はせがわ鍼灸院 院長の『ハリハリ日記』 http://www.shinkyu.in/

ちょっと変わった経歴の、鍼灸院・院長による
こころがホットする日記です。

マツケン

2008-08-31 02:28:10 | Weblog
マンガの主人公は悪魔系メタルバンドのギター兼ボーカリスト
ヨハネ・クラウザーⅡ世。

凶暴な性格で観客を罵倒し狂気じみた歌がうけている。
しかし、この男、純真で内気な渋谷系のラブリーな歌を愛する好青年。

狂気をはらんだメタルバンドと叙情派フォークのはざまで彼は悩む。






過激なメタルライブが終わると、フォークギターを抱え、だれも聞いてくれない路上ライブでひとり語りかけるように歌う。
「歌って。こんなにステキなのに」

で、大ヒットのコミックスはすぐに映画になる。
上映中の「デトロイト・メタル・シティ」は大ヒットしているらしい。

主演は「マツケン」。
マツケンと聞いて「マツケン・サンバ」のマツケンを思い浮かべた人、手を上げて。
「は~~~い」。
ワタクシも含めて「松平健」と思った人はオクレテイルらしいですよ。

いま、「マツケン」と言えば「松山ケンイチ」。
カメレオン俳優と言われているんだって。
たしかに「男たちの大和」の熱演。
「椿三十郎」の織田裕ニを食ってしまった若侍役。
「DEATH NOTE」の天才探偵役。
温度差が50度くらいあるような役変身ぶり。

素顔を一度チェックしてください。



はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in

DMC

2008-08-30 02:52:56 | Weblog
めったにマンガは読まないのですが
この「デトロイト・メタル・シティ」は格別におもしろい。






本来は、コミックスと言うべきなのでしょうが
やっぱ、漫画というかマンガと言ったほうがぴったりくる。

鍼灸研修会のとき若手の先生方がひたいに血管を浮かべて話していた。
「DMC、おもしろいよなあ。もう最高だよなあ」って。
小耳にはさんだワタクシ。でも、「DMCってなに?」と聞くのがくやしくて。
必死になって調べたら「デトロイト・メタル・シティ」の略で、それもマンガ。

「マンガかよぅ~」と、ニ三歩あとずさりしたが
「これ読まないやつはソンしてるよね」のセリフで本屋に走った。

平積みされていた。
飛ぶように売れているちゅうこと。
まだ6巻なのに400万部のベストセラー。らしい。
さっそく読んだ。というか、見た。
おもしろい~~~。

マンガの主人公は悪魔系メタルバンドのギター兼ボーカリストの、その名も
ヨハネ・クラウザーⅡ世。






凶暴な性格で観客を罵倒するわ、ツバを吐き散らすわ。
でも、その侠気じみた歌とスタイルがうけている。
ライブは熱狂と興奮のウズ。

しかし、この男の正体は真逆のもの。
渋谷系のラブリーなフォークタッチの歌を愛する軟弱青年。

彼は彼なりに悩む。
「ぼくのやりたいのは、こんなバンドじゃない!」






狂気をはらんだメタルバンドと叙情派フォークのはざまで。
過激なメタルライブが終わると、フォークギターを抱え、だれも聞いてくれない路上ライブでひとり語りかけるように歌う。
「歌って。こんなにステキなのに」

さあ、マツケンの素顔を一度チェックしてください。


はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in

夏バテ解消法

2008-08-29 00:13:53 | Weblog
今年の梅雨はカラ梅雨でしたね。
七月に早めの「真夏」が来てしまい、厳しい暑さが続く八月で、もう私たちの体も精神もクタクタ。
そう、長期にわたる「夏バテ」状態なのです。

季節は秋。
虫の音が木の枝から足元の草に移っています。
空も入道雲から飛行機雲に。






季節は秋なのに、引きずっている「夏バテ」。
そこで、今こそできる「夏バテ」解消法を考えてみましょう。

まず夏バテのメカニズムから。
私たちの体の調子を整えるのが自律神経。この自律神経には二つの働きがあります。
暑い時には「副交感神経」が働いて血管を拡張し熱を体の外に出そうとします。
しかし冷房で寒さを感じると、もう一方の「交感神経」が血管を収縮させ熱の放出を防ぎます。
猛暑の中を買い物に出かけ、そのあとクーラーの効いた部屋で北京五輪を楽しんだ私たちの体は、暑さと寒さのオン・オフの繰り返しで自律神経に狂いが生じてしまっています。

