No.002: ドルチェヴィータの万年筆(廃盤品)

 

No.002: ドルチェヴィータの万年筆(廃盤品)

 

若き頃…自分に不釣合いなのに、「大人の風格」を付けたくて無理をして買ったイタリア製の万年筆。十数年が経ってようやく手に馴染んできた頃に、胸ポケットに挿す為の金具が壊れました。私以上に風格が出てきている万年筆を修理に出そうと文具店にお願いしたところ、製造元が倒産したとの事で、店主に申し訳なさそうに断られて、ありのままの姿でもどってきました。

 

職人さんが丁寧に紡ぐ技術を享受する文化がひとつずつ消える現代社会…頑固に変わらなくて、敢えて変えない職人気質の銘品がまたひとつ消えたと言えるでしょう。使い捨ての工業製品ばかりが溢れるフォーディズムの文化には何だか寂しさを感じる日々だけど、こんな時代だからこそ職人気質を持って真正面から勝負したいものです。

 

丁寧に自分らしく、上手く行かなくても見捨ててしまうのではなく、最後までプロとして真摯に向き合う…調整ができずに役目を終えるしかないペンを通じて、自分自身の職業感に向き合う事にします。

 

 

自分自身で金具の修理をするのもまたいい。

おやすみなさい、よいゆめを。