昨晩辺り、テレビの気象予報士は口をそろえて今冬一番の寒気団が関東まで下がってくる、と言っていた。
立春を過ぎて、さすがに冬将軍は最後のあがきだろうか。
2月10日だから、もう中旬である。例年のことながら2月は時間が早く過ぎて行く。
いくら冬将軍が頑張ったところで、タカは知れている。既に蕗の薹は出てきているし、間もなく初音も聞けるだろう。
わが家のバラもだいぶ芽が膨らんできている。この寒さが目覚めを促しているかのようでもある。
初音といえば鎌倉あたりでは早い年は節分のころに聞くこともある。
わが家の東側、道を挟んだところにちょっとした小山があって雑木やら灌木の茂みがあったりしたものだから、小動物の天国になっていた。
ここに巣があったのか、それとも遊び場だったのか、季節になるとウグイスの鳴き声で目を覚ますと云うような、贅沢を味わっていたものである。
この天国は7、8年前にあれよあれよという間にすっかり平らにされてしまい、次々と家が立ち並んでしまった。
山がなくなってしまったのだから、確かに視界は広がった。今まで隠れていたその向こうの山々が見えるようになったのだが、何せ少しばかり遠い。
相変わらずウグイスは鳴いているのだが、枕元で聞くようなわけにはいかなくなってしまった。
この地に移り住んで40年近くになるが、あれは返す返すも残念でならない。
鶯の脛の寒さよ竹の中 尾崎紅葉
「脛の寒さ」という表現が春先の寒さを象徴しているようで、なかなかのものである。
鳥の脛に目が行くというところが、すごい。
金色夜叉だけじゃないんだね、この人は。
鶯の啼(な)くや小さき口あいて 与謝蕪村
声を聞くものだった対象を、姿かたちに絞っている。絵画的な句に佳句の多い蕪村ならではか。
冬将軍があがけばあがくほど、厳しければ厳しいほど、春の到来は反比例して引き立つ。
赤い鼻緒のみよちゃんと同じで、近づいてくる春を待つ身は待ち遠しい分、嬉しくて楽しいものである。

バラには珍しい薄茶色の花を咲かせる「空蝉」の芽がこんなに伸びてきている

陽だまりにこぼれ種から芽を吹いて咲きだした勿忘草