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外は斜めの雨だった。
退社時刻になって多くの者たちがビルから流れ出ていく。
片付け物があって里見えりは同僚らと一緒に退社しそびれた。
雨はひどくなりだしている。路面ではじく雨が足元にふりかかるのはあまり好きじゃない。
顔をしかめながらえりはビルの外に出た。間に合わせの傘をさし駅に向かおうとしたらそばでクラクションが鳴った。車を見たらよその課の男が笑顔で手を振った。えりは後ろを振り返った。誰かいると思ったからだ。しかしそれとおぼしい者はいない。
えりは車を向き直った。
ドアガラスを開け男はえりに何か言った。人差し指を彼女に向け、手招きした。
車に歩み寄ると「駅まで送ってあげるよ」男は言った。
車はえりを乗せて走り出した。
えりを乗せた車はちぐさの前を走りすぎていった。
「助手席に乗っていたのは確か・・・」
赤い車が止まっていたのには気付いていた。30メートルほどの場所に走りこんできた時、近づいて話をしようかと思った。しかし、先日も誘いを断った手前もあるし、もうじき女友達が車で駆けつけるからとりやめておいた。そしたら今の女に声かけて走り去ったわけである。
「自分の時は自販機の前だったわ。この間また誘ってきたからコーヒーくらいおごってくれるかと思ったら、それもできなかったケチなヤツ。今の子、お気の毒さま――思い出した。あの子、一階の営業にいる新顔じゃない」
車を発進させるとすぐに田中は訊ねた。
「仕事には慣れた?」
「はい」
「それはよかった。前は意地の悪いのがいたんだ。ついてるかな君は」
「・・・」
「俺が送り狼だったら君はどうする?」
赤信号で車は止まった。田中はワイパーを止めた。前方のビル群は雨で見えなくなった。
えりは冷静に答えた。
「どうしてほしいですか?」
田中はえりを見た。
「大学の先輩にそれに遭遇したのがいます。車が走ってる最中ドアから飛び出て死にました」
「はっは、それはきつい冗談だな」
「・・・ほんとです。病院に見舞った時、先輩は意識不明でした」
田中は言葉を失った。
「軽症で寝ていて帰ってきただけの話ですけどね」
田中は声を立てて笑った。彼は額を手で拭った。
「どっと汗が吹き出たよ。君は面白い子だね。お名前は?」
「ご存知なんでしょう? 駅を教えてもいないのに道を間違わないで走ってるし、あなたの名前を私が覚えているくらいですもの」
「・・・」
「次の信号のところでおろしてください。寄り道して帰りますので」
「誰かと待ち合わせでも?」
「いいえ、ただの用事です」
「それなら俺も付き合っていい?」
カフェラウンジを指定して田中は車を置きに行った。
車をおりた時、えりは携帯をオフにした。彼女には付き合いをやめようかと思っている彼がいる。今日、この時、彼女は決心がついたのだった。
田中に乗り換えようと思っているのかどうかは分からない。彼の評判は女たちの中でそんなによくはない。
しかし、それが男全体の事実を指すとは言えない。
カフェラウンジで彼を待つ間、えりは小銭入れを取り出した。そこには660円入っていた。
「あるわね」とつぶやいてえりは小銭入れをしまった。

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