長谷川歯科医院のブログ

静岡県掛川市本郷にある、長谷川歯科医院です

歯周組織再生製剤「リグロス」

2017-06-15 | 歯科トピックス
 先日患者さんよりチョコレートの差し入れをいただきました。ありがとうございました!



 

 2017年4月より、歯周組織再生製剤「リグロス」がいよいよ保険適用になりました。これまでは大学病院など限られた施設だけで試験的に使用されていたのですが、一般の歯科診療所でも用いることが可能となりました。



科研製薬HPより


科研製薬リグロス製品情報サイト
http://www.regroth.jp


 この「リグロス」は、bFGF (basic Fibroblast Growth Factor:FGF-2)と呼ばれるタンパク質が有効成分で、進行した歯周病の治療で行われる歯周外科手術(フラップ手術)の際に用いることで、歯周炎によって壊れた歯周組織を再生させる効果が期待されています。 

 bFGFは特別なタンパク質ではなく、正常な歯周組織の中にもともと恒常的に存在しています。名前こそ「線維芽細胞増殖因子」ですが、とりわけ注目される生物活性は、強力な幹細胞増殖作用と血管新生作用、細胞外マトリックス産生の促進です。
 
 歯槽骨や歯根膜、セメント質などの歯を支える組織(歯周付着組織)のもとになる「間葉系幹細胞」を未分化のまま活発に増殖させ、創傷治癒の場における細胞密度を高めると同時に、旺盛な血管新生を誘導し、さらに細胞定着の足場となるヒアルロン酸などの細胞外マトリックス産生を促すことで、失われた歯周組織を効率的に再生させるというものです。
 
 遺伝子組み替え技術を用いて大腸菌から製造されるbFGFは、すでに皮膚科領域において褥瘡性潰瘍(床擦れ:長く寝たきりの人の臀部などにできる難治性潰瘍)の治療に応用され、医薬品として承認販売から15年以上が経っており、その安全性は十分に確立しています。

 これまで歯周病治療の分野では、欧州や北米などの海外で考案、開発された治療法が“先進的”とされ、それをいかに早く国内に導入して実践するかが評価されてきました。
 
 歯周組織再生を目的とした成長因子材料はすでに海外製のものがありますが、このたび登場した「リグロス」は、基礎研究から始まり全国の歯科系大学が参加した多施設臨床試験を経て、まさにオールジャパン体制で開発された“日本発”の歯周組織再生製剤であり、その意味では画期的なことではないか思います。

 今のところ保険収載されている成長因子製剤はこの「リグロス」だけになりますが、患者さんにとって再生治療の選択肢が増え、さらに保険適用によって費用負担が少なくなるということは大変良いことです。


当院で行った、リグロスを用いた歯肉フラップ手術後8日目の状態。

(通常のフラップ手術と比べて、傷の治りが早いようにも見える。bFGFは創傷治癒を”早める”効果もありそうだが、その作用機序を考えれば不思議ではない)
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