ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

Microsoft Advertisingの怪

2023年05月03日 | 情報・通信システム

パソコンなどで使用するオフィスソフトと言えば事実上、米国マイクロソフト社が販売している「Microsoft 365(旧称:Office 365)」が、世界的に最も使用されているといえそうだ。筆者もこのソフトウェアを使用しており、その使用料を毎月クレジットカードで支払っている。
ところが今回、カード明細を見てちょっと考え込んでしまった。ただ結論から言えば、同社お得意の名称変更があったようである。

INDEX

  • はじめに
  • カード明細を見てビックリ
  • Microsoft教の信者?として
  • (参考)「Microsoft 365」や「Adobe CC」などの仕組み
  • (参考)「Windows 365」とは
  • 関連リンク

はじめに

ワープロソフトや表計算ソフトなど、ほとんどの事務作業で利活用できるソフトウェアを複数集めてワン・セットにしたものを、一般に「オフィス・スイート」と呼ぶ。いろんな企業から販売されているし、実質無料のものもある。
ただ世界的に見れば(特にビジネスシーンにおいては)、米国マイクロソフト社が販売するもの(一部無料のものもある)が事実上の世界標準、すなわちデファクト・スタンダードであるといっても過言ではないだろう。

現在、Microsoft社のオフィス製品は、クラウドベースのシステムとして提供されており、大企業など特殊な契約形態を除いて、ユーザーは月額あるいは年額を支払う「サブスクリプション」という方式で使用することになっている。
筆者の場合は月額を毎月クレジットカードで支払っており、あたりまえだが毎月定額である(年額一括払いにすれば、月額の約10倍で済む)。

じつは筆者のサブスクリプション契約は2つあり、1つは「Microsoft 365 Personal」、もう一つは「Exchange Online」である。
Microsoft 365 Personalは、いわば「おひとり様用Office」である。一般個人で契約する場合の典型的なものと言えるだろう。
ちなみに2012年夏には日本でも、家族向けのプラン「Microsoft 365 Family」のサービスが始まっており、3人以上(6人まで)の家族で使うのであれば検討してみる価値がありそうだ。

それから、筆者が契約しているもうひとつのExchange Onlineは、メールサーバーであり、ちょっとしたグループウェア的な使い方もできるサービスである。
しかしこれは、一般個人が契約してもほとんど意味はない。通常は企業が、たとえばMicrosoft 365などのサービスとセットにして契約する、法人向けプランの一部分として組み込む種類のものである。筆者の場合は仕事上の検証作業などのため、Exchange Onlineを単品契約している。

カード明細を見てビックリ

さて、Microsoft 365 Personalと、Exchange Onlineの毎月の請求は、当然ながらクレジットカードの明細として挙がってくる(筆者の場合はJCBカード)。
ところが今回、その名称が(少なくとも筆者にとっては)予告なく急に変更されたため、いわゆる「身に覚えのない請求」に感じたという話である。
これまでのカード明細では、それぞれ下記のような名称で記録されてきた。

  1. MICROSOFT SUBSCRIPTION MSBILL.INF → 1,284円
  2. MSFT <(英数字10ケタ)> MSBILL.INFO → 473円

それほど高額なものでもないし、この部分については正直なところ毎月ほとんど気にしていなかったのだが、今回確認した明細では次のように新しい、そしてより「わかりにくい」表示に変ってしまったようである。

  1. MicrosoftAdvertising → 1,284円
  2. Microsoft 365 → 473円

初めは一瞬、ウッカリ余計なところをクリックしてしまったか、あるいはカード情報がすでに漏えいしており、不正利用されたのか、と心配になってしまった。
しかし前月の明細と照らし合わせてみると、どうやら名称の変更のようである。金額も一致しており、他に同様な請求は記録されていないからだ。

ただ、なぜMicrosoft 365が「Advertising」で、Exchangeが「Microsoft 365」になるのかわからない。

Microsoft教の信者?として

まぁ負担する費用が変わるわけでもないので、特に「どうこう」ということはないが、ただ一人の日本人ユーザーとして感じることはある。

2011年2月に都内各所に分散していたオフィスを、品川駅港南口の近代的なオフィスビル内に統合し、その社名も「マイクロソフト株式会社」から「日本マイクロソフト株式会社」に変更、「今後は日本のお客様のために、より一層……」などと高らかに謳い上げていたことと考えあわせると、ちょっとさびしい気もする。

