異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説『呆け茄子の花 その二』

2016年03月16日 20時54分58秒 | 小説『呆け茄子の花』
尚樹は気脈の通じている直属の上司に「退社」の意志を告げた。

直属の上司は、以前勤めていた会社を辞めこの会社に就職したので

なんらかのアドバイスを貰えると思ったからだ。

アドバイスの内容は要して『立つ鳥跡を濁さず』というものだった。

その時、会社との交渉は始まっていたが、

『暖簾に腕押し』の対応に業を煮やしていたところだった。

そんな中の『立つ鳥跡を濁さず』のアドバイスは「熱した鉛を飲む」思いで聞いた。

尚樹の勤める会社は、尚樹が勤め始めた当初は

創業者が社長を務める言わば「ワンマン」の会社であった。

その当時は立ち上げ当初の会社員も居て、夏場など社長の号令で一部の社員に

拘束時間中だというのにバーベキューの用意に走らすなど良い面もあった。

しかし、創業者が会長に退き創業者メンバーで「社長の右腕」と頼る常務が社長になり、

創業者の娘婿が専務に就くと、専務の専横が始まり、会社の業績は上がったが、

会社全体に一体感が無くなり、「物言わぬロボットが作っている」様だった。

全てがシステマチックになり、他言は許されなくなった。

そんなところで「保証」を求められる状況では無かったが、

尚樹は「どうせ辞めるのだから・・・」と、半分自暴自棄になり交渉に挑んだのだが、

交渉相手が、元常務で今はサラリーマン社長の奥村であったので

具体的な話にはならなかった。

本丸の娘婿専務である大三郎を引き出さなければと思っていた。

しかし、この専務の大三郎、正社員の経験が無く、また高校に進学せず

ブラブラしていて、その時たまたま交際していた

当時の創業者社長の娘と付き合っていて、子を孕んだので息子の居ない社長家に

婿養子として入ったのだ。

大三郎の専横振りは、その時の社員を震え上がらせた。

「全ては金」という考えの基、「札で頬を叩く」様な振る舞いで、

またそれを注意する古参の社員も首をすくめていた。

尚樹はそんな相手と交渉のテーブルに着こうとしていた。




「その3」につづく








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