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わくわく!バンジージャンプするっ!

好きなものや気になることについていろいろ語ってみようと思います。

『慟哭』と諸事情

2008-02-01 11:52:34 | 創作文『慟哭』
『慟哭』6


「私が生まれたのは釜山のはずれの小さな漁村です。

父は漁師でした。

遊びが好きな人で稼ぎのほとんどを酒とばくちにつぎ込んで。

めったに家に帰ってこない。なのに子だくさん。

おかしいでしょ。私は長女ですが私の下に妹が2人弟が2人います。

毎日食べるのにも困るありさまで、

母は朝から晩まで泣き言ひとつ言わずに働いて私たち兄弟を食べさせてくれました。

母は口癖のように

「手伝いしなくていいから、男に頼らずに女一人で食べていけるだけの学を身に付けろ」って。

狭い家に私の勉強部屋だけ作ってくれました。

母の気持ちに報いるために家の手伝いをしながら必死に勉強する毎日でした。

そんな時、妹が学校帰りに暴行されて・・・

妹はそのときのショックから今も目が見えないんです。

・・ヒステリー性失明っていうらしいんですけど、

極度のストレスによるものなのでいつ良くなるのか。

・・治るのか治らないのかもわかりません。

犯人はいちおう逮捕されたんですが、

土地の名士の息子で・・・・不起訴になりました。

その男は大学に行って留学までして・・・今は公務員です。

そのときに裁判を傍聴していて思ったんです。

検事が被害者の味方にならなければ誰が被害者を救えるんだろうって。

検事になりたいって心から思いました。

でも、いくらなりたくても貧しい我が家に私が大学に行くゆとりがあるわけもなく、

たとえ学費は奨学金で賄えても私が大学に行っている間、家の収入や妹弟の学費は出せないでしょ。

だから高校を出てすぐ検察事務官になったんです。

経験を積んで試験に受かれば副検事としての道が開かれますから。

お給料ももらえて安定した公務員だし。

母は泣いて喜びました。

父は相変わらず遊び歩いていますが弟たちもだいぶしっかりしてきましたし。

こう見えても私は一家の大黒柱なんです。

私の肩には家族6人が乗っています。

これから副検事になって検事になって必死に働いて、

弟や妹を大学に入れて母には楽させてあげないといけないし。

妹のことも・・・。

あんな父でも面倒見てあげないと・・・。

それにあんな父を見て苦労する母を見たせいか

結婚に夢がないんですよ。

妹を性欲のはけ口にした男にも幻滅しか感じていません。

一生一人で生きがいになる仕事を持って、

家族の面倒を見れたらそれで私の人生は幸せなんです。

わかっていただけました?

