別冊「バビル2世」マガジン

「バビル2世」のコミックス&アニメその他を中心に、オールドファンがあれこれ語ります。

第2シーズン熱烈希望・・・ダメ?「タイタニア」後編

2009-04-19 21:05:35 | アニメ作品

本日の一枚(↑)は、DVD発売告知ポスターです。やっぱりジュスラン卿が一番目立ってるじゃないですか。
ちなみに、ジュスランの右隣で全身をさらしているのが、反乱軍リーダー(予定)のファン・ヒューリック。
左下にアリアバート、そのすぐ上がイドリス、イドリスの左にザーリッシュ。つまり、ジュスランを含む四公爵たちです。
左上になにやらお祈りポーズのヒロインがちらーっと見えますが、これがリディア姫。写した人間(私)の技量がトホホなため、切れてしまいました

えーと、このポスターをよくよく見ると、DVDは2話ずつ13巻発売になるようです。1巻につき6,090円!・・・やってられましぇ~ん。
しかし、そこはそれ、商売がうまいのな。特典映像だの、オーディオコメンタリーだの、けっこうそそるおまけがたくさんついてます
ま、いいや。中古でいいのが出たら買おう(おい)

さあ、それでは。今回は原作を中心に、またまた好き勝手なことを語らせていただきます。


存在の耐えられない軽さ
正直に申しあげます。私はスペースオペラが嫌いです。映画やマンガ、アニメならばなんとか見ますが、小説はごめんです。
なぜかといいますと、軽いからです。私は重苦しいのが大好きなので、さらっと「あはは、10万人くらい殺しちゃったかな」(byファン・ヒューリック)みたいなノリにはついていけません。
第1話において、ケルベロス会戦の様子を丹念に描いたアニメ版ですが、アリアバート艦隊ほぼ壊滅=タイタニアの戦死者10万人という部分は、まるでゲーム感覚であり、悲壮感も悲惨さも何もありません。
やっぱり今どきの作品だね、と、○寄りの私は思いましたが、石黒監督は私よりも年長でした。ということは、今どきゲーム感覚というよりも、これがそもそもスペースオペラの軽さ、ということでしょう。
どちらがいいとか悪いとか、すぐれているとかいないとかいったことではありません。好みの問題です。
重苦しいのが苦手な人には、逆にこの軽さが救いになるでしょう。

ならばこの「タイタニア」も、私にとってはスルー作品になるはずでした。
しかし、しつこいですが「ジュスラン=バビル2世」の妄想にとりつかれたために、はまってしまった次第。
もうひとつ夢中になった理由は、原作の第2巻終盤から3巻が、まさに「神展開」だったのです。とても深く、重層的な物語になっていたのです。(ようするに、私の好みでした)
残念ながら、この部分に到達する前のところで、アニメ版は終了してしまいました。

では問題の第2巻終盤以降を見ていきましょう。


ジュスランの物語
注・地上波放送ではじめてアニメ版を見ている方、原作未読の方はご注意ください。
少々ネタバレします。

タイタニア一族にとっての至上命題は、タイタニアが未来永劫繁栄し、宇宙を支配し続けること。そのためには、私情は厳に排除しなければならない。一族の長たる藩王は、わが子に「藩王の資質なし」と見た場合、冷徹に切り捨てねばならない。すなわち、一族、それも五家族会議のメンバーから次期藩王にふさわしい人材を選ばねばならない。
異母兄エストラードを追い落とし、藩王の座についたアジュマーンは、時期藩王に一番ふさわしいのは四公爵のうち誰か、と考える
アリアバートはすぐれた軍人だが、型にはまりすぎて面白みがない。ザーリッシュは力で押すばかり。イドリスは4人のうち一番若く、野心だけが露骨に見える。
政治的手腕にたけたジュスランこそが、ふさわしいのではないか・・・。
しかし、ジュスランの中に垣間見える懐疑心が気になる。もっとも、そうした慎重さは藩王として欠くべからざる資質だが、ジュスランの場合は危険なものを感じるのである。