高温多湿で汗が出にくいことからくる「バテ」に、冷えによる「バテ」が加わることで内臓機能が弱り、食欲不振・下痢・便秘となり、これが続くと不眠・頭痛・腰痛につながります。
また、食欲不振から体内で作る熱量が減少し、体温低下によ免疫力低下に陥ります。

免疫学では「冷えを抱える人は意識も低下する」と言われるくらい深刻なものです。
どうすれば「元気」という大切な「気」を取り戻すことができるのでしょう。

おすすめのトップは夏バテ解消のゆったりお風呂

「暑い時はシャワーに限る」と、八月はほとんどの人がシャワーで済ませていたはず。
夜はしのぎやすくなった今は「ゆったりお風呂」で心身ともにリラックスしましょう。

長時間のクーラー漬けで肩こりや疲労感が起きる「冷房病」は女性や高齢者だけでなく、生活が不規則になってしまった小・中学生や、冷房と炎天下との行き来の多い男性にも増えています。
今こそゆったりと湯船につかり、自律神経のバランスを整えることが大切です。

考えてみれば、冬至の柚子湯や五月の菖蒲湯は、単なるおまじないではなく、
身近な季節の植物成分を吸収し健康を維持していたのですね


はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in

逆子治療

2008-08-23 02:40:47 | Weblog
疲れたぁ~~~。
今日(昨日?)、妊婦さん7人を治療。
うち、産婦人科だっけ?!

もちろん、鍼灸に来院される妊婦さんといえば「逆子」治療。
ししし、しかし、7人とは。

ご存知のように出産の際、胎児は子宮口からは頭部からでます。
ところが逆子は胎児の足、または臀部から出るので、時間もかかるし、鎖骨骨折の危険もともないます。

産科では逆子矯正体操として「胸膝(きょうしつ)位」をとらせたり、医者が妊婦のおなかを回転させる「外回転位」を施したりします。
しかし、その成功率は5割いかないのが現状です。
鍼灸治療では、足の小指の先、外側のツボ「至陰」に小さなお灸をすえます。
これが、鍼灸治療の逆子矯正治療です。






これだけです。
妊娠7ヶ月の場合、90%以上の確率で逆子が矯正可能です。
お灸は小さいですが熱いです。
ある妊婦さんは「熱い~~~!」の声がでかくて、隣りの帽子屋さんの奥さんがすっ飛んできて「なにか、事件でも?!」と110番の体勢で携帯電話を握りしめていた事件もあったりして。
もっともその妊婦さん、お仕事が幼稚園の先生で、地声がでかかったというのがオチで。

1回で矯正できる場合もたまにはありますが、数回、十数回の治療の場合もあります。
キチンとしたデータを出している東邦大学医学部、大森病院産婦人科では、妊娠8ヶ月にはいると矯正率は42パーセント台に落ちています。
妊娠9ヶ月の入るとさらに矯正率は落ちます。
ただし、まったく不可能ではなく、私の場合、昨年、あと3日で妊娠10ヶ月という逆子矯正に成功したこともあって、逆子お母さんのネットワークにひっかかったらしく、妊娠8ヶ月後半や9ヶ月の妊婦さんが藁をもすがる思いで来院されます。

足先に小さなお灸をすえるだけ。
しかし、ものすごくエネルギーを使うのです。
熱さを感じるのはお母さんですが(正確に言うとお母さんの子宮ですが)、子宮が動くことでそこの住人の赤ちゃんが動くのです。

お母さんの顔色を見ながら、熱さの具合を確かめながら、動き始めた胎児の様子を聞きながら、お灸のもぐさの大きさや熱の具合をはかりつつ、動きが大きくなったらすぐに妊婦さんをベッドに寝かせ胎児の動きを活発化させます。
動きが収まりかけたら、妊婦さんを座らせお灸をたたみかけ、さらに胎児を動かし、何度か繰り返すのです。






このボリュームあるツーショット。
このとき、次の患者さんまで時間がなかったので3人同時に治療。
スリーショットの大ボリューム写真は撮る暇がなかった。

それにしても、治療後の待合室での妊婦さん同士の楽しそうなこと。
うれしそうなこと。
あの「あつ~~~い!!!」の叫び声はどこへ行った?

