小児科医の独り言

友人の小児科医の独り言を代筆しつつ、自分の書きたいことを書いています。

死亡診断、安楽死、移植などに関して

2005-04-03 06:51:57 | Weblog
死亡診断、安楽死、移植などに関して

 有名な話しですが日本の医療はワクチン以外で移植に関して後進国です。
 日本人の観念として心臓停止が死となっていることと、死亡後もそのまま天国に行く、もしくは輪廻転生などの概念が、移植が進まない一因と考えられます。
 極端ですが、重症患者の生命維持を中止して告訴されたり、問題視されたりするケースが報道されました。 
また数日前の報道にありましたが、中国の病院での腎臓移植「斡旋」が法に触れると言うことで摘発されていました。
 一つ一つ問題をかかえており解決は難しいのですが、将来的には解決し整理されてこないと困ったことになります。
 移植に関して言えば、具体的には日本で臓器提供が少ないため、海外に出て移植するケースがたくさんあります。このことを、海外に行って移植してくればよいのではないかと思うのであれば、恥ずかしいことです。誤解のないようにくどく書きますが海外での移植が恥ずかしいのではなく、日本で臓器提供が少なくて、移植が進まないと言う状況が恥ずかしいです。
 日本では小児の脳死は認められていないため、小児の心臓移植が必要な患者さんは日本国内では移植が出来ません。
 もちろん、だから、脳死を増やせとか、臓器移植を断ったら悪い人間だと言うことではありません。これは、人間の考え方ですから尊重されるべきだと思います。しかし、一方で移植を受ける身になった場合、そんな悠長なことを言っていられません、命に関わるので臓器提供者が出ることを望むのは当然と思います。
 別に私が解決法を知っているわけではありませんが、偉大な哲学者なりが「こうしなさい!」と決めてくれると楽だなーと思っています。あとは政府方針で「こうしなさい」と言ってくれても良いですが、日本の政府や御役人様はいまひとつ信用できず、その指針が妥当と思えるものが出来上がるか不安ですし、残念ながら、やる気は全くないでしょう。
 死亡判断に関しては、悩みます。人工呼吸器を使用していればいつまでも呼吸は続けますし、心臓ペースメーカーを着けていれば電気的に心臓は心拍を打ちます(いずれ動かなくなりますが)。どの時点で死亡とするか悩むケースは絶対にありますし、明らかに予後不良の場合に人工呼吸器、ペースメーカーなどを行うかというと使わない場合出てきてしまいます。しかし、医師は神ではありませんから、そんなことを決める能力があるわけではありません。小児で明らかに脳死と考えられるケースでも、脳死と診断せずに人工呼吸をして何ヶ月か心臓が止まるのを待つケースが中にはあります。このような事例の判断はもちろんここのケースによって違いますが、何の指針もないまま個人の医師が葛藤しながら行うというのは辛いことも多いです。ときどき決まりがあれば楽なのにと思うことがあります。
 以上は個人的な意見で、一般的な意見ではありませんが、今後どうなっていくのでしょうね。