ジュスランは、一応の兵法をひととおり学び、それなりに軍隊の指揮も出来る。しかし本人は、政治の方が得意である。すなわち交渉、仲介、調停、さまざまな事務処理、である。
ジュスランは、誰にも言わず、心の中にだけ秘めた思いがあった。「よりによって自分が、なぜタイタニア一族になど生まれたのか」
タイタニアが宇宙を支配すること。そのことに対して懐疑的な自分が、一族のトップたる五家族会議に列席している。それが重苦しくてならない。とても権力を愉しむ気分にはなれない。
1歳下のザーリッシュなどは、愛妾を10人以上抱えて日々を楽しんでいる。権力の座にあることを満喫している。
アジュマーンもそうだ。複数の「妻」がいて、あちこちに子供がいる。たくさんの人材の中から、すぐれた者を選び出すためでもある。
しかしジュスランは、そんなことに歓びなど見出せない。彼はまだ正式に結婚しておらず、フランシアという名の侍女だけを愛妾としている。
フランシアは、美しく優しくひかえめで、しとやかで女らしい。ザーリッシュには羨ましがられるくらいである。ところが、ジュスランは内心「物足りない」と思っている。もっと火のように熱く激しい女性と、焦がれるような恋をしたい、などと思っている。
いっぽうでジュスランは、弱小国エルビング王国の第2王女・リディア姫を預かる羽目になった。しかし、まだ10歳の幼女の聡明さ、天衣無縫さは、ジュスランにとって大きな安らぎとなる。
こうしてジュスランの日常は淡々と続いていた。そう、ケルベロス会戦でアリアバート艦隊が敗れ、反タイタニアの気運が高まり始めるまでは。
タイタニアに風が吹いている。それは、長きに渡って宇宙を支配してきた一族に、巨大な波紋を呼んでいた。

ファン・ヒューリックは、タイタニアに滅ぼされたカサビアンカ公国の王女・ミランダ夫妻の宇宙船「正直じいさん号」に拾われ、参謀のドクター・リーやエウリヤ時代の部下も加えて、反タイタニア陣営を糾合していく。
しかし、タイタニアは一筋縄ではいかない。ヒューリックたちを追い詰めていく。惑星バルガシュに潜伏するヒューリックに、ザーリッシュ艦隊が迫る。
バルガシュ軍の内部には、タイタニアへの不満がつのっていた。強引にファン・ヒューリックの身柄引き渡しを求めるタイタニアに、ついにバルガシュは立ち上がる。
激闘の中で、とうとうファン・ヒューリックたちはザーリッシュを倒す。
(アニメはこのあたりで終わり)

ザーリッシュ戦死のあと、バルガシュにはアリアバートが赴くことになった。ところが、またしても反タイタニア軍の奇襲戦法の前に破れ、アリアバートは全治三ヶ月の負傷。
ファン・ヒューリックに2度目の敗戦─アリアバートは、責任を取ってすべての公職を退くことを、天の城(ウラニボルグ)から遠く離れた惑星バルガシュで宣言する。

ジュスランは複雑な心境だった。
アリアバートの母は、ジュスランの母の妹だった。二人は母方のいとこである。同時に、二人の父は同一人物だった。つまり異母兄弟でもあった。
ジュスランの母は、アリアバートの母─妹─を憎んでいた。ジュスランの中には、アリアバートに対する忸怩たる思いはあったが、幼い頃から感情を抑制することを徹底的に刷り込まれた。すべてはタイタニアの繁栄と存続のため、である。
アリアバートは、とりたてて面白みのない人物だと思っていた。しかし、敗戦を機にすっぱりと公職を退いた─それは次期藩王の座も放棄することを意味する─アリアバートに、ジュスランは慕わしい思いを抱く。これほど深い人間性を感じたことがなかったのだ。
しかし、そのとき。天の城では、巨大な陰謀が進行していた・・・。


アニメ版では、ジュスランとアリアバートがいつも仲良くつるんでいますが、実はこの二人、やがて天の城=タイタニアに反旗を翻すことになります。
びっくりな展開ですが、さて、どうして二人が反タイタニアになるんでしょうか。
これはどう考えても、アジュマーンが黒幕です。反タイタニアの気運が宇宙に満ち始め、藩王はいろいろ考えたのでしょう。すなわち、どう転んでもタイタニアが存続し、繁栄を続けるためにはどうすればよいか?ということです。
答えは簡単。本拠地もタイタニア、反乱軍もタイタニアにしてしまえばいいのです。どっちが勝っても、タイタニアそれ自体は安泰です。
そこで、ジュスランがアリアバートの後任となり、バルガシュに赴くことになったのを奇貨として、大がかりな作戦を遂行。
それは、「ジュスラン卿、謀反」というでっちあげ。ご丁寧にもアジュマーン暗殺未遂事件を引き起こし、犯人はジュスランの手下だった、としたのです。
そして、ジュスラン逮捕の命を受けたのは、イドリスでした。イドリスは、駒として(いいように)使われたのです、トホホ。
間一髪のタイミングで、ジュスランと部下たちは、天の城からバルガシュへ逃げおおせます。このとき、ジュスランの旗艦の司令官をつとめていたのが、エドナ・フレデリックス大佐という女性です。実はアリアバートの元カノ。多分ジュスランは、この情熱的な女性士官に惚れるのだろうと思われ
ちなみにジュスランは諸葛孔明級の策士なので、自分が陥れられそうになっていることくらい察知しています。ので、手際よく侍女フランシア、保護しているリディア王女を伴い、そして副官バルアミー(アジュマーン異母兄エストラードの息子)を辺境の星から呼び寄せます。
バルアミー、もうちょっとで逮捕されちゃうところでした。さすがジュスラン卿です。

