ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

「エクセル年表」の愉しみ(その3)

2020年12月06日 | 情報・通信システム

先日、筆者の拙いブログを読んでいただいている方からコメントをいただいた。それは「『エクセル年表』の愉しみ(その2)」までをお読みいただいたうえでのコメントである。過去のいろんな情報資産をパソコンで整理しているが、たび重なるバージョンアップなどでコストがかさんだり、場合によってはせっかく整理・保存したデータが利用できなくなったりするといった不便を感じている、というふうに理解した。「お悩み解決」には至らないかもしれないが、今回は情報整理術といった観点から話を進めてみたい。

利活用することは依存すること

このシリーズの1回目の冒頭でも触れているが、Excelは本来表計算ソフトなのであって、これで年表を作ろうとしても一定の限界がある。Excelの作り手(開発者)が想定した表計算の作業ではなく、年表づくりのためにいわば無理矢理に応用してしまおうという話だからだ。
しかし筆者はあえて「エクセル年表」を押し出すことにした。我々にとって身近にあるパソコンソフトで年表を作ろうとするならば、やはり表計算、それもExcelを応用することがもっとも現実的だろうと考えたためだ。

理想を言えば、年表を作るために特化されたソフトがあればいいのかもしれない。いや探せば実際にあるだろう。Excelと比べてよほど使い勝手はいいかもしれない。しかしそのソフトは多分、Excelほどの永続性や普遍性(使い方や応用に関する情報が世間に豊富に存在し容易に得られること)は期待できないのではないだろうか。

自分史などの年表づくりや思い出の整理などを含め、個人的な情報を整理するにあたって筆者は、次のように留意している。

  • 利用するソフトウェア(アプリケーション)は、より永続的に存在するであろうと考えられるものを選択する。
  • データ形式はより普遍的で普及しているものを選択する(その製品の独自機能を使いすぎない)
  • より安全な場所に保存する

筆者が例に挙げている表計算ソフトMicrosoft Excelは、もちろん特定の企業が開発・サポートしているソフトウェア製品である。ということは、Excelで年表を作ろうとすることは、この企業に依存することであり、この表計算ソフトに依存するということだ。
「企業に依存する」とは、Microsoft社がExcelの製品仕様やサポート内容に関して変更を加えたり提供を中止したりすれば、我々はそれに付き合わされるということである。
また「この表計算ソフトに依存する」とは、Excelで作り上げた年表データなどは、他社の同様の表計算ソフトでは(完全な形で)再現・編集できない、つまりExcelという製品に縛られてしまうということである。

ただいっぽうで、Windowsというものが世に出てきた頃から数十年にわたって、「表計算といえばExcel」という状況が世界的に続いていることは事実である(それまでの一時期、特に米国ではロータス社の表計算ソフトが普及していた)。
そこで筆者は「Excelを使いつつも、作り込みすぎない(依存しすぎない)」という姿勢で付き合うようにしている。
「作り込みすぎない」とは、Excel独自の機能をなるべく利用しないということである。つまり、せっかくの便利な道具をより使いこなそうとはしないという、ちょっと後ろ向きな姿勢なのである。しかしこれには筆者なりの理由がある。

ファイル形式とそこに保存できる情報

Excelの場合、年表なり名簿なりを作って保存すると、原則として「Excelブック」という名のファイル形式で保存される。拡張子(かくちょうし)は、xlsxである。
拡張子とはファイルの種類(形式)を表す文字であり、ファイル名の最後にくっつくものだが、表示されない設定をしている方もいるだろう。
Windowsの場合は「Windowsキー」+「E」と押してWindowsエクスプローラーを表示させ、上辺の「表示」タブをクリック、表示されたリボン(絵ボタンの並び)を右に見ていくと「表示/非表示」の枠の中に、「ファイル名拡張子」のチェックボックスがあるはずだ。ここをオンにすればよい。
Mac OSの場合はこちらが参考になるかもしれない。

さて、Excelは「Excelブック」以外にも非常に多くのファイル形式で情報を保存することが可能である。
「名前をつけて保存」するとき、ファイル名を入力する欄のすぐ下あたりに、「ファイルの種類」を指定するドロップダウン・リストがあるはずだ。ここで自由にファイル形式を選ぶことが出来る。なお、比較的新しいバージョンのExcelを使用されている場合は、「本来の形式とは別の形式でファイルを書き出す」という考え方になり、「ファイルのエクスポート」から操作することになる。手順は次のとおり。
「ファイル」→「エクスポート」→「ファイルの種類の変更」で表示される画面内の「名前を付けて保存」ボタンを押し、現れたダイアログ内の「ファイルの種類」ドロップダウン・リストでファイル形式を選択する。
なお、本来とは異なる形式でのファイル保存やエクスポートは、場合によって数秒から十数秒以上の時間がかかることがある。

