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心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

星屑の涙・・・17

2013-10-24 15:41:29 | 星屑の涙



まだまだ残暑が厳しく重たい風が吹く夕方


教えてもらった店に着くと中からは賑やかな笑い声


達也は奥の席で居心地悪そうに座っていた


小声で「以前来た時と雰囲気が変わっててさ・・・悪いな、少し賑やか過ぎるかもしれん」


すまなそうな顔でそう言った


私はそんな事を気にしているのかと達也の別の顔を見たような気がした


「私は大丈夫よ、賑やかなの嫌いじゃないわ でもあなたが居心地悪いのなら早めに出る?」


「いや・・・真理子がいいならいいんだよ」


そう言うといつもと変わらない顔で注文をしだした


「ここの朴葉焼き美味いんだぜ、頼んでいいか?」


「ふふ・・・任せるわ、あなたの食に関するセンスはなかなかだもの」


そう、達也は食べることが好きだった


食べ物に好き嫌いもない様子だし、とにかくよく食べる


食べている姿はまるで子供だ、何でもおいしそうに食べるし見ていて気持ちがいい


そういえば、あの悲しい出来事があってから私の周りに寄って来た男たちは


大して美味しくもない噂の店に満足し、いかにも自分が美食家なんだとばかりに


うんちくを並べた


そんな姿に何度うんざりしたことか・・・


今横に座りまるで子供のように楽しそうに食事をする達也は


確実に私の心の中の氷を解かしてくれている


きっと私はこんな純粋な雰囲気を持った人を待っていたのだろう


でも・・・・所詮この人もよその女の物


結局はどうすることもできないのだが、せめてこうやって美味しいものを食している間くらいは


何も考えずにいようと思った。





私自身密な時間ばかりを持ちたいわけではない


それでも会うとお決まりのように控えているこの後の時間を考えると少し憂鬱になり


自然にこんなことを口にしていた


「ねぇ? 今夜はこの後星でも見ながらゆっくり散歩でもしない?」


突然そんな事を言い出した私を不思議そうな顔で見つめる達也


しばらく考えていたが


「そうだな、いつもお決まりのコースじゃ芸がないな たまにはスマートなデートもいいな」


そう言って私の意見に賛同しひとしきり食事を楽しんだ後


二人で店を出た 


歩きながら自然と手をつないだ まるで何年も前からそうしていたかのように・・・