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そして、バトンは渡された / 瀬尾まいこ

2024年09月10日 | 読んだ小説
                    


主人公の女子高生の娘は、いろいろな事情で17年間の人生で父親が3人、母親が2人、家族の形態が7回
変わったかなり珍しい境遇だ。 

最初に3歳の時に実の母親が亡くなって、小学生の時に父親が再婚して、その後、父親が継母と別れ娘を
置いて海外に単身赴任して、しばらくは継母と2人で暮らしていたが、その後に継母が別の男性と再婚し
3人で暮らすようになった。 しかし、継母はすぐに夫と別居し娘は2人目の父親である継父と3年ほど
暮らしたが、出て行った継母は継父と別れ別の男性と再婚した。 そして娘は、また継母の元に戻って新
しい次の継父を得たが、継母はすぐにその継父とも別れてしまい娘を置いて出ていき、今はその3人目の
父親と娘の2人で暮らしていた。

そして、どの親も娘の事を愛してくれて、娘の方も、どの親の事も慕い幸せに暮らしていた。
しかし、そんな世の中に善人な良い親ばかりいるかなとも思うが、どの親も良い親になろうと、娘も良い
娘になろうと努力していて、家族ごっこだとしても各親も娘も真っ当で真面目な人達なんだと思う。
特に2人目の母親は、かなり奔放で、いろんな状況へと良くも悪くも娘を導いた人のようにも思えたが、
実は娘の事を思って必死に行動してくれていた愛情深い人だった事が後の方で分かる。

海外に単身赴任した実の父親だが、娘に100通以上もの手紙を送っても何の返事もなければ、心配して国際
電話を掛けるとか、一時帰国して娘の様子を見に来るとかするのが普通だと思うが、帰国してからも2人
目の母親に「娘に会いたい」と言っても拒否されると、それ以上強く出なかったのは、実父は優しい人だ
から娘の今の生活を壊したくはないという思いからだったのかもしれない。

こんな数奇な運命の主人公の娘だが凄く残念なのが、実の父親が海外に行ってしまうまでは交流のあった
祖父母と完全に疎遠になっている事で、娘が22歳になって結婚を決意してからは、2番目の父親と2番目
の母親に報告に行ったのは当然だし良い事だと思うけど、今は3人目の父親と暮らしていても、かつては
一緒に暮らしたり娘や孫として愛し可愛がってくれた人達と、もう少し普段から付き合いがあったら嬉し
かったのになと思う。 

最後は結婚式で、実父もその後の親達も一堂に会する事ができたのは凄く良かった。 そして、バージン
ロードを娘と共に歩くのを3人目の父親が務め、これから娘と2人で新しい人生を始める新郎に、実父
から各親を経て託されてきたバトンを渡すような感動的なシーンだった。 娘が数奇な人生で得た教訓の
「一番大事なのは友達じゃなくて家族」というのを、新しい家族になる新郎と共に幸せな家庭を築いて
いってほしいし、これからもずっと、すべての親達とも普段からの繋がりを持っていてほしいと思った。


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