コン室長がスタッフを伴ってアンナの部屋にやってきた。「さあ、これを運んで」　アンナはここを発とうとしている。　スタッフの動きに気を取られることもない彼女はこの時、目の前のテーブル...

　ビリーはアンナの前に立った。「スタッフらとマッコリを飲んでたのか？　君が誰かと遊ぶ姿は初めて見た」「これが最後よ。もうこんな姿を見せることはないわ」「どうして？　いいことじゃない...

　お盆を持ったスタッフの前にビリーが通りかかった。「それは？」「奥様が」　スタッフは恐縮して答えた。「アンナが？」　何事だと思ってビリーは医務室を覗いた。　驚いたことにアンナはマッ...

　チョルスと別れ、アンナはヴィラ棟へ戻ってきた。「そうよ。私はぜんぶ忘れてしまうわ」　アンナもまた自分に言い聞かせていた。「アメリカに戻って以前のように暮らしていけばいいんだ」　胸...

　チョルスは立ち去っていくアンナを振り返った。　アンナはもう振り返ることもない。「チョ・アンナ、お前の名は知っていたよ。知っていたんだ。チョ・アンナ...

　チョルスは散歩に出た。アンナと過ごした時間を探しに出てきた。　そのへんの道端にアンナが立っていそうな気がした。　バス停にたどり着く。アンナのいた気配の色濃く残る場所だ。いろんな場...

　ビリーは複雑な思いで席を立った。　ビリーとともに他のスタッフも席を外した。　一人残されたアンナはチョルスと一緒に食べたジャージャー麺を思い出した。チョルスとの日々を思い起こした。...

　アンナは海を眺めて物思いに耽った。　こうして日に何度も海を眺める。自分の気持ちを見つめる。「今、苦しんでるのは――私じゃないんだ。サンシルだった時の夢から覚めていないだけ。私は、...

　カンジャは道端に座り込んでアンナの帰りを待っていた。「お姉さん、いつ帰ってくるのかな？」　時計を見る。空を見上げる。雲行きは怪しい。「約束に遅れちゃダメよ。お姉さん早く帰ってきて...

　アンナに一礼してユギョンは切り出した。「元の場所へ戻れてよかったですね」「…」「そのせいか、お元気そう...