だいぶ前のことになるが、その品川の新しいオフィス内を特定のユーザー向けに見学させるツアーがあり、筆者も参加したことがある。
大部分はショウ・ルーム的なエリアの見学だったが、一部に(ちょっと信じられないことであるが)、ふつうに社員たちが仕事しているフロア内を、許可を得たとはいえ十数人の部外者が、担当者に率いられてぞろぞろと通っていく見学もあった。もちろん、社員に話しかけたり近づいたりすることは禁じられていたが、非常に不思議で貴重な体験ではあった。

そして見学ツアーの最後に会議室のようなところに入り、アルコールを含む飲み物と、簡単なおつまみを出してくれて、和やかな雰囲気で語らう時間が設けられていた。
筆者も出された缶ビールを飲みながら、同社の経営層の方と話をすることが出来て、満足して帰った記憶がある(余談だが、帰途に寄った品川駅のバーで、カウンターの隣に座っていた男性と意気投合し名刺交換させてもらったら、これまた当時最先端の情報関連企業の社長であった)。

そもそもこの社内見学ツアーに招待されているのは、大口契約をしている大企業の担当者たちなのであって、日本マイクロソフトの「なにぶん今後ともよろしく」という意味での企画だったのだと思うけれど、その日本的な接遇や企業態度に、そして新しい出発をしようとする同社の意気込みに、親近感を覚えたのは正直なところだ。逆に言えば、「やっぱ所詮、アメリカ発の会社なんだよな」といった感覚が、それまであったということでもある。

それから約10年、「GAFA」や「GAFAm」という表記が使われ出したように、(グローバルでの)Microsoftの旗色は、相対的にやや陰りが見えてきた気がしないでもない。
ただ、多くの企業の情報部門や、むりやり情報担当に抜擢された人たちは、好むと好まざるとにかかわらず、Microsoft社の製品やサービスを学び、その利用促進に邁進してきた経緯がある。そういう意味において各企業の情報部門担当者はMicrosoft教の信者であり、伝道者でもあった。
いや実際のところMicrosoftの日本法人は、「エバンジェリスト(布教者)」という肩書の人物を使って、たくさんのセミナーを、著名なホテルの大広間をいくつも借り切るような規模で行っていたりした。

もちろん各時代の経済状況の変化もあるし、技術の進展や競争もある。一概に「昔の面影さらになし」などと評するのは酷というものだろう。しかしいま一歩、利用者の気持ちに寄り添うようなところがあればうれしいと思うのは正直なところだ。
さらにいえば、日本市場で培われた、日本ならではのCS(顧客満足)のセンスをグローバルに浸透させていくことが出来たなら、などと妄想も広がる。

勢いでグッと飛躍させていただけるなら、唯一の被爆国である日本こそが、世界の安定に貢献できる可能性を秘めているように、日本法人発のセンスで、東洋思想をも通底させながら、より人に寄り添うことが出来る情報システムのありようを提示していけるのではないかという気さえしてくる。

(参考)「Microsoft 365」や「Adobe CC」などの仕組み

その昔、パソコンのソフトウェアといえば、パソコンショップなどの店頭で箱入りの製品を手に取って購入し、その箱から分厚い書籍のようなマニュアルとCD-ROMを引っ張り出して、パソコンにインストールしていたものだ。
そうして数年おきに、バージョンアップ(Version Upgrade)という名の一大イベントである更新作業、買い替え作業を行っていた。
しかし現在では、クラウドベースでのソフトウェア提供が一般的となり、費用の支払いも月額、あるいは年額払いのサブスクリプション契約が一般的である(初期コストを考慮する必要がない)。

ところで、こういったクラウドベースでのソフトウェア提供に関して、まだまだ理解が進んでいない面がある。
たとえば、「インターネットが切れてしまったら、使えなくなってしまうのではないか」というのがその典型である。

Microsoft社のMicrosoft 365にしろ、Adobe社のCreative Cloudにしろ、これらのソフトウェアは、これまでどおり利用者の手元のパソコンに「インストール」されることに変わりはない。すなわち、これまでどおり手元のパソコン上でソフトウェアが実行される。
したがって、インターネットが切れたからと言って、直ちに使えなくなるなどと言うことはない。

Microsoft 365の場合、インターネットに接続しない状態が31日以上続くと、WordやExcelなどのアプリケーションは「機能制限モード」に切り替わる。すなわち閲覧や印刷は出来るけれども、新規作成や編集が出来なくなる。1か月もネット通信が途絶えてしまうということは通常あり得ないから、実際上はまず問題なく使用し続けることが出来る。

