いよいよ明日から北京オリンピックです。
いろいろありますが、ここまで準備をしてきた人々にとっては、大事な時ですし、4年に1度の祭典ですので、楽しみたいですね。いや、こちらは、まだまだ過去問だ(笑)。
【問題】
第18問
詐害行為取消権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
ア 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権の行使の対象とすることができる。
イ 不動産の引渡請求権を保全するために債務者から受益者へ目的不動産の処分行為を詐害行為として取り消す場合には、債権者は、受益者から債権者へ所有権移転登記手続を請求することができる。
ウ 抵当権が設定された不動産についてされた譲渡担保契約を詐害行為として取り消す場合には、債権者は、不動産の価額から抵当権の被担保債権の額を控除した額の価額賠償を請求することができるが、不動産の返還の請求をすることはできない。
エ 詐害行為の受益者が債権者を害すべき事実について善意であるときは、転得者が悪意であっても、債権者は転得者に対して詐害行為取消権を行使することができない。
オ 債権者が受益者を相手方として詐害行為取消しの訴えを提起した場合であっても、その被担保債権の消滅時効は、中断しない。
1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ
【感想】
今年は債権者代位という話があったはずですが、結局出たのは詐害行為取消の方でした。しかし、中身はいたってシンプル。
【考察】
肢アは、おなじみの論点。遺産分割協議には財産権を目的とする法律行為としての性格があるので、詐害行為取消の対象となりうる、という平成11年の判例から。同様の理由で財産分与にも詐害行為取消ができる場合があるというのも典型。したがって○
肢イは、詐害行為取消をしたとしても、債権者名義への所有権移転登記まではできない、という昭和53年の判例から・・というか、不登法でも詐害行為取消は抹消登記をしますね。今読むと、不動産の引渡し請求を被保全債権とできるか、ということも聞いてますね。これは、昭和36年の判例で可能。前半部分が○、後半部分が×。したがって、×。
肢ウは、知りませんでした。判例六法によると、昭和36年の判例に「取消の目的物が一棟の家屋の代物弁済で不可分のものと認められるときは、一部取消の限度で価格の賠償を請求するほかない(最判昭36.7.19)。」というのがありますね。ちょっとこの辺の処理の仕方は複雑ですね。不動産の返還が認められるのは当然なので、前半が○、後半が×、という構造なんですか・・意外と聞いていることが多いかな。
肢エは、受益者が善意であっても、転得者が悪意ならば、相対的に判断して転得者に詐害行為取消権の主張ができるという判例から。したがって×。
肢オは、債権者と受益者との間での訴えで、債務者は関係ないので債権者と債務者との間の被担保債権が中断することはないと・・ここも、なんかいろいろと派生知識を補強しておいた方がいいような気がします。これは○。
正解は、2です。
肢アと肢イだけで正解は出ますが、ちょっと、この問題で問われている論点は後日、広げておきたいです。この問題以前の論点と意識して被らせているような作りにもなっていますし。
【条文】
第424条(詐害行為取消権)
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消を裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為においては適用しない。
【判例】
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、相続の開始により共同相続人の共有となった相続財産の全部又は一部を各相続人の単独所有とし、または新たな共有関係に移行させることによって相続財産の帰属を確定させるから、その性質上、財産権を目的とする法律行為ということができ、詐害行為取消権の対象となりうる。(最判平11.6.11)
不動産の引渡請求権者が債務者による目的不動産の処分行為を詐害行為として取消す場合において、直接自己に所有権移転登記を求めることはできない。(最判昭53.10.5)
取消の目的物が一棟の家屋の代物弁済で不可分のものと認められるときは、一部取消の限度で価格の賠償を請求するほかない。(最判昭36.7.19)
債権者が受益者を相手どってなした詐害行為取消しの訴えの提起は、その前提となる債権の消滅時効を中断しない。(最判昭37.10.12)
いろいろありますが、ここまで準備をしてきた人々にとっては、大事な時ですし、4年に1度の祭典ですので、楽しみたいですね。いや、こちらは、まだまだ過去問だ(笑)。
【問題】
第18問
詐害行為取消権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
ア 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権の行使の対象とすることができる。
イ 不動産の引渡請求権を保全するために債務者から受益者へ目的不動産の処分行為を詐害行為として取り消す場合には、債権者は、受益者から債権者へ所有権移転登記手続を請求することができる。
ウ 抵当権が設定された不動産についてされた譲渡担保契約を詐害行為として取り消す場合には、債権者は、不動産の価額から抵当権の被担保債権の額を控除した額の価額賠償を請求することができるが、不動産の返還の請求をすることはできない。
エ 詐害行為の受益者が債権者を害すべき事実について善意であるときは、転得者が悪意であっても、債権者は転得者に対して詐害行為取消権を行使することができない。
オ 債権者が受益者を相手方として詐害行為取消しの訴えを提起した場合であっても、その被担保債権の消滅時効は、中断しない。
1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ
【感想】
今年は債権者代位という話があったはずですが、結局出たのは詐害行為取消の方でした。しかし、中身はいたってシンプル。
【考察】
肢アは、おなじみの論点。遺産分割協議には財産権を目的とする法律行為としての性格があるので、詐害行為取消の対象となりうる、という平成11年の判例から。同様の理由で財産分与にも詐害行為取消ができる場合があるというのも典型。したがって○
肢イは、詐害行為取消をしたとしても、債権者名義への所有権移転登記まではできない、という昭和53年の判例から・・というか、不登法でも詐害行為取消は抹消登記をしますね。今読むと、不動産の引渡し請求を被保全債権とできるか、ということも聞いてますね。これは、昭和36年の判例で可能。前半部分が○、後半部分が×。したがって、×。
肢ウは、知りませんでした。判例六法によると、昭和36年の判例に「取消の目的物が一棟の家屋の代物弁済で不可分のものと認められるときは、一部取消の限度で価格の賠償を請求するほかない(最判昭36.7.19)。」というのがありますね。ちょっとこの辺の処理の仕方は複雑ですね。不動産の返還が認められるのは当然なので、前半が○、後半が×、という構造なんですか・・意外と聞いていることが多いかな。
肢エは、受益者が善意であっても、転得者が悪意ならば、相対的に判断して転得者に詐害行為取消権の主張ができるという判例から。したがって×。
肢オは、債権者と受益者との間での訴えで、債務者は関係ないので債権者と債務者との間の被担保債権が中断することはないと・・ここも、なんかいろいろと派生知識を補強しておいた方がいいような気がします。これは○。
正解は、2です。
肢アと肢イだけで正解は出ますが、ちょっと、この問題で問われている論点は後日、広げておきたいです。この問題以前の論点と意識して被らせているような作りにもなっていますし。
【条文】
第424条(詐害行為取消権)
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消を裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為においては適用しない。
【判例】
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、相続の開始により共同相続人の共有となった相続財産の全部又は一部を各相続人の単独所有とし、または新たな共有関係に移行させることによって相続財産の帰属を確定させるから、その性質上、財産権を目的とする法律行為ということができ、詐害行為取消権の対象となりうる。(最判平11.6.11)
不動産の引渡請求権者が債務者による目的不動産の処分行為を詐害行為として取消す場合において、直接自己に所有権移転登記を求めることはできない。(最判昭53.10.5)
取消の目的物が一棟の家屋の代物弁済で不可分のものと認められるときは、一部取消の限度で価格の賠償を請求するほかない。(最判昭36.7.19)
債権者が受益者を相手どってなした詐害行為取消しの訴えの提起は、その前提となる債権の消滅時効を中断しない。(最判昭37.10.12)