・・・全くこんな話・・・他人にしたのは初めてです。」


ユンスはうんざりした顔でそういうと天を仰いだ。

「そうか・・・何で結婚したくないのかはわかったが、

結婚できない理由は君の話を聞いてもわからない。」

「は?検事・・何をおっしゃってるんですか?」

「君の話を聞いても結婚できない理由は見つからないと言ってるんだ。」

「ちょっと待ってください。それは私の感情の問題で」

「そう。君の主観の問題で物理的な弊害は何もない。

君が結婚する気になれば、

いくらでも乗り越えられる範囲の問題だということだ。」

「検事のおっしゃる意味がよくわかりません。」

「つまり。君と僕が結婚する。

君の家族は僕の家族だから二人で面倒をみればいい。

僕は酒もばくちもやらない。

同意してないのに無理に女を抱いたりしない。

だから君の男性不振の問題は完全にクリアできる。

君が検事になるのだって僕なら十分にサポートできる。」

「そんなことを言っても・・検事だって独身主義者だって・・」

「僕が結婚しないと決めたのは、

家で一人ぼっちでさびしく僕の帰りを待つだけの人生を送る女性が不憫だと思ったからで、
君と結婚すればそんな心配はいらないのだと今、気がついた。」

「そんないい加減な・・・」

「いい加減だってかまわな・・・」

ミンウはそこまで言うと大きく身体を揺らした。

ユンスは慌てて手を差し伸べる。

「カン検事・・・大丈夫?しっかりしてください。」





もう空は白み始めていた。

一晩中、ユンスはミンウの手を握り枕元に座って彼の寝顔を眺めていた。

昨夜の出来事が夢のようだった。

君と僕が結婚すればいい・・彼はそういった。

現実なのだろうか・・・握っている彼の手はとても温かい。

いつから彼に惹かれていたのか・・。

今思い出すと会議室で初めて見かけたときからずっと好きだったのかもしれない。

ずっと気になっていて必死に自分の気持ちにブレーキをかけてきた、

そんな気がする・・・・・・・。

そんなことを考えながらユンスはふっと浅い眠りに落ちた。




ミンウが目を覚ますとユンスが枕元に腰掛けていた。

彼女の手が自分の手をやさしく握っていることに気づきほっとする。

まだ頭がフラフラするが・・・昨夜の出来事ははっきりと覚えていた。

紛れもなく夢じゃない。

自分は彼女のことをどのくらい知っているんだろう・・・。

彼女が好きな映画も嫌いな食べ物も全く知らない。

彼女の笑顔だって数えるほどしか見たことがない。

それでも今ここに眠り、自分の手をしっかりと握っている女性を、

ミンウは愛おしいと思った。

彼女のことをたくさん知りたいと思った。

すべてはこれから始まるのだ・・・。

ミンウはじっと彼女を見つめていた。

彼女がふと目を覚ます。

「あ・・目覚めました?具合いかがですか?」

ユンスは恥ずかしそうに慌てて彼の手から自分の手を離し、目をこする。

「ああ。おかげさまで。だいぶ楽になったよ。

・・・ずっとそこにいてくれたんだ・・」

嬉しそうに話しかけるミンウに

「・・・帰りそびれました」

ユンスはうつむいたまま答えた。

「昨夜話したことはきちんと覚えてる。

ユンスさん、僕と結婚してくれるよね。」

「それは・・・」

動揺するユンスの手をそっとミンウは引き寄せた。

「すべてはこれからだから。二人で一から始めればいい・・」

ミンウはそっと彼女を抱きしめた。

そしてそっと口づけをする。

「そうだ・・この感触・・・。

ユンスさん、自分だけしっかり覚えているなんてずるいよ。」

そういってミンウは笑った。

そしてもう一度。

きっと僕らは最高の相性だ。

彼は熱っぽい唇に彼女を感じ、そう確信していた。




お楽しみいただけましたでしょうか。
久々『慟哭』

最近あげていなかったのは出し惜しみしてたわけではなく。

実は前から書けない書けないと小声でほざいておりましたエンディング部分。

時間的にいうと『HERO』のミンウあたりからのお話になるんですが

その部分を書き進めるにあたり、今回のユンスの身の上話がとても重要な鍵になっておりまして。
あげるにあげられなかったという経緯があります。

されど。やっぱり書けないもんは書けない。

何回書き直してもダメです。

暇だといろいろ考えちゃうのでDVD見たり本読んだりしてた・・というのが

ここ数日の正直なところでしょうか。

で、ふと、なんで書けないか・・考えたら。

幸せな彼の顔を見ていないんですよね。

そう。エンディング・・・彼を穏やかな幸せで包んであげる計画でした。

だって・・・題名『慟哭』ですから、あまりに救いがないので。

つくづく私の創作は彼にインスパイアされている部分が多いのだと実感しております。

・・・というわけで。

とりあえず。

伏線を張った状態でどこまで繋げられるかわからずも

してみました。

皆さんの感想聞きつつ、彼の笑顔が浮かべば書けるでしょう。

幸せなのはもうちょっとだから・・・

皆様名残り惜しんで下さい。








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16 Comments(10/1 コメント投稿終了予定)

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気になるぅ~ (pink)
2008-02-01 21:31:41
haruさん こんばんは

おお!ミンウ、さくっとプロポーズしましたね~!

こんな身の上のユンスさんが、なぜ、あんな選択をしたんでしょう?

