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好きなものや気になることについていろいろ語ってみようと思います。

まどろっこしいから一気に『慟哭』

2008-02-13 12:33:13 | 創作文『慟哭』
さて、昨夜はビッグな画像で大騒ぎで。
大変ワクワク。幸せ満開
・・といきたいところですが。

今日、宇宙人公立入試の発表
見事討ち死にいたしました。
まさに『慟哭』(爆)
ウリ中学全滅だそうで
28日の一般受験目指して今・・・昼寝しております。(爆)
ま、世間の荒波を知れ、という神様の声ですから。
頑張っていただきましょう。

さて、気を取り直して。
母はたくましく。
今日も道楽を極めたいと思います。(笑)

さて、『慟哭』

いやぁ~思った以上に皆さんに真剣に読んでいただいて
書いた時は「ま、こんな感じかな」だったのに
今はユンスの霊が宿っているかのような重さになっております。
・・というわけで。
毎日陰々滅滅とダラダラするに忍びなく。
ここは男らしく(笑)
ダァ~ッとあげちまうか。
・・と思った次第。
この先は3パターンくらい書きかけで放置してありますが
どれもUPする予定はなく。
ミンウは未だあの時のまま状態。
ちょっと落ち着いて書けそうであれば挑戦したいと思っております。
まずはなにはともあれ最後まで読んでいただいて、
出来れば感想など聞かせていただけると
その後を書く気にもなるであろうと思います。