でも、みなさん、いい笑顔。
これが救いで逆子治療、やっている。


はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in

初盆

2008-08-20 02:09:23 | Weblog
今年、1月に私の鍼灸の恩師が亡くなった。
葬儀の日、冷たい雨が降っていた。
治療を終え、姫路から車で大阪へ駆けつけた。
やすらかなお顔だった。

中国への研修旅行はいつも一緒だった。
恩師の部屋にはいつも十人前後の先生方が集まっていた。
ビール、紹興酒、焼酎、白酎、何でもそろっていた。
朝の5時まで語り合うのが恒例行事だった。
恩師との最後の中国は昨年の三月だった。
「私はもうじき死にますが、もっともっと勉強したかった」。
恩師のつぶやきが今も残っている。

初盆だった。
大阪の南港にあるご自宅に招かれた。
その日は快晴。入道雲が夏の暑さを演出していた。






恩師を慕うたくさんの仲間が集まった。
奥様が「つまらないものしか残ってないの」と、恩師の遺したものを出してくださった。
使いさしの、たくさんの使い捨てライター。
私も恩師も、慕っていたものたちも、みんなタバコ好きだった。
ごくごくありきたりのライターを二ついただいた。
一つは今使っている。
もう一つはとっておく。

恩師との濃密なやり取りは昨日のことのようにおぼえている。
「先生、ハリって本当に効くんですか?」
私のバカな質問にも真剣に答えてくれた。
「患者に聞きなさい」と。

「先生、魅力ある鍼灸師ってなんですか?」
「指が綺麗なことです」

「先生、ぼくはプロとしてやっていけますか?」
「長谷川さんはもうプロです」

どれだけ励まされたことだろう。
どれだけ勇気をいただいたことだろう。

いつも素敵なスーツ姿で講義をしてくれた。
スーツの色とネクタイの柄があっていた。
「鍼灸師はカッコよくなくてはいけません」。
指は細く、銀色のハリに吸い付くようになじんでいた。
ツメはマニキュアをしたように艶っぽかった。

先生、カッコよかったよ。

最後まで教えることに命を張っていた。
京都のK鍼灸専門学校の講師をしていた恩師は、最後の授業は奥様の押す車椅子で教壇に立ち
普段通りの授業をしたという。

鍼灸の可能性を朝まで説き
鍼灸の限界性を嘆き悲しんだ。
鍼灸師としての悩みを抱え、もだえ苦しみ、それでもあきらめず、姿を隠す多くの敵と戦っていた。
恩師は、そのカッコ悪い姿をそのまま見せてくれた。
だから、おれたちみんな、先生について行ったんじゃん。
先に逝っちゃうなんてずるいぞ。

先生、大好きだったよ。

初盆。
いろんな思い出がうずまいた。
帰りの電車の中で、少し泣いた。


はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in

RURIKO

2008-08-16 02:36:02 | Weblog
美しい女はいる。
たくさん、いる。
そして、どんな生き方をするのか、想像がつく。
しかし、美しすぎる女はどのような人生を歩むのか、想像がつかない。

1923年9月1日、関東大震災。
阿鼻叫喚の東京でアナキスト(無政府主義者)の大杉栄と伊藤野枝が憲兵隊によって強制連行され虐殺された。そのとき、一緒にいて連れてこられた幼い甥も首を絞めて殺され、市ヶ谷の憲兵隊の建物の裏の古井戸に投げ捨てられた。
実行したのは憲兵隊長、甘粕正彦。

いくら連行されたのがアナキストといえ虐殺は違法行為であり許されるものではない。
が、実行犯、甘粕正彦は三年足らずの服役の後、日本政府の援助でフランスに留学している。
そして、日本の中国侵略が始まり、満州国が建国される。
甘粕正彦はすぐさま満州帝国に派遣され、その情報収集能力を活かし、その社交術、その政治力を駆使し、陰で建国を支えたと言われている。
満州に君臨し、表向きは「満州映画協会」理事長として辣腕を振るう。

