東京・八王子の住宅地近くに計画された「サバイバルゲーム場」設置計画が、近隣住民の猛反発に遭っている。今月9日には1万人を超える市民が、白紙撤回を求める署名を市長あてに提出。全国3万人ともいわれる愛好家たちの努力もむなしく、「戦争ごっこ」の偏見は払拭できないようだ。なかなか理解されないサバイバルゲーマーたちの言い分とは−。
「われわれは木を1本も伐採しませんし、ゴミの回収も徹底している。使用する弾は地中に返るバイオ弾で、ゲーム場に設置する物もプレハブの受付や更衣室、周囲を囲う薄いネットや簡易トイレ程度。環境への負荷は限りなくゼロです。騒音もなく、山が荒れないように管理することで地域から感謝されたこともある。さらに税収が見込めるのですから、“優良物件”と思うのですが…」
今回の事態にこう憤るのは、関東近県でサバイバルゲーム場を営む男性従業員(33)。訪れるゲーマーらのマナーも良く、2003年のオープン以来、地域住民からの苦情はゼロという。
サバイバルゲームは、都心近郊の森を「フィールド」と称するゲーム場に仕立て、モデルガンを使って数十人が2チームに分かれて撃ち合う。迷彩服に透明ゴーグルが定番スタイルで、敵陣の旗を奪取する、相手チームをせん滅させる、などさまざまなゲームスタイルがある。
サバイバルゲーム愛好家でソフトガン安全会議委員の中嶋博行弁護士(53)は「一般人の白い目に耐えながら楽しむ、哀しい趣味なんですよ」と自虐的に前置きしつつ、その魅力について「銃を使うことで(体力に関係なく)老若男女が平等に楽しめるうえ、弾に当たったら自己申告する非常に紳士的な遊び。自然の中を駆け回るのも大きな楽しみ」と話す。
最大規模の全国大会には400人超が集まり、欧米でも新たなレジャーとして認知されつつあるが、日本では都道府県のモデルガン規制もあり人口は減少傾向という。
そんななか、愛好家たちは健全な趣味として認知してもらうべく、さまざまな努力を重ねてきた。現在は私服でフィールドに集合し、それまでは銃もケースから出さないのが原則。フィールドの外では、ゲーマーとはまず分からないという。
「どのチームもマナーには神経質になっています。ありえないことですが、万一ゲーム中に一般の方が紛れ込んだ場合、すぐにゲームを中断するルールも徹底しています」(中嶋氏)
とはいえ、自宅の近所で大勢の大人たちが“撃ち合い”をすることに不気味さを感じる気持ちは分からないでもない。だが、関東地区のベテラン愛好家はこう反論する。
「道具は安全で、ルールやマナーも徹底している。チームで作戦を立てるための思考力やコミュニケーション能力、1人で戦う際の状況判断力や基礎体力も身につく。スポーツとしての要件は十分満たしていると思う」
結局、実際に体験しないと、その是非は判断できないのかもしれない。