花日和 Hana-biyori

不自由な男たち

「不自由な男たち-その生きづらさは、どこから来るのか」小島慶子×田中俊之/祥伝社



元アナウンサーでタレント・エッセイストの小島慶子さんと、武蔵大学社会学部助教の田中俊之さんの対談です。田中さんは、社会学を学び、いま男性学の第一人者として各メディアによく出演されていますね。

だんなさんが仕事をやめて家事育児に専念し、一家の大黒柱として働く小島さんと、男性が学校をでたらすぐに働き40年間勤めあげるのが当たり前という社会に疑問を呈している田中さんですから、まあ話がよく合います。ちょっと居酒屋バナシを聞いているみたいなところもありましたが、内容は非常に刺激的で充実したものでした。ただ、読んだ次の日には忘れちゃうんだよな。記憶力がもうあかん(笑)

もとい。既存の価値観を壊して、「男とはこうだ」からの解放を目指には?という議論だったような気がします。気づきを促すというね。価値観を壊すといっても、その人のアイデンティティーをすべて破壊してはいけないわけです。その辺のバランスをどう保ちつつどうやるかが問題です。

ただ、世の概念を変えることは出来なくても、そこに気付いているか否かはけっこう重要でしょう。次の世代に妙な継承をしないで済むので。

今はもう、親世代のように「男が稼いで、女が家を守る」ということができる時代じゃないわけです。やりたくない人も多い。だから、「男も女も互いのしんどさを理解しあう時期に来た」とのこと。

そこで非常に共感したのが、
「男も家事をやるべきだが、昭和の母を手本にしてはいけない」
という話。「俺の母親はできていた」は禁句とか。これホント。昔はこうだった、が一切無意味、むしろ邪魔なわけです現代でうまくやっていくにはね。

そのほか、子どもに対しては、小島さんの「英語と数学、手に職があればどこでも生きていける」「お小遣いを無条件にあげるのはやめた。家事をして稼ぎなさいと言い渡した」という方針がなるほどでした。生きるために稼ぐこと、これは男も女も関係なく、身に沁み込ませるということなんだろうなあ。


以下は脈絡のない抜粋・要約メモです。

・現代の日本で男性に求められる、「こうあらねばならない」の最低ラインは、「正社員で、フルタイムで働く」こと。
・男性の中では「特別な存在になる」という思いはずっとくすぶっている。
→小学生のとき「夢」を聞かれる、大きいことを言わないと許されない、それは強迫観念につながる。

・「草食男子」は女性を獲物扱いしない人、本来良い意味。
・(最近のイクメンブームの不安点)イクメン礼賛では変わらない。
かつて「働く女性に価値がある」と「主婦」の対立になったが、「両方あっていいじゃない」という言い方にしないと不毛な戦いが続くだけ。なにも変わらない。

・他人からみて価値のないものでも、自分のなかに価値があると思えればいい。
・「これが普通」を壊したあとにわいてくる不安をどうにかしなくては。夫婦なら妻が受け止める。(p241)

・セーフティネットの整備が必要であるとともに、主体的に社会とつながる何か(場)が必要。それは自分でつくる。居心地のいい場所は自動的に与えられるものではない。

・「あなたにそこにいてほしい」と言ってくれるような何かが必要。家族、友だち、御近所、大学での学び直しなど。会社以外に戻れる場所があるのはいい。(p243)

・「人間は、自分で考えて自分の行動を決めることができる。」「大切なのは、男性の生き方は変えられるということ。それは自分の言葉で自分の物語を紡ぐことで可能になります」(p250)

・世界が根底から揺らぐような事件や災害が起きて、安全神話が崩れ、価値観が変わっても、「どっこい人生は続いている」と言えるようになれば、「変わらない世界」の当事者として、しぶとく生きていける気がするんです。視点を変えて、古いフィクションを捨てて。それは自分の生き方でも、社会の選択でも、同じことだと思うんですよね。(小島さん)
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