ぼんやり考えていた
日曜日のクリスマスイヴ
そもそもクリスマスは
男と女がいちゃつくために
あるんじゃないのよ
と、
と、
それでも世の常というのか
今や仕方ない
今年は日曜で良かった
ひとりさみしく
ひとりさみしく
たとえ1日中家にいたって
誰にもわからない
というか
というか
それ自体悲しいが
昨夜はしゃいで飲みすぎたので
少し頭が痛い
最近弱くなったな
最近弱くなったな
さっきから何度もため息が出る
昔
ため息をつくと
昔
ため息をつくと
ため息の分だけ幸せが逃げて行くのよ
誰かに言われた事を思い出した
さて もうひと寝入りしますか
さて もうひと寝入りしますか
布団にもぐりこんだ時
電話が鳴った
面倒くさいなと
電話が鳴った
面倒くさいなと
思いながらも
受話器をとった
・・・・
森田?
えっ岡崎さん?
おはようござ いえ、こんにちは
電話の声は 岡崎信也だった
・・・・
森田?
えっ岡崎さん?
おはようござ いえ、こんにちは
電話の声は 岡崎信也だった
休みなのに悪いな、まだ寝ていたか?
あは ばれましたか?
昨夜友達と飲んで
まだ何となくぼんやりしていました
そうか、いやその
そうか、いやその
今夜は
今夜 何か予定があるか?
よかったら飯でも食いに行かないか
正直驚いた
まさか岡崎がクリスマスイブに
よかったら飯でも食いに行かないか
正直驚いた
まさか岡崎がクリスマスイブに
誘ってくるなんて
電話口で返事をしかねていると
電話口で返事をしかねていると
岡崎が続けた
もしも今夜時間があれば
もしも今夜時間があれば
7時に待ってる
休みにひとりで晩飯も
さみしいなと思ってな
千秋なら空いているかなと思って
いやいや
千秋なら空いているかなと思って
いやいや
変な意味ではないぞ
怒るなよ
ははは と、
ははは と、
軽く笑って電話を切った
なんでも知り合いに
なんでも知り合いに
とあるチケットをもらったらしい
よく見ると日付が今夜だったそうで
アーティストの歌を聴きながら
よく見ると日付が今夜だったそうで
アーティストの歌を聴きながら
食事が出来るそうだ
ほおっておこうと思ったが
ほおっておこうと思ったが
捨てる気にもならず
私に声をかけてみた
ということだった
深い意味はないのだろう
深い意味はないのだろう
どうせ私なら
暇にしているとでも思ったのだろう
微妙な気持ちになったが
微妙な気持ちになったが
悪い気はしなかった。
それからまた少しうとうといていた
夢を見ていた気がする
そこへ再び電話が鳴った
それからまた少しうとうといていた
夢を見ていた気がする
そこへ再び電話が鳴った
岡崎さんかな
そろそろ準備しようと思ってましたよ
そろそろ準備しようと思ってましたよ
と 岡崎だと思い
そう返事をした
千秋 元気か?
!!!
今度の電話の相手は
岡崎ではなくタカシ
宮本高志
宮本高志
その人だった
うそでしょっ!
うそでしょっ!
思わず大きな声が出た
相変わらず元気そうな声だな
相変わらず元気そうな声だな
誰かさんからの電話だと思ったか
タカシ
宮本高志
タカシ
宮本高志
5年前に悔しくて悲しくて
もうこれ以上は無理だと
もうこれ以上は無理だと
必死で別れた相手
自分だけの人だと
自分だけの人だと
勝手に思っていた
自分だけを
自分だけを
見てくれていると思っていた
ずっとそばにいてくれると
ずっとそばにいてくれると
思っていた
でもやさしさは
でもやさしさは
私にだけ向けられていたものではなく
他に何人も同じような女の子がいた
他に何人も同じような女の子がいた
私はその他大勢の中の一人だった
あれはなんだったの?
あれはなんだったの?
あなたの優しさと大人のリードで
私はそれまで感じた事がなかった
私はそれまで感じた事がなかった
甘く艶やかな気持ちを知ったのに
いやぁこの間
いやぁこの間
岡崎と一緒だったろう?
まさかお前達
付き合ってるわけじゃないだろう?
いい女になったな
いい女になったな
と思ってな
逢いたいな千秋
千秋逢いたい
ああ
なんて強引な人
変わってないわね
そう言って甘い声でささやけば
そう言って甘い声でささやけば
私が子犬のようにしっぽを振って
逢いに行くとでも思っているの
逢いたいって タカシ
あなた全然変わってないわね
私は少し呆れた声でそう言ってみた
そうか?
私は少し呆れた声でそう言ってみた
そうか?
逢いたいと思ったから
そう言ったまでだ
お前は俺に逢いたくないのか
俺さまは お変わりないのね
一瞬 心がひるんだ
俺さまは お変わりないのね
一瞬 心がひるんだ
そして同時に
なんて勝手な人
と思った
頭の中ではダメだと思いながら
それでも正直な身体だけは
頭の中ではダメだと思いながら
それでも正直な身体だけは
逢いたいと
あの蜜の味を忘れられずに
サインを出していた
千秋
あなたまた
千秋
あなたまた
同じことを繰り返すつもり
どこにいるの?
こんな風に聞いてしまった時点で
どこにいるの?
こんな風に聞いてしまった時点で
私の負け
もうだめだ
やはり逢いたい
そばまで来てるよ
やはり逢いたい
そばまで来てるよ
部屋は変わってないのか?
再び驚いた
あ そうか
再び驚いた
あ そうか
この人は自分の目的の為なら
どんなに面倒なことでも
どんなに面倒なことでも
簡単にやってのける
とてもマメなタイプだった
部屋はだめ
部屋はだめ
散らかってるから
外で待ってて
外で待ってて
どこか言ってそこまで行くから
千秋の部屋に行きたい
千秋の部屋に行きたい
というかもう目の前だ
寒いから早く開けてくれよ
え? 目の前
うそっ
まだ部屋着のままの姿
今まで何処で会ってもいいように
え? 目の前
うそっ
まだ部屋着のままの姿
今まで何処で会ってもいいように
頑張ってきたのに
まさかこんな姿で
まさかこんな姿で
こんな姿を見られるなんて
嫌だ
慌てたがもう遅い
ドアを叩く音
観念してドアを開ける
おまえ まだそんな恰好だったのか
慌てたがもう遅い
ドアを叩く音
観念してドアを開ける
おまえ まだそんな恰好だったのか
変わってないな
とニヤニヤ笑っている
あなたも変わらないわね
とニヤニヤ笑っている
あなたも変わらないわね
相変わらず強引で
言い終わらないうちに
言い終わらないうちに
腕を引き寄せられた