こうして新たに保存した(エクスポートされた)ファイルは、その形式がExcel本来のものとは違う以上、そこに保存されている情報は異なるし、その後の利用方法にも影響を及ぼすことになる。
たとえば「Excel 97-2003 ブック(*.xls)」の形式で保存すれば、旧バージョンのExcel 97でも扱える形になるし、この「旧版エクセル形式」を扱える他社の表計算ソフトに読み込ませることも(完全ではないかもしれないが)可能となる。そのかわり最新バージョンのExcelでしか取り扱えない情報はすべて失われている。

ただ、この段階で理解していただきたいのは、Excelで作ったファイルといっても、いろいろな形式で保存ができるということだ。
さきほど筆者は「依存しすぎない付き合い方」という話をしたが、まさにこのファイル形式が重要な意味を持ってくる。

CSVというファイル形式

話を分かりやすくするため、まずは極端な例から示すことにする。
CSVファイル、あるいはCSV形式と呼ばれるファイル形式がある。Comma-Separated Values(カンマ・セパレーテッド・バリュー)の略で、その名のとおり「カンマ記号(,)で区切られた値」という意味である。
Excelの最新で標準的なファイル形式を示す拡張子は「xlsx」だが、CSVファイルのそれは「csv」である。

では、CSV形式は具体的にいかなるものか。その実体は単なる文字情報しか記録できない、原始的なテキストファイル(文字データファイル)である。
仮にExcelのネイティヴ形式(xlsx)で保存されている年表をCSV形式で保存してみると、たとえば次のようなことが起こる。
セルの塗りつぶし、罫線の色や太さ、太字や文字色などの情報がなくなる(書式情報の欠落)、挿入した図形や写真がなくなる、列や行の「表示/非表示」「ウィンドウ枠の固定」などの設定情報がなくなる、もちろん計算式など保存できない、そして複数のシートは1枚1枚わけてCSVファイルを作らなければならない、などである。

これだけ並べると、CSVはダメダメな感じがするかもしれない。しかし一つだけ強力な点がある。どんな開発企業の表計算ソフトであっても、新旧のバージョンをも超えて通用するという点である。シンプルであるがゆえの強さといおうか。
したがって年表などをCSV形式で作っておいて(保存しておいて)、編集作業はあらゆる種類の表計算ソフト(やテキストエディター)で行えるようにしておく、というスタイルを採用することも可能である。
もちろん先に説明したような見た目の情報などは犠牲になるが、表としてのタテヨコの関係性は崩れない。さらにいえば表計算ソフトに金を払う必要もなくなる。

もちろんここでは極端な例としてCSVを挙げたが、Microsoft Excelへの依存性からはもっとも離れた「表のあり方」だということをご理解いただきたい。
しかし現実問題としては、さすがにCSVはキビシイ。仮に至極単純な表であったとしても、列の幅や行の高さの情報が記録・保存されないため、ファイルを開くたびに行列のサイズを調整しなければならず、かなり使いづらい。
ではその中間あたりはないのか。じつはある。

融通性のあるファイル形式

最初にズバリ紹介すると、ODSというお試しいただきたいファイル形式がある。
Open Document Spreadsheet(オープン・ドキュメント・スプレッドシート)の略だろうと思うが、これは日本も含め世界的に支持を得ているファイル形式の一つである。各社のほとんどの表計算ソフト、あるいは無償で提供されている表計算ソフトの間で互換性が図られている。もちろんMicrosoft Excelでも取り扱える。
国際標準化機構(ISO)/国際電気標準会議(IEC)、日本産業規格(JIS X 4401:2014)の標準規格として認定されており、日本でも教育機関や公的組織などで「特定のベンダー(供給者:製品やサービスを販売・供給・納入する事業者)に依存しない」という考え方で多く採用されている。
つまり一定の信頼と実績がある、表計算のためのファイル形式である。

とにかく一度、実験してみていただきたい。Excelまたは他社製表計算ソフトで、このODS形式で書き出してみる(「名前を付けて保存)してみる)のだ。「ファイルの種類」ドロップダウン・リストでODS形式を選択する。よほど古いソフトでなければ、ODS形式の書き出しや読み込みはできるようになっているはずだ。

実験的に保存してみるとわかるが、Excelが入っているパソコンであれば、Excelと似て非なるデザインのアイコンとなっている(すでにCSVで実験した方は、その時ともまた少し違うアイコンを見ることになる)。
これはWindowsが、そのファイルの拡張子(.csvとか.odsとか.xlsxとか)を判別して、そのファイルを取り扱うための言わば「おすすめ編集ソフト」をExcelと判定しているためである。

