nagao's blog WanderVogel

WanderVogel、山歩きと自然観察

00:2017年11月 ネパールヒマラヤ・クーンブトレッキング 救急ヘリ搬送の記録

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

 

2017年11月中旬から12月初めの予定で、ネパールヒマラヤ・クーンブ山域(サガルマータ国立公園)のトレッキングに出掛けたのだが、実際にはその期間を1週間以上も残して、心ならずも帰国することになってしまった。理由は、高山病による体調悪化で救急ヘリで搬送されたからだ。

(20180318追記:資料X04・保険金の請求と査定・支払いについて)

当初組立てたルートやスケジュールはヒマラヤトレッキングではほぼノーマルなもので、少し日程が長いのだが、難易度で言えば「冬の丹沢山系」を2~3日縦走出来る程度の知識・体力がある人ならばそれほど難しいものではなく、健康でさえあれば安全に歩き通せるものだった。

しかし、高度順応に失敗したことが引き金となり一気に体力を無くしていった結果、簡単にみえたトレッキングコースであっても短時間で身体機能が破綻し、今回のように救急ヘリを要請する事態に陥ってしまう。

 

このレポートでは、トレッキングに出発してから救急ヘリコプターを呼ぶに至るまでの経緯とヘリ移送から現地救急病院への搬送、帰国までの一部始終を出来るだけ詳しく記録しておこうと思う。

また、これからネパールへトレッキングに出掛けようとしている方のために、今回のような不測の事態に陥った時の対処の仕方、起こる前にしておくべきリスクマネージメント、現地の医師とのやり取り、海外旅行保険等の保険金請求の対応と手順、などに関して出来るだけ詳しく書き記しておくことにする。このトレッキング失敗談を参考(?)に、安全なネパールの山旅を計画してもらえれば幸いだ。

 *当初計画のスケジュール、今回の山旅の予算、現地カトマンズのトレッキングエージェント、海外旅行保険、持ち物(装備品、持参したカード、予備費/現金など)の情報・資料についても出来るだけ詳細を記しておく。

 

・目次・

………………………………

01:2017年11月13日(月)金沢八景(自宅)→ 羽田空港(移動/出国)

02:2017年11月14日(火)羽田空港 → バンコク(経由) → カトマンズ(到着)

03:2017年11月15日(水)カトマンズ → ルクラ → パグディン(トレッキング開始)

04:2017年11月16日(木)パグディン → モンジョ → ナムチェバザール

05:2017年11月17日(金)ナムチェバザール(高度順応/停滞日:周辺散策)

06:2017年11月18日(土)ナムチェバザール → プンギ・タンガ → タンボチェ

07:2017年11月19日(日)タンボチェ → パンボチェ → ショマレ → ディンボチェ  

08:2017年11月20日(月)ディンボチェ  → チュクン(高度順応日:小移動)

09:2017年11月21日(火)チュクン → チュクン・リ → ディンボチェ

10:2017年11月22日(水)ディンボチェ(停滞し体力回復を図るのだが)

11:2017年11月23日(木)パンボチェ(下山~救急ヘリ要請~カトマンズ)

12:2017年11月24日(金)(カトマンズ滞在01)

13:2017年11月25日(土)(カトマンズ滞在02)

14:2017年11月26日(日)(カトマンズ滞在03)

15:2017年11月27日(月)(カトマンズ滞在04)

16:2017年11月28日(火)カトマンズ(出発) → バンコク(経由) 

17:2017年11月29日(水)バンコク(経由) → 成田空港(帰国)→ 金沢八景

 

資料X01:Nepal Trekking 2017 当初のトレッキングスケジュール

資料X02:Nepal Trekking 2017 当初の予算

資料X03:ネパール・トレッキングの装備について

資料X04:山の事故:救急ヘリの要請と海外旅行保険請求について

資料X05:ファーストエイドキット(救急ケース)の中身

資料X06:カメラ・ビデオ・モバイルバッテリーとロッジでの充電

資料X07:トレッキング中のロッジでのWi-Fi事情

資料X08:現地トレッキングエージェントとガイドの選択


01:2017年11月13日(月)金沢八景 → 羽田国際空港(移動)

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

羽田空港からカトマンズへのタイ航空の出発時間が深夜であるため、前日の19:00 自宅を出て京浜急行の直通電車で羽田空港に向かう。

金沢八景から京急線で羽田空港国際線ターミナルまでは時間にして50分足らずで到着する。

 

翌日00:20発のタイ航空 TG661便は前日の21:15にチェックインを開始した。

事前にnetで座席を指定しているので、早くカウンターに並ぶ必要も無いのだが、いつもの癖で、早めに並んでチェックインを終らせる。今回,機内に預ける荷物は13.5kgだった。機内持ち込み手荷物の小ザックは6.5kgあったので、合わせてちょうど20kgということになる。

 

100cc以上の液体の入っているボトルなどは手荷物に入れられないので、預け入れの荷物の方に入れておく。ヘアムースなども同様だ。

ただしモバイルバッテリーに関しては、手荷物でチェックを受けなければ通関出来ない。(預け入れ荷物の中に入れておくと、最悪の場合有無を言わさず没収となる恐れがあるという。)

モバイルバッテリーは容量にもよるが、今回僕が持込んだのは20,000mAhのもの1台と10,000mAhのもの1台の計2台だが、日本でもバンコクでもネパールでも手荷物チェックではねられるようなことはなかった。

 

22:00 タイ航空のチェックインを終らせ、続いてイミグレーションを通過、出発ロビーに入る。タイ航空の搭乗口は105番という何故か一番端のサテライトだ。

ボーディングゲート前に設けられた待合いベンチ近くにはバッテリーチャージ用のポストがいくつか設置されていた。海外ではお馴染みのものだが、羽田空港で見たのは初めてくらいだった。USB端末でiPhoneを充電しながら搭乗時間を待つ。

 

ジャスト0:00に搭乗開始。


02:2017年11月14日(火)羽田国際空港 → バンコク(経由) → カトマンズ(移動)

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

0:00に搭乗開始し、B747-400の機内へと入る。TG661便はほぼ定刻通り0:20にテイクオフ。

4:45(ローカルタイム:東京/バンコクの時差は-2時間)にバンコク/スワンナプーム国際空港に着陸、ここでカトマンズ行きのTG319便に乗り換えることになる。

バンコクの空港内では(昨年も数年前もそうだったが)トランスファー客でも厳しいセキュリティチェックを受けなければならない。この時にもモバイルバッテリーのチェックがある。バッテリー底に打っている刻印まで調べられた。

 

10:00 B777-200ERのボーディング開始、TG319便はけっこうガラガラで3席をひとりで使う感じで、広くて快適だった。

  