この「31日以上ネット接続していないと…」という仕掛けは、正当なライセンスによって使用しているかどうかの、定期チェックの通信が出来なくなってしまうことによる。だから、たとえ使用料を払っていても、1カ月に一度はネット接続しないと満足に使えなくなってしまうわけだ(ネット接続さえすれば、しばらくして自動的に全機能が使用できるようになる)。

そのほかにも追加費用なく可能な、新たな機能追加やセキュリティ面でのアップデートも、ネット接続が必要になる。
また、たいていのオフィス製品は(CD-ROMの時代から)、最初のインストール時に、使用できるすべての機能をインストールしているわけではない。一般的にあまり使われないであろう特殊な機能については、あとからユーザーの操作によって追加インストールするようになっているのだ。そんな場合もやはりネット接続が必要となる。

つまりクラウドベースのソフトウェア提供というものは、インターネットへの常時接続環境を前提としている。常時接続が一般個人でも当たり前になった今日だからこそ、こういったサービスが実用性を持って我々の前に現れてきたといえるのである。

ちなみに、インターネット上のクラウドストレージにドキュメントを保存している場合も、通信が切れたからと言って心配することはない。
主要なクラウドストレージサービスでは「自動同期」という機能があるため、利用者は通信の安定性を意識する必要がないのだ。

通信が途切れた場合、編集後のドキュメントは実際のところ手元のパソコン内に保存されるのだが、表面上はあたかも通信先のクラウドストレージに保存されたように振る舞う(人間に対してそう見せかけている)。
そして通信が復活した際には、自動的に変更部分を検出して最新状態に整えてくれるのである。万一、同期のトラブルがあった場合でも、新旧両方のバージョン(版)をユーザーに示し、どちらを最新のものとして扱うかを聞いてくる。
なお、同期の仕組みが理解できていれば、同期方法の設定を変更して自分が使いやすい形に変更することも可能だ。

(参考)「Windows 365」とは

前項で「ネット接続が切れたら、即使えなくなるのではないか」という懸念について触れた。まさにそのイメージに近いのが、最近サービスが始まった「Windows 365」というヤツだ。これは基本ソフトウェアのWindowsも、そのうえで動作する各種アプリケーションも、すべてクラウド側で動作し、手元のパソコンは「画面を再生しているだけ」、という仕組みである。

ちょっと詳しい人なら「リモート・デスクトップ」という言葉を思い浮かべるだろう。会社などで動いている自分の席のパソコンを、自宅や出張先からリモートで操作するという仕組みだ。まさにあれをサブスクリプション化したものとイメージすればほぼ間違いない。

新型コロナウイルスの影響でリモート業務の環境整備が急がれていた2020~2021年ごろ、多くの企業や組織で安易にリモート・デスクトップを採用し、セキュリティ上の問題が頻発していた。表面化していない不祥事を含めれば、おそらく膨大な数にのぼったはずだ。
実際のところリモート・デスクトップを業務上で運用するには、それなりの知識と技術を備えた情報部門担当者と、相応のコスト投下が必要である。

こういった状況を受けてMicrosoftは、より手軽で安全にリモート・デスクトップ環境を整備できるサブスクリプション・サービスを開始した、という言い方もできそうだ(Micorosftでは「クラウドPC」という言葉を使っている)。

このサービスの場合、実際に動作しているWindowsは、Microsoftのデータセンターで稼働している「仮想デスクトップ環境」である。パソコンがズラリと並んでいるわけではなく、さもWindowsが存在しているかのように見せかけるソフトウェアが動作しているだけである。それはたとえば数百台のパソコン(数百のWindowsデスクトップ環境)が存在しているかのように見せかけられるソフトウェアが、動作しているということである。

もはや企業は、サーバー・コンピューターはおろか、デスクトップ環境(各社員の手元パソコン環境)をも、気軽に外部委託できる状況になってきたのである。
手元に必要なものは、入出力装置(画面、マウス、キーボード)と、通信機能だけを備えたパソコン風の機器、すなわち「シン・クライアント(Thin Client)」でOKということになる。
ハードディスクやSSDなど大容量の記憶装置も必要ない。だから、保存された情報の暗号化などと言ったことも考える必要がない。

万一、Thin Clientが紛失・盗難に遭ったところで、そこに秘密情報は存在しないのだから、物品としての損害はあるものの、情報セキュリティ的には「事故」ではないし、その手前の「インシデント」にすらあたらないかもしれない。
また企業にとってみれば、多くの社員にパソコンを配布し管理していくという、直接・間接のコストを抑えられるということが大きな魅力でもある。

関連リンク

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