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雨の記号(rain symbol)

やらせる女

English Version

 隣の芝生、ではないが、人妻を抱いてみたい願望はどの男にもあるもの。
 そんな思いの強いある中年男のもとに、若い知人から耳寄りな情報が入った。
 彼によるとその女はこうである。
「まず、どんな男でも拒絶されることはありませんね。いろんな男たちで試して確証済みです。ちょっと年は食っていますが、薄明りの下でなら、まだ十分に楽しめる身体の張りですよ」
「ほおーっ、それはいい。自分だって威張れた年齢ではない。ぜひ、その女とお手合わせ願いたいね」
「いいですとも。次の週末どうですか」
「週末? 週末はいつも付き合いでゴルフだが、他の日はダメかね」
「ダメです。その日だけです。人妻ですよ。そんなにいつも自由があるもんですか」
 言われてみればそれはそうである。
 その女の亭主だってせわしい世代であろうことは、自分を例に取れば分かる。
 やむをえず、日程をやりくりして人妻の都合に合わせることにした。
 さて、当日。男はめかしこんで約束のホテルに赴く。時間きっかり部屋をノックする。
「どうぞ、開いておりますわ」
 女の艶っぽい返事。
 ドアをロックし、一歩前に進むと、派手なドレスで項のえぐれた女が向こう向きに座っている。
 久しぶりにめくるめく世界が戻ったような情熱的な気分。
 男は上着を脱ぐのもどかしく近づくと、激情をいっぱいにたぎらせ、女を背後から抱きしめた。
 女の顔をあおむかせ、激しくその唇を奪った・・・のはいいが、目の中で次第に浮かび上がってきたその顔は……。
「お、お前! ど、ど、どうしてここにいるんだ!」
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