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土門拳と入江泰吉

2018年06月17日 05時00分00秒 | ハチパパのひとり言

           

土門拳と入江泰吉はあまりにも有名で、素人の私には雲の上の写真家であるが、お寺の風景や仏像の写真をライフワークにしている自分としては、その作風とか考えに共鳴する部分が多い。とくに土門拳さんの作品は、13年ほど前に酒田市の土門拳記念館で見た、迫力ある大きな写真が強烈に目に焼きついている。

土門さんは報道写真家としてスタート、筑豊のこどもたちを撮った写真集で一躍有名になったが、30歳のとき初めて室生寺を訪れ、その翌年からライフワークとなる古寺巡礼が始まった。昭和の時代ずっと寺院建築、仏像を撮り続け、室生寺や中尊寺金色堂など、好きなものだけを生涯撮り続けたという。

納得するまで仏と対峙する姿勢は、脳出血で倒れてからも変わらず、お弟子さんたちは苦労の連続だっただろうが、出来上がった写真は誰もが頷く迫力のあるもので、同氏著「車椅子からの視点」にはこんな文章を書いている。

『ぼくは被写体に対峙し、ぼくの視点から相手を睨みつけ、そしてときには語りかけながら被写体がぼくを睨みつけてくる視点をさぐる。そして火花が散るというか、二つの視点がぶつかったときがシャッターチャンスである。バシャリとシャッターを切り、その視点をたぐり寄せながら前へ前へとシャッターを切って迫っていくわけである。

私の仏像写真は土門さんとは大違い。どっしりと対峙しているというより、単なる信仰心と祈りの情景として捉えることが多い。いままでの仏像写真展では、来場者から『癒されます』とか『優しい』というお話しをいただいているが、土門さんのような迫力のあるものではない。けれども土門さんだったらどう撮るか撮影手法を真似したりして、顔や手やお腹だけというような写真もたくさん撮っている。

一方、入江泰吉さんは奈良のご出身で、お兄さんの影響で写真にのめり込んだと本には書いてある。大阪で写真店を開いたが戦災で焼失、失意のうちに戻ったふるさとの美しい情景、すぐれた仏像に惹かれる。50年もの長い年月をかけて、大和路を撮り続けた写真家としてつとに有名である。

私見であるが、入江さんは土門さんとは正反対の、やわらかい感性が漂っている写真が多いように思う。お寺の風景でも仏像でも、お二方どちらの写真も私は好きだ。飛鳥の風景などは入江さんの感性を真似て撮影したりした記憶がある。

土門さんは1990年(平成2年)81歳で、入江さんは1992年(平成4年)87歳で亡くなるまで、生涯現役を通してお寺や仏像の写真を撮り続けた。私も寺社・仏像写真を生涯現役で撮影したいと思う。

 

 



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