今年はもっと本を読んでみるか。まずは「東京會舘とわたし」

戒めを込めて
新年の記事は読書録から。
読み始めれば夢中になって読むのですが
集中して活字を追うのが面倒で
ついつい移動時間や空き時間
ネットサーフィンでだらだら過ごしてしまった昨年。
反省反省。
今年は本もちゃんと読もう。

というわけで本のお話です。

Amazon東京會舘とわたし(上)旧館

Amazon 東京會舘とわたし(下)新館


辻村深月著 2016年8月
図書館にお願いしたらやっと年末に
回ってまいりました。人気。

昭和ヒトケタ時代の建築物好きということは
これまでにも何度かこちらで書いたかと思います。

もちろん、見た目。
デザイン的にも魅力的なんですが
大正から戦前にかけて建てられた建物には
どこか新しい時代の息吹というか…
新しいものに対する
自由な感覚や洗練された独自の美しさというか。
そんな魅力を感じます。

必死に西欧の背中を追いかけた明治とも
全てを失って必死に立ち直った戦後とも
高度経済成長期にイケイケどんどんだった時代とも違う。

少しの余裕と日本ならではの洒落っ気と
庶民にも根付き始めた西洋文化の薫りが漂う感じとでもいいましょうか。

建物から自ずと滲み出るそんな空気に惹かれているような気がします。

そんな私。
こちらの小説もまずは「東京會舘」という舞台に惹かれて手にとりました。

初代「東京會舘」本館は関東大震災の10ヶ月前
大正11年の11月に竣工。
震災時被災したものの修復を経て復活。
昭和15年には大政翼賛会に接収され、大東亜会館と名を変え。
戦後はGHQに接収され、アメリカンクラブ・オブ・トーキョーと再び名を変え。
その後の新館への建て直しを経ても堂々と現代に残る国際的社交場。

そんな東京會舘の辿った時代の流れに沿って
そこで働く人たち、そこに集う人たちの人生を
温かくじっくりと描いた作品です。

10章からなる上下巻には
受け継がれ続ける「東京會舘スピリッツ」が満載。
仕事を極めるオトコが大好物の私としては
大好きな小説となりました。

登場人物が時を経て歳を重ね経験を重ね成長し
プロの道を極めていく姿がとてもカッコいい。

また、そんな彼らが違う話に脇役で登場するあたり、ニクい演出です。
そこからは「繋がっていること」がありありと感じられるんですよねー。

更にそこで働く人々だけでなく
その仕事ぶりに魅せられながらそれぞれの人生を刻んでゆく登場人物たちの姿は感動的です。

特に私のお気に入りキャラは
第4章の今井さんと第5章の田中さん。
どちらも男も惚れるいいオトコ。

私は建物込みで旧館が舞台の上巻がお気に入りですが、下巻も充分楽しめるかと。

機会があれば是非。
オススメです。

さて肝心の東京會舘丸の内本館ですが、現在新館を建て替え中のため、休館しています。

作品中に登場するお菓子やレストランは
現在はこちらで取り扱いがあるようですね。

東京會舘

庶民な上に田舎者の私にはあまりご縁がなかった
東京會舘ではありますが、
唯一OLだった若かりし頃社用でよくご相伴に預かったローストビーフとお遣い物で頂いたチーズのパイやクッキーの味を30年ぶりくらいに思い出しました。
当時はとんとありがたみがわからないわからんちんだったのだとお恥ずかしい限り。

30年ぶりに食べてみようかしらなどと思っています。