10:40定刻より10分遅れでテイクオフ。バンコク市内は薄曇りであったが、飛び立つと上空には晴れ間が広がっていた。

タイからビルマ、バングラデシュの海岸線上空を飛び、インド・ダージリン辺りからネパール国内に入るという飛行ルートなので、カンチェンジュンガ、マカルー、クーンブ山系(エベレスト、ローツェ、プモリなど)、マナスル、アンナプルナといったヒマラヤの山々をパノラマで見ることが出来た。機内から見ることの出来る壮大なヒマラヤの姿に期待が高まる。

(この時には撤退するなどとは夢にも考えていない。)

 

カトマンズ盆地の上空で2回ほど旋回した後、カトマンズ/トリブバン国際空港にほぼ定刻通りに着陸した。

  

12:45(ローカルタイム:東京/カトマンズの時差は-3時間15分)気温29℃とかなり暑く感じられる。

 

今回は30日間のVisaをあらかじめ取っているので、イミグレーション通過がとても早かった。荷物をピックアップし、空港建物の外に出る。

  

相変わらず、空港建物の外は見送りや迎えの人、自称ガイドやタクシーの運ちゃん、ホテルの客引きなどでごった返している。

その中から、今回もお世話になる現地エージェントのヒマラヤン・アクティビティーズのスタッフの姿を探す。

僕の名前を書いたカードを持って目立つところに立っていたのは、今回のガイド・ラムさんだった。ラムさんとともに用意されていた車に乗り込み、一路予約しているタメルのエコ・ホテルへと向かう。

 

agodaという旅行サイトでnet予約したkathmandu eco hotelにチェックインした後、ホテル向いのビル2階にある「ヒマラヤン・アクティビティーズ」オフィスにラムさんと共に行く。

ここには今まで何度も来ているので勝手知ったるオフィス、というところだ。玄関前で丸くなって寝ている犬をまたいで中に入る。

 

オフィスで代表者の春日山さんと再会する。まずは今回のクーンブヒマラヤトレッキングの代金(ガイド/ポーター手配、国内線予約、等々の費用)の支払いをする。今回はカトマンズ発~カトマンズ着:16泊17日の予定で、料金は2,195USドル、以前は日本であらかじめ銀行振込みで支払いをしていたのだが、今回は現地で一括キャッシュ払いという形を取った。

料金に含まれている内容その他の詳細は、以下のヒマラヤン・アクティビティーズのHPを参照いただきたい。

http://www.himalayanactivities.com

また、代表である春日山さんのblogも合わせてご覧頂くと、ネパールのタイムリーな情報を知ることが出来る。

日々のネパール情報: http://dailynepal.blogspot.jp

 

kathmandu eco hotelはトレッキングでお世話になるヒマラヤン・アクティビティーズのオフィスの真向かいにあり、タメル地区に中でも特にロケーションが良い。部屋もきれいで広くて、スタッフは親切で気が利き、Free Wi-Fi、ウエルカムドリンクや毎日ミネラルウォーター1本サービスという特典付きで、しかも安価(net予約で1泊約¥3,000~¥4,000)、おまけにバイキング形式の朝食が美味しい、と僕にとっては文句なしのホテルだ。

 

明朝の出発が早朝(5時15分)になるので、朝食は食べられない。なので、朝食分をお弁当パックにしてもらい、出発前にフロントで受取るように頼んでおく。(そういうことが出来るところも、また泣かせるところだ。)

ホテルの部屋に入り、一息ついてからとりあえず両替をしないと、と思い、外へ出て近くの両替所でとりあえず¥30,000分を両替しておく。

今日のレートは¥10=9.00NRsだったので、¥30,000×0.90=27,000NRs、1ルピー=約1.1円ということだ。

まずは今回行くクーンブ山域(サガルマータ国立公園内)の地図を買わねばならない。地図は数種類あるが、コンパクトなもので良いので200NRsの地図を購入する。

その後、いったんホテルの部屋に戻り、時計を合わせたり、mailを打ったり、FBを更新したりして家人にも無事到着をアナウンスしておく。

明朝あわてることなく出発するために今のうちに荷物の整理・パッキングを済ませ、準備などをしていると夜も更けてきた。

 

夕食はタメルでもなかなかうまいハンバーガーを食べさせてくれる店でチキンクリスプバーガー(225Rs)とハムチーズサンド(150Rs)をテイクアウトしてきて部屋で食べながら準備を続行する。

前回来た時もその前に来た時も通った地元バーガー屋さんで、地元民もけっこう買いにくるので混み合っているが、ここのはボリューム満点で美味しいので(店名は「kathmandu burger」だったかな、Thamel Chowkに面してカウンターがあるバーガー屋さんなのですぐに目に付く)で僕は気に入っている。

 

飛行機の中ではあまり寝れなかったこともあり、また明日朝も出発が早いので、19:30に早々と眠りにつく。(今思えば、この時からすでに疲れが溜まっていたのかもしれない。)


03:2017年11月15日(水)カトマンズ → ルクラ → パグディン(国内線移動~トレッキング開始)

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

(第1日目):カトマンズkathmandu(1,300 m) → 国内線/タラエア → ルクラlukla(2,840m) → パクディンphakdling(2,610m) 

 

04:30 起床、身支度を整えて、最終パッキングをして荷物を1階フロントに下ろす。早朝のこの時間帯でも外気温は20℃もあり、やっぱりカトマンズは暖かい。

すでにガイドのラムさんは到着してロビーで待っていた。

5:15 ホテルをチェックアウトし、用意してもらった朝食パックを持ってタクシーで飛行場に向かう。

5:20に出発して、わずか15分で国内線ターミナル(というか簡素な平屋の建物なのだが、、)に到着した。

  

さすがにこの時間帯なら渋滞に巻込まれることもなく、スムーズに走ることが出来る。

 

これが日中だと1時間から1時間半以上も掛かるのだから、カトマンズの交通渋滞は恐ろしい。

日本のODAで一部で整備された信号機などの交通インフラは最初のうちこそ多少は機能していたようだが、そのうち電気も通じなくなり今ではただの飾り物になってしまっている。

主要な交差点には交通整理のための交通警官が10人ほど待機しているが、真剣に交通整理に当たっているのはだいたいそのうちの一人で、あとはただ交差点にたむろしているだけ、という「景色」を良く目にする。

 

空港に着いて、殺風景な待合室内でホテルが用意してくれた「朝食パック」を食べながら、タラエアのチェックインカウンターに係員が到着するのをただ待つ。施設内はひんやりしていて、うすら寒いので、風邪をひかないようにダウンジャケットを着込む。

  

6時15分頃になってやっと係員が到着し、チェックイン業務が始まった。

機内に持込む荷物の重量も15kg未満で問題なくボーディングパスを手にすることが出来た。

 

そこからボーディングルームに移動し、ここでも準備が整うのをひたすら待つ。この時期は早朝のマウンテンフライトの便が多くあり、次々に小型機が飛び立っていく。ガイドのラムさんによると、これでも2~3週間前のオンシーズンに比べると格段に少ないのだそうだ。

オンシーズン時にはこれにルクラ行き、ポカラ行きの便がひっきりなしに飛んでいたのだという。

確かに、マウンテンフライトの客は多いが、ルクラ行きの客は少ないようだ。

 

7:05 やっとアナウンスがあって移動用の小さなバスに乗る。

飛行機はかなり離れたところに駐機しているようで、滑走路内をずいぶん走ったところで小型飛行機に乗り込む。7:30。

  

ラムさんに朝教えてもらったように、ヒマラヤの山々がよく見える左側の席に座る。

乗客15人、乗務員3名(機長、副操縦士、パーサー)の計18人がぎゅうぎゅう詰めで(移動用のバスよりも狭い)機内に乗り込む。

8:25テイクオフ。

  

カトマンズ盆地内にもやっと陽が射してきて、機内も少し暖かくなってきているが、まだダウンジャケットは着たままだ。

小型飛行機は翼を岩肌に擦り付けるくらいの距離で、谷間を低空で飛行する。

きっかり30分後、8:55にルクラ飛行場の滑走路に滑り込むようにタッチダウン。うまいもんだ。

  

ルクラ飛行場に到着した小型飛行機は、乗せてきた乗客と荷物を下ろすとすぐに、滑走路脇で待っていたカトマンズ行きの乗客と荷物を積み込み、プロペラを止める時間も惜しむかのようにあっという間に元来たカトマンズに向けて飛び立っていった。

  

ルクラ(2,850m)に到着後、陽の当たる中庭のあるバッティでお茶を飲みながら一息入れる。

その間にガイドのラムさんは帰りの飛行機のリコンファームを現地の人に頼んでいたようだった。また、ここから一緒に行動することになるポーターを選んでいるようで、ポーターはルクラからルクラまでの契約で雇うということなのだろう。

マサラティーを2杯飲んで、9:30 いよいよトレッキングに出発する。気持ちが高まる瞬間だ。

  

ルクラ村の出口にチェックポストがあった。

今回、TIMS(トレッキングパーミッション)のシステムが変わって、こうした現地のチェックポストで通行料(?) を現金払いで行なうようになった。

と、いうことで、ここで2,000Rsを払うことになる。

この集金システムについては、僕もよく解らないのだが、とにかく今年からそうなったのだそうだ。

 

行程的に今日・明日はDudh Koshi ドゥードゥ・コシ川に沿って遡って行くわけだが、ルクラの標高は2,840m、今日の目的地パクディンの標高は2,610mなので、標高的には 下って行く感じなる。標高が低いので周りに緑は多い。

  

昨年、ゴサインクンド周辺を歩いた時と同じように、シャクナゲ、アセビ、ヒマラヤゴヨウ、ウツギ、アジサイ、メギ、ヤマハハコ、ハキダメギク、イラクサ、アカネなどお馴染みの樹木、植物が目に飛び込んでくる。

ランタン地方で昨年末も目にしたヒマラヤザクラの姿はここではぜんぜん見られないのだが、民家の庭先に植えられた皇帝ダリアの花が咲き誇っていたのがとても印象的だった。

 

  

ルクラを出て少し歩くとChheplungという小村を通過する。ここで、目の前にKongde Ri コンデ・リ(6,186m)やKhumbi Yul Lha クンビラ(5,765m)といった特徴的な山々が姿を見せ始める。ヒマラヤに来たなぁ、という思いを強く抱かせる山容だ。

クンビラ山のちょうど真下あたりが2日目に到着するナムチェバザールの村に当たる。日本での山歩きだったら1日で歩けるくらいの距離にある。それをのんびりと2日かけて歩く。今日は天気が良くて暖かい。山々もクリアに見える。

 

この時期はトレッキングシーズンの狭間に当たるためか、トレッカーの姿もぐっと少なくなっていて、落ちついてのんびりと歩くことが出来る。

山から降りてくるトレッカーが多い反面、これから登るトレッカーがやけに少なく、やはりシーズンオフに突入しているということなのか?と想像する。

ガイドのラムさんによると、11月中旬くらいからクリスマス休暇までの期間、外国人トレッカーの数は一時少なくなるのだという。

  

12:05 Dudh Koshi川支流のThado Khosi沢を渡ったところ(Ghat村手前)のバッティで昼食(ダルバート)を取る。

陽の当たる気持ちの良いテラスからは、Kusum Khangkaru クスム・カングル(6,370m)やKongde Ri コンデ・リ(6,186m)が良く見える。

気温は25.5℃、陽射しが強く半袖になっても暖かく感じる。

13:35 昼食を終えて、ふたたびのんびり出発する。

 

Dudh Koshi川沿いの緑の多い山道を歩く。サンショウの大木が目立ち始める。サンショウは日本の野山でも良く目にする樹木だが、こんなに大きくなるのか?とビックリするほど大木で、かつサンショウだけで樹林帯を形成しているのにも驚かされる。

他にも、ツルウメモドキ、オニシバリ、フジ、サルナシ、ノイバラなど日本の山でも目に付く植物が多く見られた。

 

昼食後1時間ほど歩いて、14:40 今日の宿のあるパクディンphakdling(2610m) 村に到着した。

パクディン村には外国人トレッカー相手のロッジが多数あるが、それらのロッジ群を通り越し、再度Dudh Koshi川を吊り橋で渡った右岸に建つ洒落たリゾートロッジ(サンライズ・ロッジ&レストラン)に入る。15:00、気温27℃。

  

ロッジ前のテラスには団体のトレッカーだろうか、すでに何人か到着していてくつろいでいた。話し声を聴くとドイツの団体さんのようだ。

 

時間的にはもう少し先のモンジョmonjo(2815m)まで歩ける時間だろうが、初日からあまり飛ばして歩くのも欲張り過ぎなので、今日のところはパクディン泊りというのが妥当なところだろうな。

 

ロッジにはレストラン棟が2棟、宿泊棟が何棟か建っていて、入口には大きなマニ車が立てられている。なかなか洒落た佇まいで、雰囲気の良いロッジだ。

1階のシャワー/トイレ付きの部屋と2階のトイレ共同の部屋があったが、泊まり客が少なく、共同トイレといっても僕一人で独占出来るのと2階からの眺めが気持ち良さそうだったので、2階の部屋に入ることにした。(泊まり客が多ければ、当然1階のトイレ付きの部屋の方が良いのだろうな)

  

部屋に照明はあるのだが、コンセントは無かった。

陽のあるうちに寝床の準備をすべく、エアマットを膨らませて、シュラフを広げておく。

17:00、気温15℃、日が陰ると一気に寒くなるのが山の気温だ。こういう時に風邪をひいたりするものなので注意が必要だ。

ガイドのラムさんが持って来たパルスオキシメーターで血中酸素濃度をチェックする。91%と標準並みで問題ない。心拍数は70回とこれも問題ない。

 

食堂で夕食のバフステーキを食べる。バフ(水牛)の肉は筋張っていて固かったが完食でした。

有料のWi-Fiもあるのだが、朝までの利用(食堂でのみ)で500NRsとけっこうな値段だったので、ナムチェバザールに着いてからでもいいか、と考えてここでのWi-Fi利用は止めにした。

夕食が終って、持参したナルゲンボトルとテルモスの両方に熱湯を入れてもらう。ナルゲンボトルはタオルを巻いて湯たんぽ代わりに使用する。

 

20:00 就寝。


04:2017年11月16日(木)パグディン → モンジョ → ナムチェバザール

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

(第2日目):パクディンphakdling(2,610m) → モンジョmonjo(2,815m) → ナムチェnamche(3,440m)

 

06:15 起床、身支度を整えて、食堂へ行く。朝の気温は4.9℃、湿度80%、山の朝はやはり寒いが思いのほか湿度があるのは意外だった。

昨夜は冷え込むのではないかと、ダウンの上下を着てダウンシュラフに入ったのだが、さすがに暑くて夜中にダウンを脱いでしまった。

寝間着代わりにしたmont-bellのメリノウールの上下はさすが暖かだった。快適に熟睡することが出来た。

 

7時に朝食(パンケーキ+目玉焼き2個(600Rs)、マサラティー)を食べ、7:40にサンライズ・ロッジを出発する。まだ谷下までは陽が射し込んできていないので外気温は9℃と低い。

30~40分ほど歩いたところで、右手奥に新たにThamserku タムセルク(6,618m)が見え始める。

8:30 やっと谷底にも陽が射してきた。ところどころに滝が見える。日本ならひとつひとつに名前が付けられていそうな美しい滝だが、ここでは名無しのようだ。

8:50 Bengkarで休憩、意識して水分補給(ポカリスエット)をするようにしている。

  

ナムチェ方向からは、荷を運んだ帰りのロバやゾクキョ(ヤクとウシの交配種)のキャラバンが続々と降りてくる。

しばらくはヒマラヤゴヨウやコメツガ、シャクナゲ、サンショウなどの樹林帯の中を歩く。

 

9:25 Manjo Khola手前からMonjoモンジョ村の集落越しにKhumbi Yul Lha クンビラがよく見える。

  

その下には山肌に横一線にゴーキョへと向かうトラバース道が良く見渡せる。そのトレッキング道を双眼鏡で眺めていると、ゴーキョ方向(右手)から続々と戻って来るたくさんのトレッカーの姿も確認することが出来る。

 

10:00 Monjoモンジョ村にあるチェックポイントを通過する。

  

チェックポイントを過ぎ、吊り橋を渡りDudh Koshi川右岸のJorsaleジョサレという村のバッティで昼食を取る。10:20

ダルバート・チキンカレー(650Rs)+マサラティーを食べる。大変美味しく、ペロリと完食!

  

陽が当たってきてだんだん暑くなってくる。外気温は22℃くらいにまで上がっているが湿度が22~24%と低くて、汗をかかずにすむのだが、かなり乾燥してきている感じがする。顔や腕には日焼け止めクリームを塗っているが、それでも日に焼けそうなほど陽射しが強い。

11:45 Jorsaleジョサレ村を出発。

 

再度吊り橋を渡り、左岸沿いをしばらく歩くと写真などでお馴染みの2段の高い吊り橋が見えてくる。下の吊り橋は古いもので、現在トレッカーが渡るのは上段の方の新しい吊り橋だ。Dudh Koshi川はここで本流とBhote Koshi川とに分岐する。

  

吊り橋を渡り終えると、Dudh Koshi川の谷の先にTabuche Peak タウチェピーク(6,495m)が見えてくる。タムセルクは山裾に隠れて見えなくなってしまったが、Manjo Khola越しに、Kusum Khangkaru クスム・カングルがよく見える。

 

ここからナムチェバザールまで距離はたいしたことはないのだが、600mの高低差を一気に登る。休憩をはさみながら1時間ほど登るとちょっとしたView Pointがあって、ローツェ、ヌプツェ、その向こうに小さくエベレストの姿も見ることが出来る。

そこから、20分ほど登ったナムチェに入る手前に何故かまたチェックポストが設けられていて、よく解らないのだが、ここでも通行料(?) 3,390Rsが徴収される。(ルクラ村で支払った2,000Rsと合わせると、5,390Rsにもなる! 外国人とレッカーが窓口で猛烈に抗議をしていたが、結局支払うしか無いようだ。)

 

吊り橋から直登すること2時間弱でようやく、すり鉢状に広がったナムチェバザールの下の門に到着した。

Namche Bazar ナムチェ・バザール(3,440m)

  

ナムチェバザールの村は上と下ではかなりの高低差があるのだが、それでも10分も登ると上段まで出ることが出来る。でも、山懐に広がる村としてはかなり大きい村だ。商店街もあり、ベーカリーや洒落たカフェ、カフェバーのようなお店もある。

ロッジは出来るだけ景色の良いところにしたいので、上の方のロッジで決めたい。1件目は何だか古そうだったのでヤメにして、2件目のロッジの部屋を見せてもらう。ここは窓からの景色が良くない。

 

3件目に入ったロッジ(クーンブ・リゾート)でやっと居心地の良さそうな部屋に出会えたので、そこに決める。14:20。

トイレや洗面所は部屋の外にあるが、隣接しているので不都合はない。山の中のロッジとは思えないほどきれいな部屋、トイレだった。

有料Wi-Fiは500Rsで、宿泊している間中(2日間)使えたので、日割りにすると250Rsということになるな。

部屋の窓からはナムチェの村を見下ろせ、谷を挟んで目の前にKongde Ri コンデ・リ(6,186m)がドーンと聳えている。

 

Wi-FiでmailチェックやFBの更新などしながら、マサラティーを飲みながら夕食までの時間をくつろぐ。

18:00 夕食、誰かのblogに書いてあってことをふと思い出し、シェルパシチューを頼んでみた。甘いものも欲しかったので、チャパティw/ハニーとジンジャーティーを頼む。味はまあまあで特別どうということのないものだったのだが、食事の始めに温かい「おしぼり」が出てきたのにはビックリした。日本の居酒屋みたいで有り難いサービスだなぁ!

夕食後、パルスオキシメーターで計ってみると、血中酸素濃度は70%、脈拍は87と、標高が上がってきているので血中濃度が下がるのは理解出来るが、、少し低い感じもする。

 

19:30 日が暮れると特にすることもないので、早めに寝ることにする。室内温度11℃、湿度58%、部屋には暖房器具などないので、シュラフに潜り込み、温かくして寝るしかないのである。


05 2017年11月17日(金)ナムチェバザール(高度順応/停滞日:周辺を歩いて散策)

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

(第3日目):ナムチェnamche(3,440m) → クムジュンkhumjung(3,780m) → クンデkhunde(3,840m)  → ナムチェnamche

 

06:15 起床、ちょうど部屋の窓から見えるKongde Ri コンデ・リ(6,186m)に陽が当たるところだった。美しい!

  

室温は10℃(湿度60%)あり、それほど寒くはないはずなのに、朝方かなり冷え込んだ気がしたのは体調に変化が現れてきているのか?

07:00 朝食(アメリカンブレックファースト:目玉焼き2個、パン2枚、サラダ)

 

07:50 ロッジを出発してすり鉢状のナムチェの裏山を、正面にクンビラを見ながらひたすら登る。

  

登ること1時間半、09:10 見晴しの良い尾根上に出る。ここで標高3,750mくらいだろうか。

尾根を回り込むとAma Dablam(6,814m)アマ ダブラム、Lhotse(8,516m)ローツェ、Nuptse(7,864m)ヌプツェ、そしてEverest(8,848m)エベレストの頭が見えてくる。手前には低い森に囲まれたエベレストビューホテルも見える。

  

9:40 エベレストビューホテル(標高3,880m)に到着。洒落た作りのロビーを通り越し、テラスに出ると写真で見た通りのヒマラヤの展望が目に飛び込んでくる。わかっていてもこれはけっこう感動的なシーンだ。

 

写真だけ数枚撮って、ホテル前庭からKhumjungクムジュン村方向へシャクナゲとダケカンバ、(コメ)ツガの樹林帯を下って行く。

春先になればシャクナゲの花が咲き誇りきれいなのだろうなぁ、と想像しながら歩く。冷え込みの厳しい今の時期は(谷川岳や白毛門の尾根でよく見るシャクナゲと同じように)葉っぱを丸くして寒さに耐えている。

 

いっぽうダケカンバは樹皮は日本のものと同じなのだが、樹形はずいぶん印象が違って見える。幹も枝もねじ曲がって育っていて、矮小化しているように感じるのはやはり標高の違いと厳しい気候故なのだろうか?

景色の良いポイントで適度に休憩をはさみながら、のんびりとクムジュン村へと下って行く。

  

10:30 khumjung(3780m) クムジュン村まで下ってきた。

ナムチェなどと比べると観光客の姿はぜんぜん見られず、落ち着いた素朴な村の佇まいにホッとさせられる。先の大地震でここも多くの家屋が倒壊したらしいのだが、今見る限りではそんな印象はまったく受けない。観光客・外国人トレッカーが多いということは大きな経済効果がある(お金持ちの村?)ということなのだろう。昨年歩いたランタンやタマンヘリテイジエリアで見たような悲惨な状況で放置されたまま、ではなくちゃんと修復出来ていることがわかる。

 

  

村の中を歩いていると、大きなゴンパ(寺院)に行き当たった。Samten Choling Gonpaサムティン チョリン ゴンパ。この中には有名な「雪男の頭皮」が厳重な金属の箱に入れられてしまわれているのだそうだ。250Rs払うと見せてくれると言うが、残念ながら僕はあまり興味がなく、ゴンパの外観だけ見学させてもらいゴンパをあとにする。

陽当たりの良いゴンパの前庭からは、タムセルク、アマダブラムの雄大な姿が目に飛び込んでくる。

 

khumjung(3780m) クムジュン村からkhunde(3840m) クンデ村に向かって、暖かな陽射しを浴びながらのんびりとトレッキングを楽しむ。

快晴、外気温は22℃(湿度=32%)だが、陽射しを浴びて歩いていると汗ばむくらいだ。

 

クムジュン村には簡素な石垣に囲まれた麦畑、ダイコン畑が広がっている。もちろんこの時期なので作物はなく、茶色い乾いた土が広がっているだけなのであるが、、

石垣は放牧?されているウシやゾクキョが入り込まないように積まれているものなのだが、自然石をただ適当に積んでいるだけなのでウシの身体がちょっと触れただけでもガラガラと崩れてしまいそうなのだが、こんなもんで大丈夫なのだそうだ。

日本の里山で見かける堅牢な「シシ垣」の造りとはぜんぜん違うので、大丈夫かなと余計な心配をしてしまうが、日本のやんちゃなシシ(イノシシ)と違って、こちらのウシは身体はデカイがかなりのんびりした性格をしているのだろう。

 

   

11:40 khunde(3840m) クンデ村に入り、1件のバッティで昼食にする。チーズサンド+トマトスープ+レモンティー。

あとで思い起こしてみると、標高も高く極度に乾燥もしているにもかかわらず、意識して水分補給をすることを怠っていた気がする。これも後に起こる体調不良の一要因になっているのかもしれない。

 

小1時間ほど昼食+休憩を取って、ナムチェに向かって埃っぽい斜面を下って行く。道端には花びらが白とブルーで色分けされた可愛らしいリンドウの花がたくさん咲いていた。日本では見たことない配色だな。こちらではこれが「普通のリンドウ」なのか?

  

14:00 ナムチェのロッジ(クーンブ・リゾート)まで戻って来た。

手と顔を洗って、部屋から見えるKongde Ri コンデ・リ(6,186m)を眺めながらのんびりと過ごす。

 

18:00 食堂に移り夕食をとる。ヤク(バフかもしれないけど)ステーキw/ライス+ベジ、マサラティーの夕食。食堂は薪(+ヤクのフン)ストーブが焚かれているのでホッとする温かさだ。血中酸素濃度を測ってみると72%で、標高3,500m付近であることを考えると問題無さそうにも思えるが、微妙なところだな。

 

早々に眠りにつく。寝具は3シーズンのダウンシュラフの上に備え付けの毛布を掛ける。エアマット+エアピローの組み合わせは、下からの冷えを防いでくれる快適なアイテムだ。寝間着はmont-bellのメリノウール下着EXPの上下でとても暖かで快適だ。


06:2017年11月18日(土)ナムチェバザール → プンギ・タンガ → タンボチェ

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

(第4日目):ナムチェnamche(3,440m) → プンギ タンガPhungi Thanga(3,250m) → タンボチェtengboche(3,860m)

 

06:00 起床、身支度を整える。室温は11℃(湿度59%)晴れ、体調は悪くない。

07:00 朝食(アメリカンブレックファースト:目玉焼き2個、パン2枚、サラダ)を食べ、荷物のパッキングを済ませる。

 

7:50 ロッジを出発。2日前に見た山肌に一直線に付けられたトラバース道を歩く。

  

谷を挟んでCholatse チョラツェ(6,335m)やThamserku タムセルク(6,618m)、Ama Dablam アマ ダブラム(6,814m)を見ながら見通しの良い道を歩く。素晴らしい景色です!

野生のカモシカの家族の姿がたくさん目に付く。日本のカモシカと同じように、目が合うとジッとこちらを観察しているように固まってしまっていて、お互い見つめ合うことになるところなどは丹沢で出会うカモシカと同じだ。

 

崩れかけた道を修復している人たちがいる。修復に使う材料はそのへんの石片を採ってきて加工し利用するのだろうがすべてが人海戦術なので、なかなか大変な作業だな。ほんのわずかだがドネーション(200Rs)をする。

 

9:30 Kyangjuma キャンジュマを通過。ここで見通しの良いトラバース道は終わり、シャクナゲ、ダケカンバ、メギなどが生い茂る樹林帯の下り道に入っていく。途中 Sanasa サナサというところでゴーキョ方面への道と分岐する。

Ama Dablam アマ ダブラムが見通せる休憩箇所が時々あるが、基本的には樹林帯の下り道がPhungi Thanga プンギ タンガというDudh Koshi川に面した村?まで高低差300mを一気に下ることになる。

Dudh KoshiはPhungi Thangaの少し上流で、ゴーキョ方面から流れてくる本流とカラ・パタール、チュクン方面から流れてくるImja Kholaとに分岐する。

  

10:40 Phungi Thanga(吊り橋の手前)に着く。少し早いのだが、ここで昼食を取ることにする。バッティの外には荷役用のヤクが放し飼いにされていた。

開放的な外のテラスで食べても良かったのだが、陽射しが強すぎて暑いくらいだったので室内で食べることにする。

ボイルドポテト(ただ茹でただけのジャガイモ)+ヤクチーズ、マサラティーの昼食。

ジャガイモは量が多すぎて半分しか食べられなかったが、素朴でまあまあ美味しかった。ヤクチーズはとても美味しかった!

ルクラを離れるにつれ、食事の値段がだんだんと上がっていくのにビックリです。ジャガイモ+チーズで600Rs、マサラティーが120Rsとは驚きですが、これらはみな外にいるヤクの背中に載せられてきたんだなぁ、と考えると納得するしかないな。ヤクのエサ代も含まれていることだし。

(でもまあ、僕の場合は3食+休憩時のお茶はあらかじめトレッキングの料金に含まれているので、トレッキン中に自分で現金を払うことはいっさい無いのではあるが、、、)

 

11:40 Phungi Thangaのバッティを出発し、目の前の吊り橋を渡ってDudh Koshi川対岸の斜面に取り付く。

  

ここからtengboche(3860m) タンボチェまでひたすら登りが続く。ナムチェの最後の登りと同じ様に、高低差600m一気に高度を上げて行く。

吊り橋を渡り少し登ったところで、3度目?のチェックポストがある。

 

登り一辺倒なので、少しでも眺望が開けたところを狙って何度か休憩を入れる。

立ち止まり、後ろを振り返ってみると、これまで歩いてきた道がはるか遠くまで見通すことが出来、けっこう感動的だ。

  

登りの途中で、荷物を満載したヤクの一団に追い抜かされる。毛の長いヤクにとってこの気温はめちゃくちゃ暑いのだろうな。ピンク色の舌を出してゼイゼイ言いながら登ってくる。

 

12:35 tengboche(3860m) タンボチェ村入口の派手な門をくぐる。石段を登り切って振り返ると、白い仏塔の向こうに雪を着けたカンテガとタムセルクがきれいに見えていた。

  

吊り橋を渡って登り始めてから1時間弱で登り切ったことになるが、今考えると、これがその後の体調不良の大きな原因、引き金になったのかもしれない。この高低差600mを登るにしてはペースが早すぎた。

2時間以上掛けてゆっくりと登るべきであった。今考えると思慮が浅かったととても悔やまれる。

 

ゴンパ奥に1件だけあるロッジに入る。ロケーションの素晴らしい2階の部屋の窓からは、タンボチェ ゴンパの屋根越しにローツェやエベレストの頭がよく見える。エアマットを膨らませ、シュラフを準備し、早々に寝床を作る。

 

ロッジの先、見晴しの良い尾根上を歩いてみると、登山家・加藤保男の記念碑や橋本龍太郎の記念碑など日本人ゆかりの石碑がいくつも建っている。

ここからの眺めはとっても素晴らしい! 360°展望が広がっている。

  

尾根上に張り出した一画からは、Lhotse(8,516m)ローツェ、Nuptse(7,864m)ヌプツェ、Everest(8,848m)、Cholatse チョラツェ(6,335m)を始め、Ama Dablam アマ ダブラム(6,814m)、Kangtega カンテガ(6,783m)、 Thamserku タムセルク(6,618m)、などヒマラヤの壮大な景色が一気に目に飛び込んでくる。

目を移すと、今まで歩いてきた道がずっーと続いているのが見え、昨日散策したクムジュン村も良く見える。逆光の中、Kongde Ri コンデ・リの姿がひときわ美しい。

 

15:00 ラムさんに誘われて、タンボチェ ゴンパを見学する。

  

歴史あるゴンパは今までもいろんなところ(ラサ、レー、ザンスカール、ダラムサラなど)で目にしてきたので、ここのがそれほど珍しいというわけではないのだが、せっかくなので内部も見学させてもらう。

  

ただ、ゴンパの内部は冷え込みが厳しく、何だか体調が悪くなってきた。とても長時間読経を聴いていることは出来ない。

身体の芯から寒気がし出し、さらに頭も痛くなってきたのでロッジに戻って部屋で休むことにする。

ラムさんにも言われたが、軽い高度障害に陥っている感じだ。(やはり、今日の登りのペース配分をミスったのが原因だな)

 

SPO2の数値は68%だが、体調が悪いことは自覚出来ているので、早めに治さないと。

夕食(アップルパイ+マサラティー)を少し食べたあと、水分補給をしながら早めに休むこととした。

部屋の室温は11℃、湿度54%、それほど寒くはないはずなのだが、イヤな悪寒がする。

 

18:30 頭痛薬を飲んで早めに就寝する。やたら眠くなるというのも高山病・高度障害の症状のひとつなのだそうだが、その前兆が現れて来だしているのかもしれない。


07:2017年11月19日(日)タンボチェ → パンボチェ → ショマレ → ディンボチェ

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

(第5日目):タンボチェtengboche(3,860m) → パンボチェpangboche(3,930m) → ショマレshomare(4,010m) → ディンボチェdingboche(4,350m)

 

06:00 起床、身支度を整える。室温は0℃(湿度38%)晴れ、じっくり寝たので体調は少し持ち直したように思えた。

部屋からはゴンパの屋根越しにローツェやエベレスト、アマダブラムなどが見える。

廊下側の窓からはコンデ・リの山々に朝日が当たり始めているのが見えた。

  

06:50 食堂に降りる。食堂は朝からストーブが焚かれとても暖かだ。

朝食(トマトオムレツ、チーズトースト)を食べ、ミネラルウォーターを2本(250RS)買う。

  

 

07:50 タンボチェのロッジを出発する。外気温2.7℃(湿度=42%)と、陽が当たっていないとちょっと肌寒い。

シャクナゲ、ダケカンバ、モミの樹林帯をImja Khola イムジャ・コーラの河原までひたすら下って行く。途中、反対方向からタンボチェに向かって登ってくる外国人トレッカーの団体や、荷役作業の帰りのロバやゾクキョ、ヤクの群れと頻繁にすれ違う。

  

斜面を下りきって、Imja Kholaに掛けられた高くて長い吊り橋を渡り、今度は右岸側の斜面を登る。

深く切れ込んだ谷底はまだ薄暗く冷えきっていて、止まると身体の芯から冷えてくる。

 

陽当たりの良い展望の効く場所まで登ってここで少し休憩を取る。ここまででちょうど1時間くらいだ。

天気は快晴!で、ここは陽が当たって温かく、気持ちが良い。

  

渡って来た吊り橋越しに、今朝出発してきたタンボチェのゴンパ群が見える。その背後にはKongde Ri コンデ・リが聳えている。

これから向かう先にはAma Dablam アマ ダブラム(6,814m)が控えている。アマ・ダブラムは見る角度によってその印象を一変させる。

 

道は川に沿って山裾に付けられたトラバース道に変わり、素晴らしい眺望が続く。

岩がゴロゴロと露出した急な斜面にはカモシカの群れ(家族?)がたくさん取り付いていて、わずかに生えている枯れたような草を食べているのが見える。上の方ではヤクも放牧されていた。

  

 

09:40 pangboche(3930m) パンボチェ村に到着し、マサラティーを飲み休憩。

10:50 shomare(4010m) ショマレ村に到着し、ここで昼食(エッグドロップトマトスープ+ジンジャーレモンティー)を取るのだが、このころから少しずつ食事の量が減ってくる。美味しく食べられなくなってくる。

図らずもその時日記に書かれていた一文が「このトレッキングで最も大切なことは体調管理だ!」 だった。本人もその時しっかりと自覚しているのだったが、この時を境に一気に食が細くなり、じりじりと体力を消耗していくことになる。

 

頭痛などあまり感じなかったので、高度障害だとは考えなかったが、今にして思えば、食事が出来なくなるという体調不良の根本原因は高度障害の影響が大きかったのだろう。

  

それでも、体調第一に考えて出来るだけゆっくり休憩を取り、12:00 ショマレ村を出発、dingboche(4350m) ディンボチェに向かう。

ショマレを出たところから谷を吹き抜ける風が強くなり出し、しかもかなり冷たい。ここで、今回初めてゴアテックスのハードシェルを着ることになる。

天気は快晴で雲ひとつ無く、陽射しは十分降り注いでいるのだが、底冷えというか悪寒を感じるようになる。

それまで微かに見えていたエベレストの頭はここで、ローツェ南壁の陰に隠れてしまい完全に姿を消す。

 

トラバース道から広い河原に出る。開けた荒涼としたImja Khola 右岸の河原を進む。風はさらに強く冷たくなって、急激に体力を奪い取っていく。

周りは、360° あらゆる方向からヒマラヤの山が迫ってくるような世界。

その時の日記には「身体が震えるほどの景色が広がっている」と書かれている。

  

13:30 ディンボチェの村が遠望出来る場所で休憩を取る。左手後方にはTabuche Peak(6,495m) タウチェピーク、Lobuche East(6,090m) ロブチェ イーストの岩稜が迫ってくる。正面には美しいLhotse(8,516m)ローツェ南壁が屏風岩のようにそそり立っている。ほんとに素晴らしい光景だ。

  

 

14:00 dingboche(4,350m) ディボンチェに到着し、エベレスト リゾート(ここには4343mと書かれてあった) というロッジに入る。

  

ブラックティーを飲み、合わせて頭痛薬(ロキソニン)を飲む。体調が悪くなってきているのを実感する。疲労も抜けない。

エべレストリンクという有料Wi-Fi(600Rs/日)を利用して、mailチェックやFBの更新をして気分を紛らわす。

 

18:00 夕食はポテトフライとチーズバーガーをオーダーするが、チーズバーガーは半分も食べられない状態。

 

19:30 さらに風邪薬を飲み、今日は寝ることにする。SPO2は62%と良くない。室温は4℃(58%)で、思ったほど寒くはない。

夜中から朝方に掛けても室温は-2℃までしか下がらなかったので、寝る際にたくさん着込んでいたのが、ダウンの上下と象足は早々に脱いでしまった。

身体から無駄に発熱をしているのかもしれない、朝起きたときから疲れが取れていない感じがするのはそのせいか?


08:2017年11月20日(月)ディンボチェ → チュクン(高度順応日:2~3時間の移動+休息)

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

(第6日目):ディンボチェdingboche(4,350m) → チュクンchhukhung(4,743m)

 

07:00 いつもよりもゆっくりめに起床、朝はいくらか体調も良く、食欲もある。

08:00 朝食(アップルパンケーキ、アップルティー)これは完食。いつも通りに、湯たんぽ代わりに使ったナルゲンボトル内の水 1リットルに粉末のポカリスウェットを溶かして飲料水を作る。

 

9:20 ゆっくり出発する。外気温は0℃と特別寒くはない。

天気は快晴だが、ローツェ頂上だけには薄い雲が掛かっていて、エベレスト方面から雪煙が立っている。

  

昨日の午後と同じように、広々としたImja Khola の右岸河原を歩く。

周りには膝下サイズの枯れた草がポツリポツリと生えているだけの荒涼とした景色が広がっている。

目の前のLhotse(8,516m)ローツェ南壁を見ながらのトレッキングだ。360°はてしなく別世界のような美しい光景が広がっている。

 

天気は雲ひとつ無いほどの快晴だが、地表近くでは相変わらず強く冷たい風が絶え間なく吹いている。

  

 

11:40 Bibre Kharka(4,570m) ビブレ カルカに到着。

石積みの簡素な家が1件建っているだけの場所(Kharka=放牧地)なのだが、家には女の人がひとり暮らしているようだ。

こんな月のような世界でひとり暮らしているのだろうか?と何とも不思議だった。

  

ここは、コンマ・ラ峠への分岐点になっていて、シーズンならばここに泊るトレッカーがいるのかもしれないな。良くは解らないけど・・・

進行方向に目を凝らすと、今日の目的地のチュクンの家々が見えている。

 