おなじ時期に、浅井源ニ郎はパリやウィーンなどをまわり満州国官吏の職を得ていた。
そして、甘粕正彦と浅井源ニ郎は知遇を得て奇妙な友情が芽生える。
満州映画のスタッフのなかには、「あんな殺人鬼をこの満州にいさせてたまるか」という者もいた。
が、源ニ郎にとっては甘粕正彦ほど魅力的な人物はいなかった。
その知性、巧みな会話術、研ぎ澄まされた頭脳、冷静な世界情勢の判断、どこをとっても殺人鬼にはみえない。次第に源ニ郎は甘粕に魅かれていく。
浅井源ニ郎、浅丘ルリ子の父である。

ある日、源ニ郎の娘、信子の話になった。
甘粕は目を細めて言った。
「私はあんな綺麗な女の子を見たことがありません。
初めて見たときに息を呑みましたよ。
こんな目を持った少女がいたのかと」

浅井信子、浅丘ルリ子の本名である。






秋山庄太郎の撮影による表紙写真。
この世にこんな綺麗な女がいるなんて。

小説「RURIKO」は直木賞作家による、実在の人物をモデルにした取材に基づくフィクション。
日活時代の撮影秘話を織り交ぜ、昭和の映画史として読んでも面白い。

終戦直後、甘粕正彦は青酸カリをあおって自らの命を絶つ。
生きて日本の地に立った浅井一家は日活に足を向ける。
まつ毛の長い大きな目の美少女はスターダムをかけのぼる。
その節目に、石原裕次郎に恋をし、小林旭と結ばれ、美空ひばりに慕われ、石坂浩二と結婚をし、三十年の別居を経て離婚し、数々の恋を経て、現在は二十も年下の俳優と暮らしている・・・

一度読み始めたらとまらないとまらない♪
ご主人が昔、俳優をやっておられた仲良しのS子さんも絶賛。
「久々に面白いものを読みました」って。

私は、遠藤周作原作の、浦山桐郎監督の「私が棄てた女」の浅丘ルリ子が好き。
もう一本、市川昆監督の、フランス人俳優、ルノー・ベルレーと共演した「ナントカ(タイトル忘れた)」の浅丘ルリ子が好き。
だって、メチャクチャきれい。

美しすぎる女ってどんな生き方をするのだろう。
小説「RURIKO」はこう締めくくる。

「信ちゃんはよくやったよ」というのが、死んでいく父の言葉であったが、源ニ郎が望んでいたのは、自分が裕次郎やひばりのように神格化されたスターになることではなかったか。
が、自分は彼らのようにはならなかったし、なれなかった。その代わりとても幸せだ。

日本の歴史の暗部の主人公である甘粕正彦が言った「こんな美少女を見たことはない」。
歴史の光と影を歩み続けた女優。
六十七歳。魅力的で綺麗だ


はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in

カレー小説

2008-08-14 03:48:39 | Weblog
夏といえばカレーだ。
汗をかきかき、スプーンいっぱい頬ばるとじわ~っと辛さがしみてくる。
どこへ?
胃とかノドとかじゃなく、ハートにしみてこないかい?

蒸し風呂のような外の世界から逃げ出し
内にこもって「刺激」を受けたいとき
カレーだ。

いきなりだが
カレーってエッチだ。

3年前の三島由紀夫賞を受賞した小説がある。
鹿島田真希の「6000度の愛」

昨日、ご紹介した「シンプルな情熱」同様、アツイぜ。

主人公は夫と子供のいる主婦。
旅に出た長崎で行きずり男と愛しあう。
けっこう、ドロドロ。

小説のある部分で次ぎのようなディテールがある。

家の台所ででカレーを作っている女。
ぐつぐつ煮えるカレーを見つめている。
彼女の心のなかのよう。「混沌」。

子どもが聞く。
「ジャガイモと玉ねぎはどこに消えたの?」
彼女は煮込んでいるカレーを見ながら答える。
「ものはね、熱いと溶けてなくなってしまうものなのよ」。

うまそうなカレーだが、怖い。

こんなドロドロの恋愛、してみたい?
暑苦しくてとてもできない?
溶けちゃうようなドロドロはちょっとね?
最近、スープカレーってあっさり系が流行ってるし。

逃げ口上はいくらでもある。
煮えたぎったカレー鍋に突っ込むくらいの情熱。
カレー鍋の中心で愛を叫ぶ。「カレチュー」だ。

溶けちゃうくらいの恋愛しなくっちゃ。。。ね。
お茶漬けの恋愛で終止符はうちたくないもんね。






こんな、うまそうな、さらりとした、おしゃれカレーはダメだにゃあ。
ヤケドの覚悟。
でも、実際やってみると、ちょっと胃にもたれた。
こんどは、ヨーグルトでも入れてマイルドにしてみようか。

