四十代のそこそこエリートたちが久しぶりに同窓会で顔を合わせた。
一次会は天下国家の論争や自身の近況報告、あるいは自慢話で話題が弾んだ。二次会は気の合った者同士で三々五々街の盛り場へと散っていった。
助辺太郎も仲のよかった連中数名と飲みに繰り出した。まずは居酒屋に始まり、最後には一人が行きつけている高級クラブへなだれこむ按配となった。
そこでウイスキー片手に女たちを笑わせ、喜ばせ、みんなしてご機嫌な時間となった。
だが、彼らのわずかな友情の狂いはそこで生じた。仲間の一人がそこの女といつしか抜け駆けしていたからである。しかもその女は店一番、とびっきりの美人ときていた。
女のきれいな顔が酔った脳に強くインプットされていたから、残された者たちは面白くない。女たちがそばを離れた隙に一人が舌打ちして言い放った。
「あいつ・・・いい店があるといって俺たちをここに連れてきたのは、自分のカッコ付けだったのか」
「まったくだ。今後、俺はあいつとの付き合いをごめんこうむる」
「俺もだ」
みなは口々に同調した。
「ちくしょう。それにしてもいい女だったなあ!」
一人が嘆きとともにしめくくった。
アルコールが入っているから理性のタガはすっかり外れている。
それなら自分たちも・・・助辺太郎らはもの欲しそうな顔で女たちを食事に誘い始めたが、運悪く景気のいい客がやってきて彼女らはそっちに移っていってしまった。代わりに回されてきたのは、サブとかいって美貌も魅力も乏しい女たちだ。とたんに酒もまずくなりだした。
店を出てきた時、旧友とのハシゴ酒でいい気分のはずがみんなして落ち込んでいる。
「これでお開きか。あいつ一人が極楽ってわけだ・・・」
散会しかけた時、助辺太郎が切り出した。
「それなら、欲ボケ町のNEWサロンにでも行ってみるか?」
みなは顔を見合わせる。目に好奇心があふれだす。それもそのはず近頃登場の話題サロンだからである。
「行くのはいいが、誰も行ったことがないと来てはちょっと不安だ」
「よし、俺が案内してやる」
好名野朗が胸を張って言い出したのでみなは彼に従った。
入場料金5000円。プラス指名料。プラス本手当。
「サロン嬢のご指名は、そちらでコース選択をすませてから行ってください」
受付の女がしわがれた声で説明した。
案内を受けたすぐの部屋は(1)のコースとなっていて、当店サロン嬢の顔ポスターが番号を振って壁に貼り並べてある。この中から好みの女を選ぶのである。指名料金は1000円。誰かを指名しなければならない。
「まあ、それぞれ顔の好みはあるからな。世間で話題になるだけあって美人が多くて迷うが、俺はこの女がいいな」
助辺らはそれぞれお気に入りを決め、番号札を取った。受付に戻ろうとすると好名が呼び止めた。
「おい(2)のコースがあるぞ。お前たち顔だけでいいのか? 次は彼女らのスタイル決めだ。胸のボインとか、腰のくびれたのとか、ここで選ぶ相手が変わることもあるみたいだぞ」
なるほど、確かに顔だけよくてスタイルが悪いではもうひとつしっくりこない。助辺らは素直に好名のアドバイスに乗った。ここの指名料は2000円となっていた。
その通りであった。助辺の好みのタイプはここで変更をみた。
これで決まりだ。助辺たちは札を変更し、納得し、気分よく受付に戻ろうとした。するとまたしても好名がみなを呼んだ。
「まだあるぞ」
「何だよ好名。もう、これで十分だよ」
「(3)のコースがまだ残ってるよ。彼女達の詳細データ-だ」
助辺たちは一瞬あっけにとられた。顔を見合わせ、プラス7000円のフダを見て大笑いした。
「お前、何言ってる。そんなの知ってどうなる。女なんて見てくれがすべてじゃないか。そんなのに7000円も追加するバカがどこにいるんだ!」
「俺も右に同じだ。女は見てくれのほかに何がある? 俺たちは行くぞ。一人で好きにやってくれ」
「そうだ、そうだ」
口々にそう言い合って助辺たちは好名に背を向けた。
すると彼は残念そうにして言った。
「そうか、お前たちがそういうなら俺一人で入るよ。まあ、この部屋では年齢その他、彼女らの整形前の顔、豊胸前の胸というのも貼り出されているらしいけどね・・・」
