6月6日とんで8日、山田ダムに釣行しました。6日はボウズ、8日はチャンベラ3枚でした。
当日の最長寸423
『最近、大きいのしか見てないから、小さく見えるわ』なんちゃって。
前回6月2日、運良く尺半GET出来たこの日は、前夜スコールの直後だった(あえて、スコールと表現したのは、それが夜間に集中し短時間で終わったから)。ここ最近満水位がキープされてるとはいえ、晴天続きで河川からの流入も少なく、稀にポンプが稼働し放出される事もあったので、ほんの少しの減水状態ではあった。そこへの大雨、増水に転じた日、たった1日であったが、へらぶなの捕食スイッチが入った。当日、ダムサイト周辺では、自分も含め3名の釣り人がそれぞれに、1枚の尺半上を手にした。
これで、いよいよシーズン突入かと思わないでもなかったが、不安材料があった。それは水温の変化と透明度の高さ。
釣行毎に水温を計っている。計っているとは言っても、その日一番のエサ作りの際、エサボウルに溜めた水に水温計を沈めているだけにすぎない。バスボートに積まれている魚探の様な正確さはないが、毎回同じ計り方をしているので、その変化は一つの目安とはなる。
5月30日の水温は23℃だった。その後も最高気温28℃の日が3日続いたので、水温もまた上がったかと思いきや6月2日の水温は、23℃のままだった。これは安定しているというより、いったん上昇したのが下がったのではと思った。おまけに、湖面は良い水色をしているのだが、ひしゃくで表面のアオコを避けると、かなり透明度が高いのが分かった。
水温の低下は活性を落とし、透明度の高さは警戒心を高める、ひいては食い気が出ないのでは?6日の釣行時は、水温22℃、8日の釣行時は、前日の冷たい雨の影響(当日の最高気温22℃)でさらに21℃まで下がってしまった。
などと、自分の腕前を棚に上げて、釣れない理由を他に探すのでありマッシュ!
とかなんとか、どうにもこうにも、にっちもさっちも、6日は何をしても釣れませんでした。さあて、1日仕事してまた休み。こんな事なら連休にしたいところですが、シフトの都合がつきません。
上の空で仕事して、いえいえそんな事はありませんよ、お客様の為、しっかり仕事して(ほんまかーい!)、リベンジの当日を迎えました。
前日は、ほぼ一日雨。翌日の天気予報は、午前中で雨は上がり午後からは晴れ。『これは、絶対夕方時合いがあるな!』カミさんに残業申告、許可が下りて、いざ出発!
ダムサイトを、ちら見すると一級ポイントはすでに埋まっていた。迷う事無く上流へ、まずは新広田橋下周辺、大きなモジリあり悪くない、候補の一つにして、紀の国ワンドに向かう。こちらの方が、圧倒的にモジリが多い。迷わず、ここに決定。
ここは、一人静かに釣りが出来るポイント。おまけに数も型も出るいいポイントなのだが、年に1~2回しか入らない。去年は、一度も入らなかった、入れなかった?
準備している間もよくモジル。期待に胸躍らせながらも、いつものルーティーンを淡々と進める。今日は、18尺を出す事にした(“山さん”この辺でもうニタニタしてるんとちゃうん?)。ハリスを新しく括り直す。さあ、勝負ウキをセットしようか…、おっとその前に、なじます時間がいるから、先にエサ作っとこうかな…。エサボウルに水温計をセット、ひしゃくで掬った水を被せて行く。ハリはエサボウルのホルダーに引っ掛けている。短い方のハリスは垂らしている。
その時、事件は起こった!
ガーン!釣り台に衝撃が走る。足元にいたコイが体当たりして来た。『このバカヤロウが!』仕掛けがやられぬ内に回収しておこう…。あれっ、回収しようと思った仕掛けは、ちゃんとあるぞ、いや違う!ホルダーに掛かっているのはハリのみ。括り方が悪かったのか、衝撃でチモトからハリスが抜けている。その為、宙に浮いていた上バリは水中へ。『ヤバッ!』このままではやられる。が、一瞬の判断の遅れで、すでにハリを飲んでいたコイが走りだした。
『盗られる!』18尺が宙に浮く。もう手が届かない。とっさに、竿掛けを万力から外し、竿を引っ掛け大きくあおって、土手に上げた。両手を使って、竿を竿掛けとひしゃくで上から押さえた。『止まった!』だが、この体勢では釣り台の上から動けない。いちかばちか右手を放し、体を起こそうとする。すると、ギリギリ押さえていた力が、コイのそれに負け、ズズッと引っ張られる。『もうダメだ…』あえなく、荒法師武天18尺は水中へと消えた。
あっーなんてこった、パンナコッタ!言うてる場合かぁー!数年前、コイに竿を取られて以来、ずいぶんと気を付けていたのだが、まさか、体当たりされて、仕掛けを落とされるなんて…『お前はジョーズか!』お上手、お上手!
あーあ、しばらく放心状態。貧乏リーマン釣り師にとっては、かなりの痛手!恨む相手は、コイではない、自分自身だ。ここで、釣りを止めたら、自分への敗北だ。ぐっとこらえて、19尺を出す。
準備完了、やっと釣り開始!午前中にチャンベラ2枚GET。だが、うれしくもなんともない。そこへ、“山田の神の使い”が現れた。
「オーイ!バスのおにいちゃーん!竿、流されたんですけど、見かけませんでしたか?」
「見てないなぁー」
「もし、見かける様な事があったら、よろしくお願いします!」
「竿は、浮いとるんかい?」
「ハイ、多分…」
「おーし、分かった!気ィつけとくわ!」
「ありがとうございます」
バスボートの2人は、下流に消えた。一縷の望みを持って、釣りを続ける。時折、手の平大のブルーギルが釣れて来る。
雨上がりの晴天、ダムは、初夏の雰囲気に満ち満ちている。『トッキョキョカキョク』ホトトギスの鳴き声や、珍しいトンボやチョウの姿に癒される。
まるで『もうすぐ、いい事があるよ!』と伝えに来た様だった。
バスボートが下流に去ってから、約1時間程過ぎた頃だったろうか?再び、彼等が現れた。その内のお一人が、右手を大きく上に突き上げこちらを向いている。
『デカバスでも釣ったのかな?』
『いや、違う。あっ!』
『あったでぇー!』
『ありがとうございまぁーす!』
最敬礼してのお出迎え
近づいて来たバスボート、バサーの右手には、しっかりヘラ竿が握られている!
『これやろ!』
『そうです』
『だいぶ、下流まで流されとったで』
そう言って岸までボートを寄せてくれた彼等は、ヒップホップ系の腕にはデザインタトゥー、頭はカラーモヒカンのちょっと厳ついお兄ちゃん達であった。
だが、その瞳は澄んでいて
『ほんとにありがとうございます。たすかりました!』
『でも、魚は獲れんかったで、ゴメンな!』
『いや、とんでもない。わざわざありがとうございます』(コイやから、いいんですとは言わなかった)
お互いに腕をいっぱいに伸ばして、竿を受け取った。もう一度、心からのお礼を言うと
『いや、いいんよ、オレらもたまにやるんよ、お互いに…』
そう言うと、さわやかに岸から離れ、沖に向かって行った。
もちろん、竿が戻って来たのはうれしかった。だがそれ以上に、私の心は満たされた。
17時20分、423GET。
終わりよければ、全て良し!明日から、また仕事頑張ろう!