武田薬、スイス社1兆円買収 来週にも合意内容を発表
2011.5.13 05:00
製薬アジア最大手の武田薬品工業は、1兆円規模の巨費を投じ、スイスの同業ナイコメッドを買収することで同社と最終調整に入った。複数の関係者が明らかにした。武田は買収を機に新興経済国の市場開拓を強化する計画だ。
関係者によると、両社は来週にも合意内容を発表する可能性がある。ただ、なお合意には至っておらず、話し合いが決裂する可能性も残っているという。交渉では80億ユーロ超の提示額が話し合われた。買収額についてナイコメッド側は100億ユーロ(約1兆1550億円)以上を要求する可能性があるという。
チューリヒを本拠地とする非公開企業のナイコメッドは、ノルディック・キャピタルとクレディ・スイス・グループのプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資部門が経営権を握っている。買収が実現すれば、武田は新興国市場で事業を拡大できる。
ナイコメッドの2010年のEBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)は7億7490万ユーロだった。ブルームバーグのデータによると、製薬業界で過去2年間に見られた10億ドル超の企業買収で、買い手が支払った額の中央値はEBITDAの7.1倍。これに基づくと、ナイコメッド買収金額は55億ユーロとなり得る。武田にとってこの金額での買収は、08年にミレニアム・ファーマシューティカルズを89億ドル(現在の為替レートで約7226億円)で買収して以来最大となる。
ナイコメッドの主要な市場は、ロシアやブラジル、ドイツ、イタリア、スペイン。ナイコメッドは、10年の売上高31億7000万ユーロのうち39%を新興国で得ている。同社は15年までに新興国市場の割合を60%にまで引き上げる方針を明らかにしている。
一方の武田薬品は10年3月期の売上高1兆4000億円のうち86%を日本と北米で得ている。
ナイコメッドの従業員数は約1万2500人。欧州とインドに4つの研究開発センターを持つほか、15の製造工場と2つの合弁事業を13カ国で展開している。同社はCOPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)の薬「ダリレスプ」を米国で米フォレスト・ラボラトリーズと提携し販売している。欧州での商標は「ダクサス」。ナイコメッドは1874年にノルウェーで、輸入薬品の代理業者として創業した。
武田の広報担当、エリサ・ジョンセン氏(米イリノイ州在勤)は11日の電話取材に、「事業開発活動に関する噂にはコメントしない」と述べた。ナイコメッド広報のトビアス・コットマン氏もコメントを控えた。
(ブルームバーグ Albertina Torsoli、Kanoko Matsuyama)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます