バス難民(復路)

雪中お宅探訪、飲んで食っての宴も内輪話でひととおり盛り上がって夕せまり
事情でひとり帰宅を急ぐこととなった事態をうけ、いとま支度の一行。
ところでバスは運行しているのかしらと、往路が往路だっただけに不安つのらす。
状況探ってもらうが、いっこうに判明せず「なんかネットも重いんだよね～」
のんびりすぎる家主のケツ叩き、タクシー迎車を急かす。
だが折しも当日は成人の日、しかもこの予報外れな大雪だ。
手分けして中る各社ことごくアウツ。

見切りでバス停へ向かうと決めた我等、昏れせまる雪道を再びの行軍。
雄々しく歩み出すも、ん?　なんかぐるぐる回ってね?
ビュッと吹いた突風に、あっさり壊れる駅前購入ビニ傘。
先刻あわてて降りた電車内へ置き去りにしてきた16骨の丈夫傘や今いづこ。
くそぅこんなことならムリにでも見送ってもらうんだった、バカですか自分。
「いいよ寒いし出て来なくて」の気遣いへ「あ、そう?　んじゃ気をつけてねー」
って引っ込むヤツもヤツですよ。ちっ。
今さら呼び出すのも面倒と、誰かれなく通りがかるたび聞き込んでは辿り着いた停留所。
すでにお待ちの方にこの3名加わり間もなく、一人また一人と列は順調に長くなって
期待をふくらますが、いっこうにダイヤ守られる気配なし。
もしかして何?　人集まって来てるからそろそろ…なんて皆同じ見当で?(汗)

逆方面でも乗れたら恩の字、両方向を見張れる位置でビバークしていると
荷台開けっぱで停車中の0123な引っ越し社トラック周り、所在なさげに
スタッフおにーさんがうろうろしてるんで、声かけてみた。
「たいへんですネ、こんな日に引っ越しですか」
「や、引っ越しじゃなくて家具輸送なんです。 バス待ちですか?」
「ええ、もうダメモトで(苦笑)」
「スゴいですよ今日は、○○○から来たんですけどね、5時間ですよ5時間」
「えええ5時間!!　たいへんでしたねー」…通常なら1時間もかからん距離だ、驚きだ。
その驚きをちょっと盛り気味に同情トッピングも追加で相づちうったのには訳があり。
あわよくば女3人ばかしお仕事上がりついでに最寄り駅までチョチョッと、もうね、その荷台でも。
あ、荷台…外錠ガッシャコ…。うっかり好意に甘えたばかりに真っ暗な荷台に揺られついウトウト
気づけば見知らぬ埠頭でコアイおっさんたちがお船で待っててイヤァァァ～～…
…ま、荷台はムチャだけど当方なにしろ追い詰められてますの。
そんな妄想透けてみえたか尋ねもせんのに、おにーさんたら軽く夢砕いてくれて。
「これからもう一件、遠くへ行かなくちゃなんないんですよー」
「あ。ああそうなんですかぁたいへんですねー」
ってこっちが余程タイヘンですから、いろいろ。

待てども来ぬバス、しびれ切れはてた頃だった。
いっそ別ルートとの合流ポイントまで向かい、確率を上げてみてはどうかとの案が浮上。
おおそうしましょう、なして今まで気づかなんだ、というわけで凍てる夜道の雪中行軍開始。
みな一様に言葉少なく。

目標地点、バス待ちの人影認めるのとほぼ同時、遥か前方に行先表示を点けた車輌確認。
「あれバスじゃね!?」「わーバスだバスだ!!」一気呵成、湧く一行をよそに
車体はするりとカーブし、やがて視界から逃げ去った。
一瞬のうちに泡と消えた喜びにわか、これはかなりの痛手レベル。
いっそ困憊が見せた幻と思えたらラクになるのか…うなだれてるとこへ
バス待ち小母さまが勢いこんで「○○方面なら今バス行ったとこだよ!」
ああ行っちゃいましたねー。「ここまっすぐ行って大っきな通りに出たらバス停あるから!」
どこ方面だろうがとにかく運行は認められたわけだし、幹線道路なら望みもつなげそうだ。
「ありがとうございますぅ、行ってみますぅぅ」
小母さまのお力づけに希望を灯らせ、雪中行軍再起動。

なんとか大通りへ突き当たったものの、停留所なんて見当たらないぞ何処～(半べそ)
通りすがりのおじさん呼びとめ所在を伺う。「そこそこ、曲がって右すぐにあるよ」
ご親切に導いてくだすった指の先、あったぁ!　ありがとうございますぅ!
嬉しさあまって小走りの矢先、ズッと滑って片膝つきコケた、不覚。

吐息の白いむこうで真っ赤にかじかむ同僚の素手、目に沁みる。
「着いたね、ここなら来そうだね」
根拠なくてもいいんだこの際。
ベストは尽くしたはずだものニンゲンだもの。
見ても仕方ないダイヤ表示はもう追いません。
残量わずかな元気は、明るい予測のほうへ運用さしてもらいます。
…と、ついさっき目前を逃げてった希望が、ぐぅわーーんと鷹揚に角を曲がって
みるみる接近するではありませんか。
「ウソ、来た、来たよーー!!!」
びょんびょん飛び上がってバンザイで迎えなくても、バスは停まるわけなのだが。
大騒ぎで乗り込む一行、先客らに笑われる。
その笑顔にトゲはなく、むしろ温かくすらかんじられ…
なんてのもどうせ気のせいだったろうな。



とかなんとか綴ってるうちまたひとつブクマ消されたんですが
何? ガッカリ表明? 教育的指導?　…といった反応をお楽しみでらっして?