懲りない男の挑戦は続く。




はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in

シンプルな情熱

2008-08-13 02:54:16 | Weblog
オリンピックがつまらない。
水泳の北島選手も金メダル1つ獲ったらモチベーションがさがったのか
次のレースはあまり期待できそうにないし。
と思ってたら金メダル。
でも、野口さんは棄権。
柔道は全滅にちかいし、
サッカーの男子はさっさと敗退しちゃうし

真夏の、クーラーの効いた部屋で熱くなりたいのに
なんだか中途半端だにゃあ。

そんなときは燃えるような物語がいい。
熱くなりたいとき本棚から「シンプルな情熱」を取り出してくる。
ページをめくるたびに熱くなる。
作者はフランスの女流作家アニー・エルノー。

主人公は40代のおんな。
それが妻子ある、しかも年下の男性と恋に堕ちる。
主人公は語る。
「これまでの人生で、自分は子供ももったし、いろいろな試験にも合格したし、遠くへも旅行をした。
けれどこのこと:昼下がりにこの人とベッドにいること以上に重要なことはなにひとつ体験しなかった」

彼からの電話に気づかないのを恐れ、掃除機やドライヤーを使うのをやめる。
男が口をつけたグラスは洗わず取っておく。


のめりこまないととても読めたものじゃない小説。
こういった馬鹿げた経験のない人には愚かとしかいいようのない行動。
いい年こいて。
妻子ある年下の男なんかに恋をして。
どうせ捨てられるにきまってる。

なんとでも言え。
この主人公は「いま」を生きている。
死んだような日常をいきるわれわれの存在すら目に入らず。


すげえおんなだ。
すげえエネルギーだ。
読んでいて勇気がわいてくる。

そしてこの「シンプルな情熱」の著者は作品発表後に明かしている。
この愚かな恋をしたのは自分自身であることを。







はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in

天才赤塚なのだ

2008-08-08 03:00:52 | Weblog
赤塚不二夫さんが亡くなった。
72歳だった。
赤塚先生とは私が二十代のころ、放送作家をやっていた頃、一度だけ仕事をご一緒した。
貴重な体験をさせていただいた。

当時、私は最年少放送作家として注目されたこともあり、ラジオ番組だけでも週に26本のレギュラー番組を担当していた。
若くて、元気で、才能があって、生意気だった。

担当番組のなかでも一番の楽しみは文化放送の「セイ・ヤング」という深夜の1時から3時までの2時間の生放送の番組。
深夜というフリーな時間帯だったので自分の好きなことができた。
そしてこの番組は半期(6ヶ月)に一度スペシャルゲスト枠があり、担当のNディレクターと気があっていた私はそのスペシャルゲストの人選をたのまれた。私は即答した。
「赤塚不二夫さんと仕事したい!」。

Nディレクターはギョッとして言った。「マジかよ?!」。
超売れっ子の赤塚先生はすでにアル中でマトモな話はできないという噂があった。
ラジオは話ができなければ成り立たない。
しかも、その2時間番組は生放送、ぜったいに放送禁止用語はダメ。
ラジオは放送禁止用語が使われたり、10秒間の素(す)、つまり声や音がない状態が続くと「緊急事態」とみなされ「放送事故」として処理され、担当者は厳罰処分される。
赤塚不二夫にDJをやらせることは私とNディレクターにとってはハイリスクである。
で、そもそも赤塚先生は極度のシャイ。
ひとまえじゃマトモに喋れないのだ。
Nディレクターは言った。「まず、ぜったい、無理だね」。

怖いもの知らずの私は赤塚先生のフジオプロに電話で直接出演交渉をした。
電話の相手は赤塚先生のアシスタント兼マネージャーの長谷邦夫(ながたに・くにお)さん。
すでにギャグ漫画家としても有名で何本も連載を抱えている人物だった。
出演依頼の旨を伝えると、長谷さんはおっしゃった。
「赤塚先生はこどもです。いや、赤ちゃんに近いかもしれません。それでもいいんですか?」。