彼女の心の闇に、ミンウは気がつかなかったのかしら?           でもって、キスだけで終わり?風邪うつるぞ…(爆)

もう、気になっちゃうよ~でも、生みの苦しみ、よ~くわかりますから。

ねぇ…あのネタもやってぇ~(爆)
返信する
うううんんん (じゅの0712)
2008-02-01 22:23:57
こんばんは。はるさん、ぴんくさん。
さっき帰宅しました。
また娘とつるんでたわ。

読んだよ。携帯から。

私、前回のお話読んで、ユンスがなぜ
検事という仕事をめざしたのか?
なぜ結婚をしないと決めたのか?

彼女が男に対して仕事以上の感情を持たないようにしていることや
男にとても事務的で、(多分)仕事以外の面では不慣れな雰囲気から・・・

もしかしてもっと若い頃に、ユンス自身がレイプされたのでは?って思ってた。

そして父親のこともあり、男に対して信頼がもてなくなったのだろうかって。

妹だったんだね。
しかもショックで目が見えない。
しかもユンス、この若さで大黒柱。

とつとつと話すユンスのつぶやくシーンを想像していると・・・
もっと脳裏に浮かぶのはそれを熱に浮かされながら
じっときいているミンウビョンホン。

いいねぇ 

この夜の二人は

多分彼女の中で自分を180度変えてくれそうな
夜だったね。

読んでるとね。
本当に申し訳ないんだけど
私の書いたミンウに一部、かぶるのよね。
haruさんも我が家のコメで書いてくれてたけど
ミンウの思いも。

もちろん、私の書いた「憂鬱レベル」の話よりも
もっともっと濃いのですが。

ミンウ…「君の主観であって物理的に弊害はない・・・」
このセリフすっごくかっこいい。
仕事を持ち、夢を持つ彼女を全肯定してるミンウ。

この辺、若さゆえの勢い??があって好きなんですが。

だけど、主観の部分が実はやっかいでしかも重要な部分だってこともあるよね。

名残惜しみたくないわ。

幸せになりたいわ。

ああああ・・・
返信する
追記 (じゅの0712)
2008-02-02 00:48:38
一部かぶる…って書いて誤解なきよう。一部でも同じ思いがあるって とても嬉しい…と言う意味ね。
返信する
移って上等(爆) (pinkさんへ)
2008-02-02 11:24:53
pinkさん、コメありがとうです(^O^)/

そう。意外にあっさりと。(^_^)v

この人、恋愛について不器用だから、付き合ったら=結婚なんだ、これが。(笑)きっと会えない時間が愛育ててたんだと思います。( ̄ー ̄)んで、彼と(^3^)して移ったら…(≧▽≦)ゞ

好きなだけ想像して下さい。

先を書くの暫時、諦めたから今、瞬間的に産みの苦しみから解放されてます。

(*^o^*)

書くのは楽しいんだけどね。

ま、ぼちぼちってところでしょうか。

返信する
荒んだ彼がすべての始まり (じゅの0712さんへ)
2008-02-02 12:06:11
じゅのさん、コメありがとうです。

慟哭の元になってるミンウの短編を書いた時は、まさかこんな長編を書くことになろうと思わず。

ユンスの設定をあんなことにしたので彼女の性格について細かく書く必要が生じました。

自分がレイプされた設定も考えたのですが、そうすると2人が結ばれるまでの経緯の比重が多くなりすぎる気がして…。結婚してからの展開が浮かんでいたので、そちらを中心に書くことにしました。でも今そう言われると、その設定で結婚させて、結局それがわだかまりになってお互いに許しきれなかった…というのもありだったかな…。妄想はつきません。(*^_^*)

じゅのさんの書いたミンウを読んだ時あの彼の表情や空気感を同じように感じてる人がいたのが嬉しくて。

ドキドキしながら読んだことを覚えてます。

そして、自分が書いたあの短編のミンウはどうしてああなったのか。

自分が知りたくなったのがそもそもの始まりなんですよね。今書いている部分に四苦八苦しているのは、その目標を達してしまったからというのもあるかもしれません。

私の中の彼は寂しげな彼のまま…これ、どしたらいいでしょう(^_^;)

