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平方録

ワレ埋蔵酒ヲ発見セリ

台所の床下収納に果実酒があるというので半信半疑でのぞいたら確かに薄っすらと埃をかぶった広口瓶があった。

引っ張り出して瓶の蓋を見るとボクの字で「ボケ酒  '15.7.2x 」と書いてある。
4年前のボクの誕生日の日付じゃないの !
漬け込んでおいたことはもうとうの昔に忘れていた。
ボケの実を漬けたんであって、「呆け」をつけたわけじゃないのにな…

早速ふたを開けてグラスに注いでみる。
広口瓶なのでグラスに注ぐのがなかなか難しい。
慎重にやったつもりだが、直ぐに脇から数滴がこぼれてしまった。
何というもったいないことを…と後悔しても始まらない。
気を取り直してもう一度慎重に注ぐと今度はかろうじてうまくいった。

グラスに半分ほど注がれた液体はきれいな琥珀色をしている。
ウイスキーの琥珀色よりはやや濃い目で、ブランデーの琥珀色にむしろ近いかもしれない。
香りを嗅ぐと…
これはまぁ、ベースが焼酎だし、香りのよい木の樽に付け込んだわけでもなく単なるガラス瓶の容器に詰めただけだから期待する方が無理というものだ。
それでもほのかにボケの実の匂いって奴だろうか、うっすらと青臭いような匂いをかぎ分けることができた。

そしていよいよ舌の出番である。
果実酒に砂糖はつきものなのだが、出来上がった酒が甘くなりすぎるのを避けていつも規定量よりずっと少なめにしか使わない。
従って甘さ控えめの、俗に言う‟辛口”に近い感じには仕上がっていて、しかも4年も寝かせておいただけに舌触りがまろやかで、ひとくくりの表現をすれば「口当たりが良くて美味い酒」に仕上がっていた。

炭酸などで割って飲む方法もあるが、やっぱりストレートで飲むとそれなりのコクが感じられてグッドである。
ウイスキーのシングルモルトを飲むのにストレートで飲ると一番美味しいのと一緒だ。
しかし如何せん甘い。
果実酒なのだから致し方ないが、食前酒に少々という程度だろうな。

かくして思わぬ埋蔵金を掘り当てたような気分で、気分だけは上々と言ったところ。
わが庭のボケには実がたわわに実っていて、このままでは鳥にもついばまれることなく、ただ熟して地上に落下するのを待つばかりである。
大きく膨らんだボケの実を見るたびにボケ酒でも漬けようかなぁと思っていた矢先なのだ。
今回の‟発見”で決心がついた。
5、6年先を見越して焼酎に漬け込み、また床下収納に放り込んでおこうと思う。
その時もまたボケの意味を取り違えることのないよう、期待を込めて…

台風10号の余波で網の高い湘南海岸
見出し写真が地下貯蔵庫から発見された4年物ボケ酒の輝く琥珀色 ♪



これだけの波が押し寄せていたが、海水浴場は「遊泳注意」だった

相模湾の波打ち際がここまで真っ白になることは稀
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