崖っぷちに立った人間には二種類の行動パターンがある。
一つは危険を承知で崖から飛び降りる人間。
二つめは崖から逃げ出す人間。
私は三つ目だった。
崖から飛び降りるが死なずに済む方法を考える人間。
ズルイぞ。

「とにかく打ち合わせをしましょう」。
これが私と長谷さんとの共通意見だった。
赤塚先生ひとりにDJをさせるにはあまりに無謀、それゆえなにかいい方法を考えましょう。
打ち合わせは某日深夜、場所は赤塚先生の事務所であるフジオプロの近くのバー「NADJA(ナジャ)」。
このバーの噂は知っていた。
新進アーティストや雑誌編集者の溜まり場で魑魅魍魎が跋扈している、というもの。
行ってみるとカウンターだけの10人も入れば一杯の狭くけっして綺麗とは言いがたいバー。
ウワッ。
マスコミにもたびたび登場している写真家と狂犬みたいな男がケンカ腰に口論している。
篠山紀信と加納典明だった。
入り口近くで小さくなってひとり飲んでいるのは「限りなく透明に近いブルー」で芥川賞をとったばかりのアイツじゃないか。
村上龍だ。
あとは雑誌編集者らしき人物たちが口角泡を飛ばし議論している。
その雰囲気に圧倒されつつバーボンをオーダーすると、カウンターの中からグラスを出してくれたのが長谷さんだった。「へへへ、座る場所がないんで、なかにいるんですよ」。
三杯目のバーボンをたのんだ頃、赤塚先生が現れた。小柄な男をひきつれて。

長谷さんが私を紹介しようとすると、さえぎるように赤塚先生はさきに連れてきた小柄な男を私に紹介した。「オレはね、こいつが好きなのよ」。
赤塚先生は小柄な男の顔を舐めながら言った。
もう一度書く。舐めながら。
「コイツの芸をみたら気にいっちゃってね。コイツ博多から出てきたんだけど気に入っちゃったから帰さないの。だから、オレんちにずっと泊めてんの」。
赤塚先生はグデングデンに酔っている。
「だから、ナントカさん、コイツの芸、見てあげてよ」。
私は赤塚先生のあたまの中では「ナントカさん」になっているようだ。
で、その小柄な男が芸を始めた。
よく見ると、その男は片目に黒い眼帯を捲いていた。

眼帯の小柄な男の芸はすさまじく狂気に満ち、おもしろかった。
カウンターに飛び乗るやいなや、イグアナのものまね。
ワシが舞い降りる。四カ国マージャン。
NADJAにいる客が圧倒されていた。
「どう。ナントカさん、コイツおもしろいでしょ」。
赤塚先生は上機嫌だ。
そして、気絶するように倒れこみ床に寝てしまった。
これが打ち合わせだった。
黒い眼帯の男はまだイグアナを演じていた。
後の、タモリさんだ。

生放送当日、私はあらゆる策を講じた。
大の寂しがり屋の赤塚先生のために5人編成のバンドを組み、スタジオ入りのときにマーチングで出迎えた。先生は大喜び。「今日は楽しませてもらうぞ~!」
って、アンタが楽しませるんだよ~!






ポラロイドで撮った写真なのでちょっと不鮮明だ。
タモリさんのものまねは無音のものが多いので、その実況をしてもらうため局アナの吉田照美さんにきてもらった。
左がその照美さん。盛り上げるためハッピを着てくれている。トロンボーンを吹いているのが私。

グデングデンに酔っている赤塚先生が気楽に喋れるように両隣に長谷さんとタモリさんを配した。
ハチャメチャなラジオ番組だったが、反響は大きかった。
あのナンセンスな赤塚ワールドが、音だけの世界のラジオで展開されたのだから。

深夜の3時に番組が終了したあとも、場所をNADJAに変えて「宴会」は続いた。
終始、赤塚先生は上機嫌で、「ナントカさん、コイツをよろしくね」とタモリさんを気遣いつつ私の顔も舐めてくれた。
うれしかった。
天才バカボン、おそ松くん、イヤミ、ニャロメを産み出した人。
私の昔の写真の多くは「シェー」をしている。
あんなにシャイで、やさしくて、かわいい人を知らない。
こどものような人だった。