12:20 chhukhung(4743m) チュクンに到着。ゆっくり歩いてちょうど3時間の行程だったが、この区間の景色は圧巻だった。

チュクン リゾート&レストランというロッジに入る。

  

 

さっそく、遅い昼食を取る。ヤクステーキ+ポテトフライで795Rsもするのか! でも、この時は完食することができた。

チュクンという村、もっと簡素でさびしい村を想像していたが、チュクン・リに登る人やIsland Peak(6,189m) アイランドピークに登る人などが多くいて、それなりに賑わっていた。この日もアイランドピークに登る4~5人のパーティが2組、個人客も数人泊っていた。そして同じ数だけガイドやポーターが付いているので、けっこう賑やかだ。

 

トレッカーやガイドの部屋にはいちおう木製のベットがあり、それぞれ敷き布団や毛布なども用意されているが、ポーターの宿舎?を覗いてみると、石積みの壁に屋根はトタン板、床は三和土のままでその上に敷き布団が敷かれているのを見ると、これではかなり寒いだろうな、特に下からの冷え込みは半端ないだろう、と同情してしまう。まぁ、本人たちはさほど気にしていないのかもしれないが、、、

 

昼食後少し休憩を取ったのち、ロッジの周辺を歩き回ってみた。

Imja Kholaを挟んで、ロッジの正面に聳えているAma Dablam アマ ダブラム(6,814m)の頂上あたりは、速いスピードで雲がたなびいているのが見える。ローツェも向こう側(エベレスト側)から雪煙があがってこちら側に流れて来ているのが見える。上空はかなり強風が吹いているようだ。

 

  

風も冷たいので早々に部屋に戻る。部屋の窓からはローツェ南壁が目の前に立ちふさがるように聳えているのが見え、なかなかの迫力だ。

モバイルバッテリーからiphoneやカメラのバッテリーに充電をしておく。室内は室温5℃くらいだが、上から足先までダウンでかためているので寒くはなく、過ごしやすい。

室温は時間の経過とともに急激に下がっていき、15:30には 3℃まで下がっていた。窓際はさらに冷たくて、カーテンの下の方は凍り始めている。

SPO2の数値を計ると、53%にまで下がり、標高が高い(4,743m)ことを考えても数値が少し低く過ぎる。この頃から体調不良が自分でもはっきり自覚出来るようになってきた。

 

夕食は食べられず、早々にシュラフに潜り込む。テルモスの湯たんぽ+ガイドが持って来たヒマラヤン・アクティビティーズの湯たんぽの両方を使って寝ることにする。


09:2017年11月21日(火)チュクン → チュクン・リ → ディンボチェ

2017年12月13日 | WanderVogel Nepal

(第7日目):チュクンchhukhung(4,743m) → チュクン・リchhukhung Ri 小ピーク(5,405m) → ディンボチェdingboche(4,350m) 

 

05:50 起床、何故か朝だけは体調も良い。室温は-5℃を表示していたが、室内の水が凍り付くことはなかった。

06:30 チュクン・リ目指してロッジを出発する。今日はダウンパンツ、ダウンジャケットを着て行動することにする。

  

ロッジの裏手を巻くように斜面に付けられた道を辿って登っていく。

チュクンに住んでいる村人にとってはサンダル履きで「ちょっとそこの裏山」へ登る、という感じの認識なのだろうが、こちらはふうふう言いながら息も絶え絶えで登って行く。

1時間後、鞍部まで登ってきた。やっとこのあたりにも朝日が射し込んできて少し温かくなってきた。

でももう疲労困憊、急激に体力が無くなってきている。チュクン・リchhukhung Ri(5,550m)がはるか遠くに感じる。

鞍部付近は背の低い枯れ草のような牧草?が生えていて、それを目当てに複数頭のヤクがそこここでのんびりと草を食んでいるのが見える。

  

鞍部に登ったところで、目的地(チュクン・リ)を変えて、左側の少し低いピーク(5,404m)に登る。8:30。

チュクン・リと比べると高さは150mほど低い小ピークだが、眺望は同様に素晴らしい!

  

小ピーク上には小さなチョルテンが建てられていて、タルチョーが強風にたなびいている。

Nuptse(7,861m)ヌプツェ、Lhotse(8,516m)ローツェに並んで、Peak 38(7,591m)ピーク38の白い頂も見えてきた。

ヌプツェ、ローツェ周辺は風が強いせいで岩肌に着氷することがなく、黒々した岩肌が露出している。イエローバンドと呼ばれるエベレスト周辺特有の地層模様もくっきり見えている。

雪をかぶった真っ白なIsland Peak(6,189m) アイランドピークの右側には、Makalu(8,463m) マカルーの三角形の頭もチラッと見えている。

カラ・パタール方面に目を移すと、遠くにPumo Ri(7,165m) プモ・リの特徴的な姿も目に入ってくる。

 

小ピーク頂上からの光景を満喫した後に、登ってきた道をゆっくり下る。

9:15 チュクンのロッジに戻って来たのだが、ちょっとそこまで登ってきただけなのに、すぐには出発出来ないほど疲労困憊していて、とりあえず部屋で少しだけ休憩しようとしているうちに、うっかり熟睡してしまう。

このパターンは最悪の方向に向かっていることを暗示させている。

 

その後、朝食を食べる気力さえもなく、ロッジの棚にあったチョコレートKitKatと(いつの頃のものか解らない)パイナップルジュースを口入れるが、こんなものでは体力が回復しないのは解り切っている。

 

  

とりあえず少しでも標高を下げるべく、意を決してチュクンのロッジを出発する。昨日泊ったdingboche ディンボチェのロッジまでなんとか移動する。

11:50から13:50まで2時間かけて「散歩道」のような河原の道を、わずか400mの高低差を下るだけなのだが、もうそれだけでヘトヘトだ。

体調はすこぶる悪く、頭痛、胃痛に加えて吐き気までしてきて、40年以上山登りをしてきて今まで経験したことのないような心身の“疲れ”を感じる。

 

SPO2の数値を計ると、58%と昨日よりは数値は上がったが、高度にして400m下ってきたわりにあまり回復していないようだった。

食事は昼食も夕食も取れず、体調を元に戻すべくひたすら横になっているのだが、これはある意味逆効果なんだよな、と解っていてもそうせざるを得ない心身の状態。これはかなり「よろしくない状態」だ。

 

でも、そんな最悪な状態にあっても、頭の中では、1日停滞するとすればその先のスケジュールをこう変更しようとか、停滞が2日以上に及んだ場合はこのルートはあきらめて別のルートでトレッキングを進めようかとか、その時の日記を見ると、この時まだ真剣にそんなことを考えていたふしがある。

あたりまえだよな、そう簡単に諦められるものではないのだから、この時点では何とかして前に進みたいという意思を強く持っていたのだ。