーくずれ」。キリコがもとレッドショルダーであったことを知ったとたん、武器商人たちの顔色が変わった。彼らのリーダーであるゾフィー(声・山口奈々)が、憎悪の念をむき出しにしてキリコとフィアナに襲いかかる。
ゾフィーは、夫と子供を戦火で失っていた。手を下したのは、レッドショルダー隊だった・・・。


ここで、あの巨大戦艦の中で流れていた「レッドショルダー隊・殺戮の記録」の舞台が、サンサであったことがわかります。キリコとフィアナにあれを見せた「謎の存在」は、行き先がサンサであることを暗に告げていたのです。
ゾフィーの家族だけではありません。レッドショルダー隊こそが、惑星サンサの9割を死滅させた張本人でした。「吸血部隊」の呼び名は、サンサでの大殺戮がその所以だったのです。
憎んでも憎みきれない宿敵が、今目の前にいる。ゾフィーの胸に、復讐の炎が燃え上がります。
そこに、ややこしいことにイプシロンが来襲。バララント軍もキリコたちを襲撃。
武器商人のアジトが吹っ飛ぶ中、キリコとフィアナはなんとか脱出。あとを追いかけるゾフィー。
さあ、ここからがサンサ編のクライマックスです。


ところで、PSであるフィアナは、定期的に「ヂヂリウム」という物質に浸らなければ、その体を維持できません。クメンを逃れてからずいぶんと時間が経過し、いまフィアナには「ヂヂリウム切れカウントダウン」が近づいていました。
ヂヂリウムが切れると、しだいに体は硬直し、やがて死に至る─そうなる前に、なんとかヂヂリウムを見つけなければならない。
フィアナはすでに手足が動かなくなり、自力では歩けません。キリコは、手製の背負子に彼女を乗せ、灼熱の砂漠を歩き続けます。かつてヂヂリウム鉱山のあった場所を目指して。
そのあとを、執拗にどこまでも追いかけるゾフィー。腕っぷしではキリコにかなわないので、隙を見てやっつけちゃる!と思ってます。
しかし、追うほうも追われるほうも、だんだん酸素ボンベの残量がなくなっていきます。フィアナのボンベを取り替えようとするキリコに、フィアナは「あげて」といいます。私はいい、あの人にあげてと、ゾフィーの方を見るのです。
フィアナさん、まるでアリア様みたいじゃね?
いや~、ほんとにできた女性ですね。できないよ、こんなこと
さすが、純粋培養で誕生したPSです。生身っぽさがありませんね。だからキリコとつり合うんですね。
ところで、この砂漠の追跡行のシーン。昔の日本映画、それも市川崑監督作品あたりの雰囲気バリバリという感じがします。


さて、ゾフィーの復讐は成就したか?
まあいろいろありましてね。ここに乱入するのが、またしてもお騒がせ3人組です。
何とココナがぶちギレます。ゾフィーに向かって「あんたばっかり不幸だなんていうんじゃないよ!あの戦争ではみんなひどい目にあったんだ。あたしだって、家族みんな死んじゃったんだようっ!」と摑みかかって、さらに大泣き。
ココナ、すげっ。ココナ、えらい。
復讐なんて空しい。失ったものが、帰ってくるわけじゃない。空虚な思いが、さらに積み重なっていくだけ。─「許したわけじゃない」と呟きながら、ゾフィーは去っていきます。
実を言いますと、私は4つのパートの中で、このサンサ編が一番好きです。とくに、ゾフィーとの絡みのあたりが。
酸素ボンベを分けてもらって泣くゾフィー。でもキリコへの、否、キリコが象徴しているレッドショルダー隊への憎しみを払拭できないゾフィー。マジで泣けます。
太平洋戦争で実父を失った高橋監督の気骨のようなものが、このサンサ編には、そこはかとなく感じられます。


ですが、まだ終わってません第3部。
やっとヂヂリウムをみつけてフィアナを浸したキリコですが、思ったとおりバララント軍が攻めて来ます。ルンルン(死語)で指揮をとっているのは、ロッチナさんですな。
でもって、イプシロン最後の決戦!嫉妬の炎をメラメラ燃やし、絶対許さんキリコよ覚悟・・・ですが、嗚呼。お約束の悲劇の美形。
っていうか、よく見るとほんとに美形キャラです。それなのに、そもそも少女ファンがあまりいなかった(らしい)ボトムズ、無駄に美形美形してます。イプシロン、哀れ
そのイプシロンですが、キリコにこう問いかけます。「どうしてプロトワンをフィアナって呼ぶんだ?」
問われて「うっ」と思うキリコ。そういや俺、なんで「フィアナ」って言っちゃったんだろう(激汗)と、愕然。
そしてフィアナは、PSであるイプシロンをも超越する力を持つキリコを見て、思わず叫びます。「あなた、PSだわ!」

キリコは、普通の人間ではありませんでした。
PS、すなわちパーフェクト・ソルジャーは、科学者たちが「完璧な人間」とはどういうものかという事を突き詰め、人工的に作り上げた存在です。いわば、神に等しき存在、人間をはるかに超えた存在です。とはいえ、それは所詮、人間の手によって作られた「まがいもの」。
しかし、もしも生まれながらのPSが存在するとしたなら?人間に作られたのではないPSが存在するとしたら?
それこそは、まごうことなき神─神の子なのではないか?
ロッチナの目的はそれでした。そして、物語の冒頭から見え隠れしていた秘密結社の目的も。
そして今、彼らは確信します。キリコこそは、探し続けていた「その存在」なのだと。


キリコは、ロッチナにうながされ、惑星クエントへ赴くことにします。古代文明発祥の地・クエントに、間違いなく自分の「盗まれた過去」があると信じて。
キリコに数々の苦難を与え、フィアナとめぐり合わせ、そして最後には惑星クエントへといざなう見えざる手─謎の存在。
それは本当に「神」なのか?キリコは「神の子」なのか?これまでの辛苦は、神の子ゆえの試練だったのか?

さだめとあれば、心を決める。
大いなる謎が待つ最終章、第4部クエント編へ。キリコの旅は、いよいよ9回表裏の攻防へ。

to be continued

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