なお、作成中の年表などをCSVやODSなど本来のExcelブック形式とは異なる形で保存しようとすると、「情報の一部が失われる」とか「サポートされない」といった脅し文句のような表示が出るが、これはつまり「Microsoft社のそのバージョンのExcelでしか取り扱えないような設定や情報は保存できませんよ」という注意喚起である。そんなことはもう承知の上なので、心配せず進もう。
ちなみに「名前を付けて保存」なのだから、元のファイルが上書きされて別の形式に変換されてしまうというわけではない。ファイルのエクスポートも同じだ。

さて、ODS形式で保存してみた年表はいかがだろう。ODSファイルをExcelで開いてみる(ファイルを右クリックして「プログラムから開く」でやってみるのもいい)。
筆者の場合、セルは場所によって(色の)塗りつぶしをしている。セル内の文字は太字にしているところや色付きにしている。さらに図形を挿入して、そこに囲み記事のようにその時代やその出来事の付随情報を書き入れている。これらはすべてキチンと反映されている。さらにふだん使わない列の非表示設定も引き継がれている。しかし残念ながら「ウィンドウ枠の固定」は引き継がれてはいない。
ODS形式が決定的に優れているというつもりはないが、何らかのヒントになれば幸いである。

なお、ODSは「オープンドキュメント」と呼ばれる規格の中の、表計算に関するファイル形式である。他には一般的な文書ファイルのODT、プレゼンテーションファイルのODPなど各種が存在する。
またMicrosoft Officeと同様にOpen Officeという特定のベンダーに依存しないオフィススイートも存在する。一概に「オープン〇〇」がよいというわけではないが、選択肢の一つとして知っておいて損はないと思う。もちろん使い慣れたソフトウェアを使い続けるということにも意味はある。

さいごに

本稿を練り上げているうちに、いつしか「そもそも論」がずいぶんと長くなってしまい、思い切ってそれらをバッサリ割愛したうえでブログ投稿した(それでもこの長さだが)。
いま、下書き用のフォルダに保存している原稿(Microsoft Wordで保存している)には、「ハードウェアとソフトウェアの関係」、「Excelの歴史」、「サブスクリプション」、「クラウド保存か自前保存か」、「そもそも情報とは何か」、といったような雑多な文章が放置されている。
しかし「年表づくり」というテーマからはやや離れてしまうため、別の機会に再編集して投稿できたらと考えている。

世間にはパソコン利活用に関する個別具体的な書籍や情報サイトは無数にある。しかし、そもそもパソコンやITとの付き合い方に関して俯瞰するような情報(そして一般人に分かりやすい解説)は非常に少ないと感じている。それはおそらくその活動が、結果として金銭的価値の発生に結び付くかどうかという価値観によるものだと思う。もちろんそれも技術の発展のためには必要不可欠なことに違いない。

けれども人と技術の付き合い方について、もっと関心や議論が高まっていけばいいなと思っている。それはもしかしたら、原子力エネルギーの利用だとか、石油製品の利用、果ては生命科学倫理などといった方向にさえアナロジーがとれる知見が見いだせるかもしれないと思うからだ。
別の記事でも書いたが、技術そのものは透明な存在である。人だけがこれに色や性格を帯びさせて、有益だ罪悪だと論じている。
技術を深めようとすればするほど、我々は「人間とはなにか」について思索しなければならないのかもしれない。

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1 コメント

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Excelの有用性は (おーじーうえもん)
2020-12-07 20:28:46
こんばんは
専門的なことはよくわかりませんが
Excelを使って歴史を見直すという
方向性は正しいと思います
初期の大和朝廷の統治システムは
完璧なものでした
中国の官僚組織や政治を手本にしたという
ことがあるかもしれませんが
後の鎌倉幕府や江戸幕府よりも
はるかに整っていました
時間軸を考えると近世になって統治システムは
後退したという考え方もできるくらいです
「文明は時間に反して後退する」ことも
あるのです
このような歴史を見直すきっかけとして
ハナウマさんのExcel年表の活用が役に立つものと思っています

Excelに限らず、多くのソフトがAI対応を
謳っています
Excelもデータ処理にAIを導入して
将来を予測するデータベースとして
バージョンアップしていくことが予測されます
しかし、処理速度の高速化が行われたとしても
それは過去データの分析にとどまることになります
どんなにExcelが進化しても
明日の競馬の結果を予測できないというのが
現実でしょう
たとえ、AIを駆使して
ビッグデータで未来予測をしたとしても
けっきょくは世間一般のステレオタイプ化した
人々の世間話の結論とたいして変わらない
結果となってしまう二律背反の泥沼に
はまることになるかもしれません
過去のデータは
過去の歴史の新発見をもたらしますが
未来の予測は不可能ということです
未来の予測をより完全にするのは
過去データにとらわれない
ハナウマさんのような個性的な
価値判断システムだと思います

マイクロソフトは
そのへんのところを勘違いしないで
さらに良いExcelを開発していだだきたいと
思います
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