別冊「バビル2世」マガジン

「バビル2世」のコミックス&アニメその他を中心に、オールドファンがあれこれ語ります。

かるたクイーン、キター「ちはやふる」

2010-03-29 21:18:08 | コミック作品

いっきなり脱線しますが、NHKの土曜時代劇「咲くやこの花」が、27日に最終回を迎えました。
主人公・おこいちゃんは、かるたの師匠・おはな先生と直接対決。目の前に立ちふさがる巨大な壁に、純情可憐な少女は敢然と立ち向かっていきます。
それはすべて、いとしい由良様のため。仇討ちに命をかけるしかない由良様を、なんとしても守るため。
とはいえ、武士と町人は結ばれぬさだめ。待っているのは、哀しき別離か?
・・・と思いましたらば。ううむ、「弟に家督を云々」とは。ウルトラC(古っ)を繰り出してきましたな
この後、きっと由良様は剣術道場を開いて、おこいちゃんは寺子屋兼かるた教室を切り盛りして、夫婦になった二人は質素ながらも楽しい人生を送るのでございましょう。
時代は、もうすぐ天保年間。幕末の激動がゆっくりと、しかし確実にまわり出す直前の時期です。つかのまの安らぎを、二人は心ゆくまで味わうことでしょう。
というわけで、ハッピーエンドでよかったですね~早虎さん

さて、このドラマですが、まず間違いなく「ちはやふる」にインスパイアされてますね。
2009年マンガ大賞、2010年「このマンガがすごい!by宝島社」第一位と、2年続けて輝かしい評価を得ている超話題作「ちはやふる」。どの書店に行っても、コミックコーナーに平積みされてます。
私はですね、いつも横目で見てるんですが、どうしても少女マンガには苦手意識があって、手に取るところまでは行かなかったのです。
でも早虎さんのおススメがありましたから、土曜日の仕事帰りに書店に寄り、ためしに3巻まで購入してみました。

うっ・・・こ、こここここれは!
メチャメチャ面白いーっ
いやこれホントに・・・大傑作ですよ。いや~、びっくりした。
昨日、慌てて残りの巻を購入して一気読み。・・・本日、寝不足です。

冒頭から一気に来ますよ。かるた界のクイーンを決める決戦?の様子がちらりと描かれ、まるで格闘技のようなその雰囲気に度肝を抜かれた後。
場面は6年前にさかのぼります。
まずは登場、ワケありメガネ少年、綿谷新(わたや・あらた)クン。超絶記憶力の持ち主。なんと彼はかるた名人を祖父に持つ、かるた界のスーパーサラブレッドなのだ。
福井県から東京に転校してきたばかりの新君、福井訛りをクラスメイトにからかわれ、家があまり裕福じゃないために服装もぱっとしなくって、お約束のプチいじめに会う。
ここにヒロイン、綾瀬千早(あやせ・ちはや)登場。このヒロインが!ほんとにいいです。ハートをわしづかみにされちゃいます。いい子だ~
もう一人が、二人のクラスメイト、真島太一(ましま・たいち)。まつげの長い美少年(爆)、家はかなり裕福で、本人の成績も超優秀。ちょっと性格が悪い。でも、新や千早とかかわるうちに、どんどんいい子になってきます。
千早と太一、そして新。3人の仲間をつなぐ「かるた」─楽しい日々も、あっという間に終わりがやってきます。小学校卒業とともに、全員がバラバラに。
3年後、高校に進学した3人は、再び「かるた」によってめぐり合い、壮絶な「競技かるた」の世界にどっぷりと浸ることに─。

いやいやいや、「競技かるたは格闘技である」ってな話はきいたことがありますが、まさかこれほど凄いとは。ほんとに格闘技ですよ。「かるた道」ですな。
この作品、かるたの奥深い世界を知る恰好の入門書であると言えるでしょう。
と同時に、青春フルスロットル作品とも言えます。いや~、初々しい気持ちをすっかり失った大人に、「切なさ」の意味を思い出させてくれますヮ

ところで、第1巻の作者の言葉がちょっと引っかかりました。「・・・連載でまんがを描けることが、どれくらい楽しくて幸せなことか、文章ではうまく伝えられそうにありません。・・・」とあったのです。不思議な違和感のある文章です。
と、ここまできてふいに思い出しました。少し前のオヤジ雑誌「週刊文春」のマンガ批評コーナーで、この作品が取り上げられていたことがあったのです。
ああ、そうだった。この作者は─。

作者、末次由紀さんにとって、あの出来事はもう触れられたくないことかもしれません。いまさらそれを話題にするのは、ちょっと私も気が引けます。
でも、敢えて言いたいのです。だからこそ、この作品がいっそう感動的だからです。
末次由紀さんは、かつて自分の作品の中で、某大作家の作品の中の、いくつかの場面の構図を盗用してしまい、激しい非難を浴びました。問題の作品は絶版となり、連載も中止となり、いわばマンガ界を追放されたような形になりました。
長い謹慎期間ののち、やっと「ちはやふる」で復活したのです。

軽い気持ちでやったことが、自分の信用や業績すべてを帳消しにするほどの結果をもたらす─つらい話です。作者はたしかに悪いことをしたのでしょうが、誰もがふと陥りかねない落とし穴じゃないでしょうか。
マンガを描く事をとりあげられ、どん底に落ちた彼女は、どれほど深い絶望の中にあったのか。それを思うとたまりません。
でも、帰ってきた。「いちばん下」を見たものだけが持つ、強さと底力を身につけて。
ときおり、「敗者」の視線からの描写があちこちに出てきます。まさに作者の経験が、物語を紡ぐ力と化した場面でしょう。
「絶対に諦めない。泥水すすっても、カッコ悪くても、またフィールドに立ってやる。だって、マンガが好きなんだもの。マンガが描きたいんだもの」
末次由紀さんの声が聞こえませんか。だからハンパなく感動的なんですよ。

この作品ですが、なんかカッコいいセリフがてんこ盛りです。
「泣くな。泣いていいほど、オレはまだ懸けてはいない」
く~、たまりませんなあ

登場人物もナイスな人ばかりです。とくに渋いオヤジの原田先生とか、あだ名「女帝」の千早の担任とか。

ほんとに素晴らしい作品です。これを読まずにあの世に行く(ぶはっ)のは大損だよ!


余談
しかし、ワタクシ、このたび猛反省しました。「少女マンガ、苦手」という思い込みゆえに、どれくらい損をしていることか。
偏見や偏狭な考え方は、まさに自分自身に返ってきますな

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