でも幸せになった彼も観てみたい…筋はなんとなく浮かんでいるのですが、なんせユンス家子だくさんなので、登場人物が橋田寿賀子ドラマ並みに膨らんで(爆)収集がつかないんですよ。(・_・;)

完全ホームドラマになってしまって…気に入らないのです。いやぁ…ビョンホンssiにリアルパパの匂いがしないのも一因かな…。

早くジュニアを。

何だか支離滅裂(笑)

返信する
深いねぇ~ (pink)
2008-02-02 12:59:47
ハルさん じゅのさん こんにちは。

本編のミンウ、たったあれだけしか出てないから、よけい創作しちゃうよね。

お二人とも深いなぁ~。

たしかにユンス自身に起こった事件だったら、比重が別にいくからね。

え?彼が荒むの?

展開が楽しみだわ。

ミンウって、どこか冷たいもの感じるのよね~

ウチのミンウのテーマは、「真実の愛」だから、幸せ→不幸→幸せ?って展開にするつもり。

禍福はあざなえる縄のごとしって感じかな。

返信する
こんにちは。 (クレオ)
2008-02-02 15:53:17
haruさん、お寒うございます。

『慟哭』6UP、ありがとうございます。

ユンス・・・とても重く哀しい事情ですね。
ユンスやユンスの身内がレイプされるなんて
こと考えもしなかった。

ミンウの心にも・・・
あぁ~いよいよプロポーズし今後は~

でも、ミンウが荒みユンスが・・・

どうなるの?

話は変わって。
「7月24日通りのクリスマス」のDVDを借りてきました。
haruさん好みじゃないかもしれない^^;けど

夢見る少女のようなお話で
有り得ないかなっと思うのですが、
所々、おやじギャグがあったり
脇役さんがいいと感じました(*^^*)
返信する
おぉ~~! (sora)
2008-02-02 22:55:26
haruさん、こんばんわ!
コメ欄の面子、凄いですね~作家さん揃い
『慟哭』・・・ユンスさんの事情、納得です。
しかし、聞き終えてミンウの判断の早かったこと・・・
そして意外に手も早かった
即効プロポーズも出来る男らしいです。
んで、始まったばかりなのにもうちょっとなの?
えぇぇ~~~寂しいな・・・笑ってる彼が好きなのに
返信する
おっと!! (purio)
2008-02-03 13:15:51
haru様こんにちは
ミンウさんいきなりプロポーズですね
ユンスさんの事情は悲しいですね。
妹さんの事件をきっかけに検事になろうって、家族の為に稼ぎながら、目標をもっている所、尊敬しちゃいます
お二人のなところが見たいのに、もうちょっとなんですね
ユンスさんはどうして、あの結末を選ぶのか…。
続きまってます!!
返信する
ユンスが深いわ~ (bumom)
2008-02-03 13:43:56
ハルさん、こんにちは~。

昨日出かけたときに、携帯から読ませて頂きました。

この『慟哭』読み始め時に奴と俺に感心したものです・・。
あの二人の掛け合いが凄く好きだったわ~。
たったあれだけの時間のミンウから引き出す過去。
でも初めは1回だけの話だったような気が・・
話の端端に、器が大きいだけでないミンウが顔を見せ、無い想像力には先が見えなかったのだけれど・・。

ただボーッと『ビョンホン・・」とニヤニヤして涎垂らして見ていただけの私・・。
落差がありすぎだけれど、今ではそ~、ミンウはそうだったのだ・・と思える私って・・素直だわ。(⌒-⌒)ニコニコ...

ユンスの頑なな心には、普通でない何かがあるな・・
と思っていましたが・・心を見せたユンスの今後が楽しみになってきました。

ミンウの心の大きな傷・・取り返しの付かない傷が、

>「僕が結婚しないと決めたのは、家で一人ぼっちでさびしく僕の帰りを待つだけの人生を送る女性が不憫だと思ったからで、君と結婚すればそんな心配はいらないのだと今、気がついた」<

ユンスとのこれからにミンウも癒されると良いな~と思えました。
返信する

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