アリアバートとジュスランは再会し、同志として同じ道を行くことを互いに決意します。
ジュスランとしては、もともと「アリアバートが藩王になって、自分が参謀として政治を補佐するのがいちばんいい」と考えていたのです。だから、自然とそのような形になりました。
タイタニアは、もっと小さくなったほうがいい。ごく普通の、帝国の一公爵家として、そこそこの力を持つくらいがいい。
大きくなりすぎたタイタニアを、あるべき姿に生まれ変わらせる─そうジュスランは考えるのです。
そして、いまさらに天の城のことを思います。天の城こそは、自分にとっての巨大な牢獄だったと。その牢獄を、アリアバートとともに脱出できたのだと。
牢獄にひとり残されたイドリスを、ジュスランは哀れだとさえ思うのでした。

真の主役、ジュスラン。「タイタニア」は、誇り高き孤高の青年が、大切な仲間と共に、母親(天の城)の懐を離れ、父親(アジュマーン)に反逆する物語であるとも言えます。

ところが、物語はさらに驚くべき展開へ。
ザーリッシュ亡きあと、すぐれた軍人でもあったアリアバートがジュスランと共に出て行ってしまった天の城には、これといって戦略に長けた軍人がいなくなってしまいました。これでは宇宙中の反タイタニア勢力に対処できません。
暗殺未遂事件の影響でいまだ床に臥せっている(仮病か)アジュマーンになりかわり、いまやタイタニアの実質的№1となったイドリスは、苦肉の策でファン・ヒューリック一派をスカウトします。
ヒューリックたちはバルガシュに潜んでいたのですが、じつはバルガシュ政府から煙たがられていました。かといって、アリアバートとジュスランからの「お誘い」もありません。
こちらも策士のドクター・リーは、イドリス側につくことを決めます。彼の究極の目的は「タイタニアの滅亡」、そのためならどんな手も打つ、というわけです。
ファン・ヒューリック一党に同行していたタイタニアの使者、エルマン・タイタニア伯爵は、ファンたちがバルガシュを去る直前に、ジュスランにこっそり持ちかけます。「彼らをひとつの船にまとめておきますから、思い切って撃ってしまいなさい」
ジュスランは笑いながら固辞します。かつてのタイタニアが使ったような、汚い手は決して使わない。我々は清廉なタイタニアを目指すのだ、と。
ジュスランとアリアバート。そして天の城のイドリス。タイタニア同士の戦いが、すぐそこに迫っていた。

ここで、原作中断。
そいつはないぜ、田中芳樹センセイ

しかし、なんとなくわかるような気がします。ええ、作者の気持がね。
田中芳樹先生、じつは「どちらにタイタニアの未来をゆだねるか?」ということを決めかねているのではないでしょうか。
たしかにジュスランたちの勝利とすれば、そりゃもう大団円。すっきりカタルシス。
でも、イドリスを勝たせて「かなわなかった夢、志なかばで破れた理想」ってのもまた、日本人が大好きなパターンだしねぇ。
で、最後にファン・ヒューリックが出てきて、イドリスを完全にやっつけちゃうのか。いやいや、やっぱりジュスランとファンは手を握るのか。いろいろなパターンが考えられますね。

ひとつ、私が感じるのは、おそらくファン・ヒューリックは坂本龍馬なんだろうなあということです。
で、ジュスランは勝海舟的な役どころじゃないかと。すなわち、徳川幕府存続に奔走したけれども、最後は幕を引く役目を担った人物です。

・・・・っていうか、なんでもいいです。
いいですから、早く続きを!
第4巻以降と、アニメ第2シーズンを熱烈希望します。

おしまい

最新の画像もっと見る