さっきのテレビのニュースで赤塚不二夫さんの葬儀の模様が流されていた。
タモリさんが赤塚先生に送る辞を捧げていた。
「赤塚先生は多くのギャグを世の中に送り出しました。
わたしもそのギャグのひとつでありました」

タモリさんも最後のほうでは涙声になっていた。

私は最後まで「ナントカさん」だった。
でも、いかにも赤塚先生らしくていい。そう、それでいいのだ。

あのあざやかな私の青春の記憶がセピア色にかわってしまった。




はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in


マーブルクッキー

2008-08-05 00:56:38 | Weblog
シックな包装紙をめくると部屋中にただよう甘い香り。
お、ピンクのクッキーケース。
これはこれは、村上開進堂のクッキーケース。






いつものぎっしりクッキーじゃなくちょっとこぶり。
おやおや、こんどはなに?
おもむろにフタをあけると御挨拶状。

「マーブルクッキーを召し上がれ」。
By山本道子。
ってだれだ?

どうやら村上開進堂のスタッフらしい。
その山本道子さんが作っっているマーブルクッキーらしい。
御挨拶状を横に置き、なかをはいけん。

細長いクッキーケースがハーフカットされている。
あれまあ、みごとにお行儀よくならんでいる。






まるいクッキーのおおきさが微妙にことなる。
わお、手作りかよお。

さすが村上開進堂。
一見さんお断りの伝説のお店。
強気だにゃあ。
でも、イヤミにかんじない。

もう片方はすこしチョコレート色が。





 
マーブルクッキー。
半分はバニラ味と抹茶味のハーフ。
もう半分はチョコレート味とバニラ味のハーフ。

マーブル。大理石。
手作り。
山本道子さんのデザイン感覚と、甘さをおさえた味のコントラストのおもしろさ。
カリッ、クシャッ、サワサワ、ゴックン。






抹茶味とチョコレート味。
いちまい、いちまい、交互にかじった。
夏の疲れには上品な甘さがいい。

でもでも。
ずっと、模様が気になって気になって、壊すのがもったいなくて。
この見事な模様を破壊している罪悪感にさいなまれて食べたのははじめての経験。

カラになったピンクのクッキーケース、何を入れようか。



はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in


木こりと斧

2008-08-04 01:16:02 | Weblog
アメリカの大スターがインタビューに答える番組「ACTORS STUDIO」。
どんなスターにも最後におなじ質問をする。
「あなたは天国に召され神にであいました。そのとき神はあなたを見て何と言うと思いますか?」。

たしか、アル・パチーノはこう答えました。
「想像とは違っただろう」、と。

神がこんなだったらおもしろいのに。






神っているのかな。
神ってどんなチカラをもっているのかな。
万能って言われているけど、そう?
だって世界中に50億もの人間がいるんだよ。
その一人一人のケアまでできるの?

患者さんにもよく聞かれる。
「せんせい、こんなにしんどいのに、神様っているの?」
そんなのわかんないよ。
でも、こう答える。

イソップ物語の「木こりと斧」

ある木こりが誤って斧を川に流してしまう。
そこに神があらわれる。
金の斧を手にその木こりに聞く。
「おまえの斧か?」
正直者の木こりは答える。
「ちがいます」。
神は次に銀の斧を差し出し聞く。
「おまえの斧か?」
正直者の木こりは答える。
「ちがいます」。
最後に本人の斧を差し出すとうなずいたので、神は三つとも正直者の木こりに与えた。


それを聞いた男がわざと斧を川に流す。
神があらわれ金の斧を手に男に聞く。
「おまえの斧か?」
男は答える。
「わたしの斧です」。
神は怒り、男からすべてを奪い去ってしまう。

しかし、男が流した斧は実は金の斧だった。

神は何も見ていない。
神はなにもわかっちゃいない。
「こういうパターン」にそって判断しただけなのだ。

たしかにわたしたちは神に生かされているかもしれない。
かといって、すべてを神にゆだねていいわけではない。

さいごの判断は、「じぶん」。
「ここ」っていうときに
金の斧を持ってのぞむのか。
銀の斧を持ってのぞむのか。
それとも・・・


はせがわ鍼灸院
http://www.shinkyu.in/
hasegawa@shinkyu.in