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平方録

湘南のポンペイ

湘南海岸の春は強風の季節でもある。
春の到来はおおいに歓迎するのだが、強風は、はっきり言って招かざる客…

風の方では「何でオレが客なんだ。オレはここの住人だっ。長年ここで暮らしてるんだ。 招かざるとは何事か ! 」と怒られそうだ。
そう怒るのももっともで、どこかの政治家じゃあるまいし、自分の意見にそぐわないものとは口もきかないで門戸を閉ざし、一方で仲間うちでは特権をフルに使って好き勝手にわが世の春を楽しむ…なんて料簡の狭いことは厳に慎まなければならない。
そういう恥ずべき輩とは一線を画さなければ。

まぁ、強風に自由気ままにされるとこちらの日常の営みを邪魔されたりもして、困ることは困るのだが、これもこの地方の個性なのだと思えば我慢するしかない、腹が立ってもやり過ごすしかないのだ。
最近はやたらと共生社会、共生社会っていうしな。…ん ?
いずれにしても差別はイカン、差別は。

強風に吹かれて何が困るかって、それは波打ち際を走る湘南海岸自転車道が砂に埋まっちまうんだ。
薄っすらと1cm程度積もるだけなら何とか走れることは走れるが、速度は上げられない。
風を切って走る爽快感は失われ、自転車のあちこちは砂まみれになるだろう。
変速機やペダルの取り付け部分など油をさしているような場所には砂が付着しやすいのだ。
帰った後のメンテナンスがめんどうでもある。
文句を垂れたって走れるうちはまだしも、砂が10数cmの高さに積み上がって行く手を阻まれることもしょっちゅうなのだ。
春の強風、夏と秋の台風—少なくとも、この2つは大敵である。

そもそも自転車を漕ぐにあたっては、向かい風は困りもので、向かい風に逆らって何時間も走る場合はそれだけで体力を使い果たす。
そもそもソリが合わないというか、相性が悪いのが自転車と向かい風の関係である。
もう少し若かった頃、休みの日には海に出てシーカヤックを漕いでいた。
あのシーカヤックも向かい風には難渋する。
必死になってパドルで水を掻いたって進まないどころか押し戻されそうになり、陸からどんどん離れていくようなひどい目に遭ったことだってあるくらいだ。

まったくもって、人力に頼る乗り物にとって風は大敵である。
そして今また、行く手を阻まれている…

見出し写真と同じ場所だが、角度を変えてみると車輪の高さ以上に砂が堆積していることが分かる

ところどころ砂の堆積していない場所があるが、せいぜい10~20m
それ以外は圧倒的な量の砂山に行く手を阻まれる

この先は何とかなるんじゃないかと思って自転車で砂山を超えにかかったが、ごらんのとおり100mは続いている 一旦切れているようだが、さらにその先も…
しかも写っている自転車のすぐ左下に杭の頭が見えているが、飛砂防止のための柵の柱で、この下に柵と自転車道が埋まっている
17日と18日に吹いた南西の強風の〝作品〟である 台風の場合はあっという間に通り過ぎることが多いからここまでひどく堆積することはない 
こんなのは初めて見た ベスビオ火山の爆発で埋まったイタリアのポンペイを思い出す ?! 
雪なら暖かくなれば放っておいても解けて消えるが、砂の場合はそういう分けにはいかない
ボクが好む境川河口から相模川河口までほぼ10キロ  
大部分でこんな具合だろうから除砂作業にどのくらいの時間がかかることか

自転車道のスタート地点を少し過ぎた辺りで飛砂防止の竹垣づくりが進められていた
去年の15号と19号台風で吹き飛ばされたりなぎ倒されたり、あちこちで壊滅的な打撃を受けていた  その復旧工事がようやく始まったということのようだ

柵の高さは1m強あるが、これがすっぽり埋まってしまうのだから風の威力はすさまじい 
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