ユギョンはこぼれて散らかった物を片付けだす。　この時、床に落ちたままになっている引き出しに目がいった。小さなケースに覚えがある。ユギョンの胸に馥郁とした感情が戻ってくる。　チョル...

　チョルスは片づけを始めながら子供たちに言った。「ずいぶん散らかしたな」　グンソクはチョルスを見た。「叔父さん、ぼく、身体がだるい」「だるい？　どれ・・・」　　チョルスは片づけの手...

「やっと帰せると思ったのに残念だったな」　ドックはチョルスに言った。　チョルスはため息をついた。「ドック。何か妙だと思わないか？　船のことも通話記録も・・・誰かがわざと隠しているよ...

　携帯が鳴った。カンジャからだった。「どうしたの？」「お姉さん、今どこ？」「人に会って帰る途中よ。悪いけど今は誰かと話す気分じゃないの」　携帯を切ったら、近くで...

　食事を終えて二人は町中をぶらついた。「チャン・チョルス、あれは何？」　魚の形をしたお焼きが店先に並んでいた。「あれか・・・あれはたい焼きだ。食べてみるか？」「たい焼き？　変な形だ...

　二人はバスに乗り帰途についた。乗客はまばらだった。　二人は右と左に分かれて座った。チョルスは外を眺め、バスに揺られていた。　見るとアンナは窓にもたれぐっすり寝入っている。　チョル...

　アンナは続けた。「そして、さよなら・・・」　　アンナはコッスンの食事を用意して玄関を出てくる。　外で憩っていたコッスンは立ち上がって尻尾を振る。　食事を与え、アンナはしゃがみこん...

「サンシリッ！　どこだ、　サンシリッ！」　自宅に戻ってきたチョルスはアンナを探した。　しかし、アンナの姿はない。片付いた部屋はしんと静まり返っている。　アンナの寝床を見てチョルスは...

　チョルスはアンナを家に連れ戻し、アンナがナ・サンシルでないことや今までの経緯を正直に話した。「つまり...

　アンナはさっさと歩いて家の中に入った。チョルスはアンナのカバンを持ってついて入った。　　見通しのいい場所で近くにもいたのに、ほとんど無視された格好だ。　ビリーは無念な思いだった。...