では早速。
各コメ欄は閉じました。
感想はすべて最終トピのコメ欄にお願いいたします。





『慟哭』 13


ミンウは釜山の繁華街の街角に立っていた。

不思議なことに誰も通行人はいない。

車も行き交っていない。

音もない。

「ミンウssi・・」

振り返るとユンスが微笑んで立っている。

「ユンス・・どうしたの?何で釜山にいるんだ?」

「私、飛べるようになったのよ。空を飛んでいたらあなたが見えて。

あなたは私の未来だからここで命を終わらせるわけにはいかないの」

「ユンス・・何言ってるの?」

ミンウはユンスの言っていることが理解できなかった。

ユンスはそっとミンウの両手をとると自分の胸にあてがった。

そしてその手を今度はミンウ自身の胸に。

ミンウは自分の胸を見て驚いた。

血がどくどくと流れ出している。

「俺、死ぬのか?」

「大丈夫。死なない。私が死なせないわ」

ユンスはにっこり微笑んだ。

ユンスの手とミンウの手を当てた彼の胸から流れていた血は、

驚いたことに傷口へ逆流して戻っていく。

「ほらね。完璧よ」

ユンスは自慢げに笑うとミンウの傷口に手を当てた。

ミンウが傷を見ると傷口は跡形もなく消えている。

「ユンス・・」

彼が顔を上げるとユンスはもうそこにはいなかった。

「ユンス。どこいったんだ。ユンス・・」

必死で叫んでいるのに・・見つからない。







釜山の病院の窓からは遠くに港が見えた。

生命の危険が去り、ミンウが意識を取り戻したのは事件が起きてからもう半月以上経った頃だった。

「ユンスは・・」

との問いになんと答えていいものか・・。

付き添っていたキム事務官は頭を抱えた。

ミンウの回復を祈りつつ、

意識が戻ったときに伝えなければならない悲劇のことを考えると、

夜うなされることもあった。

最初の数回は適当にあしらったが、

意識がしっかりしてくるにつれごまかしはきかなくなっていく。

何度も聞かれるうちにキム事務官はどうしていいのかわからず

うつむき涙を流し始めた。

180センチもある大男がシクシクと目の前で泣き出す異様な光景を目の当たりにし、

ミンウはわが身が置かれたただならない状況を悟った。

「キム事務官・・・俺が倒れている間に何があった。

俺は大丈夫だから。話してくれ。」

彼の口から途切れ途切れにミンウの想像もしていなかった事実が語られた。

「・・・・・ユンスssi は・・・

あの日・・検事が撃たれたのと同じ頃・・・

ご自宅のベランダから飛び降りて・・・亡くなりました。」

「え?何だって?」

「・・・・警察の捜査結果によると自殺だとのことです。」

「自殺って・・・」

ミンウは頭の中が真っ白になった。

相変わらずキム事務官はベッドの横に立ったまますすり泣いている。

彼にとっても彼女は尊敬すべき有能な先輩だった。

「・・・・ユナは、ユナはどうしてる?」

真っ白な頭にユナの笑顔が浮かぶ。

「ユナちゃんはミヨンさんが。」

「そうか・・・。元気なのか?」

「はい。」

ミンウは厳しい表情のままではあったが

少しほっとして大きなため息をついた。

あのユンスが自殺って一体・・・全く思い当たる節がない。

頭は混乱したままだ・・・。

「すまん。一人にしてくれないか。」

今のミンウはその一言を口にするのがやっとだった。


キム事務官が部屋を後にする。

静寂が訪れる。

遠くの港から船の汽笛がかすかに聞こえた。

窓の外の景色は先ほどと変わらないのに今の彼の世界は暗黒に閉ざされていた。

「どうして・・・どうしてだ・・ユンス・・・」

涙が枕に流れ落ちる。

ミンウは強引に起き上がると

腕に刺さった数本のチューブを乱暴に引き抜き、点滴の下がったスタンドを投げ倒した。

「どうして・・・どうしてだ・・ユンス・・・」

立ち上がろうとすれども、長く横になっていた彼にその力はない。

床に崩れ落ちる・・。

廊下まで響き渡る慟哭をドアの外でキム事務官はじっと聞き涙を流した。





退院までの数週間。

ミンウは誰とも口をきくことがなかった。

ただ黙って窓の外を見ている。

彼を気遣って無理に話しかけるものもいない。

そんな中、ミンウは毎日毎日繰り返し考えていた。

俺はユンスにとって何だったのだろう・・・。

死を選ぶに至るまでの大きな悩みを抱いているのに何も相談できない・・・

そんな頼りない意味のない男だったのだろうか。

存在価値さえない夫だったというのか。

あの夜・・ユンスは言った。

最高に幸せだと。

彼女がうそをついていたとはとても思えない。

じゃあ何で自ら命を絶ったりする。

幼い娘を残して。

警察の捜査結果のように育児ノイローゼだったのか。

俺が仕事ばかり優先させて満足にあいつの話を聞くことがなかったから・・・。

あいつに仕事をあきらめさせて家に育児に縛り付けていた報いなのか・・・。

でも、来月からあいつの復職は決まっていた。

産休を終え、ユナを預け、職場に復帰するのが目前だったのに。

そんな彼女が自殺するとはミンウには到底思えなかった。

何かが違う・・・。

ミンウはユンスが自ら死を選んだ理由について釈然としない想いを抱いていた。

でも・・・俺がユンスに甘え、

彼女の変化に全く気がつかなかったことには変わりがない。

たとえどんな理由だったにしろ俺は許されない過ちを犯したんだ・・・。

何度考えても最後はその結論に達した。

やっぱり俺は最低な夫だ・・・・。

ベッドに横になり目を閉じるとあの日見た夢を思い出す。

釜山の街角でユンスに逢った夢。

俺を救ってくれた夢。

俺が自分の未来だと微笑んだ彼女。

手を当てた胸のふくらみを・・・

胸の鼓動を・・・

ぬくもりを・・・。

今でも鮮明に思い出すことができた。

「ユンス・・・ユンス・・・・」

布団を頭からかぶり、誰もいない部屋で丸まったまま嗚咽がやむことはなかった。






金海空港のロビー。

「本当にユナちゃんに会って帰らなくていいんですか?」

キム事務官はミンウに問いかけた。

「ああ・・母親を奪っておいてユナにどんな顔をしてあったらいいのか・・

わからないんだ。

俺だけユナを抱きしめるのは不公平な気がする。

もうあいつはユナを抱けないのに・・・

俺にはそんな資格がないんだ。」

淡々とそう語るミンウにキムは返す言葉がなかった。









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