
携帯が鳴った。カンジャからだった。
「どうしたの?」
「お姉さん、今どこ?」
「人に会って帰る途中よ。悪いけど今は誰かと話す気分じゃないの」
携帯を切ったら、近くで”お姉さん”と呼ぶ声がする。
後ろからだ。振り返るとカンジャが海べりから道路に上がってくる。
アンナのそばに走り寄ってきた。
「次はお姉さんが私にかけて」
「隣にいるのにどうして?」
「私には電話が一本も来ないの。雪も降らないし電話もない。寂しいのよ」
「・・・」
アンナは携帯を取り出した。カンジャにかけた。
カンジャの携帯が音楽を奏でた。
「あの曲ね」とアンナ。
音楽をしばらく聴いてからカンジャは携帯に出る。
「こんにちは。久しぶりですね」
「電話したわよ」
アンナは携帯を閉じて歩き出した。
「ええ、よく知ってます。何度か父と行きました」
携帯に話しかけながらカンジャはアンナについて歩く。
二人は岩場で休憩を取った。
「・・・行けません。はい・・・」
カンジャは携帯を相手にまだしゃべっている。
アンナはカンジャに話しかけた。」
「・・・母親はどうして”ジャージャー麺が嫌いだ”と言ったと思う?」
「私の母さんは好きよ」
カンジャは携帯に答えている。
「そうね。母親はジャージャー麺が好きでも・・・時には嘘をつくの。”それが愛と犠牲なんだ”って。チャン・チョルスがそう言ってた」
「そうなの? お姉さんはジャージャー麺が嫌いなの?」
「ええ。これからは・・・嫌いだと言うわ」
アンナはチョルスに携帯を届け終わった。
「これを渡しに来たのか?」
「そうよ。私が電話するから置いていったの?」
チョルスは笑った。
「ああ、そうだよ」
「そうだと思った・・・チャン・チョルス。私、お酒が飲みたい」
「何だ?」
「ジャージャー麺とマッコリよ」
チョルスは苦笑した。
「その二つは合わないぞ」
「別にいいでしょ」アンナは言った。「今日は好きな物を食べたいの」
「それなら、ジャージャー麺とマッコリは今日と明日で分けよう」
「ダメ」アンナはムキになった。「どうしても今日食べたいの」
チョルスは酒場に入り、そこからジャージャー麺を出前させた。
「向こうに」
店員が出前持ちに言った。
金を払いながらチョルスはレジ場の店主に言った。
「今日だけは勘弁して」
二人はジャージャー麺でマッコリを飲んだ。
「サンシリーッ。こんなに妙な組み合わせは初めてだ。だけど、たまにはいいかもな」
「当然よ。私の好物だもの」
「好きな物が二つ並んでてお前も嬉しいだろ」
「違うよ。三つよ」
「・・・?」
チョルスはアンナを見た。アンナは言った。
「あんたもいるもの」
照れくささを隠してチョルスは返した。
「それは光栄だな。好物にくわえてもらって」
「勘違いしないで。おごってくれるから好きなのよ」
チョルスは嬉しそうにした。
「わかった。またおごってやるよ。たくさん食ってくれ」
アンナはジャージャー麺をパクつくチョルスを目に焼き付けた。それからゆっくりマッコリを飲んだ。
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