月・火と、仕事をした。
仕事というのは、互助会の勧誘。
冠婚葬祭業のサポート。
営業の人ひとりと、
道行く人にアンケートを配る人ふたり。
合計3人でワンセット。
そのうちのアンケートのひとりが、
私となるわけだけど。
もうひとりの
アンケートを取る人がオメデタで、
時期にやめると言う。
しかも、
私が出勤する一週間は、実家に帰るため出勤しない。
つまり、状況的に、
営業の人と、
マンツー状態。
しかしそのマンツー状態も
初日から、
営業の人の予定に、
お通夜が入ったため、
その準備の合間に、
私の世話を焼くといった状態で。
営業の人が出ているあいだ、
私はずっと会社概要に関する
ビデオなどを見て過ごし、
昼からは、その営業の人が戻ってきて、
結婚式場に連れて行かれて、
披露宴会場を案内されて。
そして、納棺に行かなければならないということで、
10時~15時が勤務時間なんだけれど、
14時半には帰してくれて。
忙しいのは、わかる。
わかるし、15時までのお給料分で、
30分早く返してくれるのは、ラッキーなんだけど、
何か、違和感が残る。
私に対する、
ちょっとした世話の焼き方に、
妙な違和感が残る。
が、それが何だかわからないまま、その日は終わる。
★
火曜日は、月曜日お通夜だったお客さんの、
お葬式のサポートで、
営業の人は終日いなかった。
それは聞いていた。
で、となりの営業の部署の、
ベテランのパートさんにくっついて、
アンケートの取り方を、
見るだけでいいから、と
言われていた。
が、となりの部署の人は、
見るだけでいいなんて思っていない。
私も、内心
「そんなごまめちゃん扱いで、いいんだろうか」と
思っていたので、
隣の部署の人達の言われるがまま、
道具を借りて、
実践させてもらった。
途中、公園でみんなで休憩をとった時、
「あの○○さん(←営業さんのこと)、
Aさん(オメデタになってお休み中の人)がいなくなったら、
きっとあなたに、べったりになるわ」
と、ベテランのパートさんがつぶやいた。
「え?」と思ったけれど、
深く聞けずに、別の人が別の話題を持ち出した。
べったり……?
★
そして昼からは、
昨日営業さんは、
「お金はちゃんとつけるから、帰ってくれていいから」
と言ってくれていたけれど、
やはり、それはどうなんだろうと思っていたし、
隣の部署の人たちも、
「何も言われていないの?
一応15時までだからねぇ……」と苦く濁ったことを言う。
そんなところへ、
お葬式が一段落し、
お昼を食べ終えた営業さんから、
私のケータイに電話が入る。
「周囲の目はあまり気にしないで、
頃合を見計らって、帰ってくれたらいいよ」
という。
アバウトというよりは、やさしすぎ。
いや、甘すぎる。
経験上、上司にあたる人が、
甘すぎるとウラがあると計算する。
簡単にパターンで、人を見てはいけないよ、
と、内心、たしなめるてはいたものの。
かろうじて、パンフレットとはんこを見つけて、
ずっと捺印したりして時間をすごし、
結局15時ギリギリまでいた。
★
帰宅して、ごはんをつくろうかな、と、五時ごろ。
ケータイがなる。
営業さんからだった。
「いや、結局何時に帰ったか、一応聞いておこうかと思って」
ということだった。
私は簡単に答えて、
明日はお休みなんで、
ひととおり連絡事項を話して、電話を切ろうとした。
がしかし。
「元気な声やなぁ」と言ってくる。
「疲れてたんやけど、なんか元気出てきたわ」と言ってくる。
「先月は俺、休みなしやってん」と言ってくる。
どんどん芋ズル式に話し込んでくる。
なんだ、この粘り気のある内容は。
ユーモアのかけらもない母親扱いは。
ぎこちなく社交辞令のあいづちをうちながら、
警戒心発令。
★
それでわかった。
昨日からの、違和感。
その人が私に働きかけてくるものすべての裏に、
「褒めて!褒めて!」のメタファーがあったのだ。
例えば、
「稲田さん(ここでは仮名)が来ると思って、床、ワックスかけてんで。
他の部署見てみ。汚いやろ」
……私のためになんて言うなよ!ゾクッとさぶくなるんだよ!
などなどなどなど……。
この他にも、食べ物をやけに分け与えてくれたり。
どうも、仕事の本質より、
その営業さんの自己アピールばかりを感じていたから、
違和感があったのだ。
そういうのが、仕事をする上で、
潤滑油になるのはわかっているが、
まだ信頼関係も築き上げてないのに、
潤滑油ばかりというのは、
ぬるぬるして、気持ち悪い。
★
でねでね、こういうことを、
私だけにしかしていないというのなら、
稲田の単なる自意識過剰だと
思う人もいるだろうけど、
ケータイの話の中で、
「さっき、Aさんにも電話をしたけれど、
彼女も元気な声やったわ」
なんて言ったから、ものすごく嫌悪感炸裂したのだ。
おいおい。お休みの人にまで、電話かけるんかい!
しかも実家に戻っている妊婦さんに!
お前は、会社で一緒に働く女性に、
何を求めてるねん!!!!!!
ベテランのパートさんのつぶやきの
「べったり」の意味が、
沁みるようにわかった。
★
なんとかかんとか、電話を切って、
憂鬱になった。
私がこの仕事を決めたのは、
アンケートばっかりではないというところだった。
結婚式のお手伝いとか、
お通夜のお手伝いとか、
結構多彩で、
それでいて、
週4日、
一日実労4時間ということは守られるので、
休みの融通が利くし、
変化もあるので、興味を持ったのだ。
だが、それらは、基本的にあくまでサポート。
どこへ移動するにしても、
あの営業さんとふたりで移動するということ。
夜の時間帯とかで、
あの営業さんの車の助手席に乗ったりするということ。
想像すると、気持ち悪い。
おぞましい。
コノヤローという反発心の芯は、心細さのガラスの棒だ。
そこをよく自覚しながら。
夫に相談したら、聞きながら眠りこけた。
仕方がない。真夜中の二時だったからなぁ。
さて、どう乗り越えよう。
このざわめきを、
静謐な湖に戻すには。
仕事というのは、互助会の勧誘。
冠婚葬祭業のサポート。
営業の人ひとりと、
道行く人にアンケートを配る人ふたり。
合計3人でワンセット。
そのうちのアンケートのひとりが、
私となるわけだけど。
もうひとりの
アンケートを取る人がオメデタで、
時期にやめると言う。
しかも、
私が出勤する一週間は、実家に帰るため出勤しない。
つまり、状況的に、
営業の人と、
マンツー状態。
しかしそのマンツー状態も
初日から、
営業の人の予定に、
お通夜が入ったため、
その準備の合間に、
私の世話を焼くといった状態で。
営業の人が出ているあいだ、
私はずっと会社概要に関する
ビデオなどを見て過ごし、
昼からは、その営業の人が戻ってきて、
結婚式場に連れて行かれて、
披露宴会場を案内されて。
そして、納棺に行かなければならないということで、
10時~15時が勤務時間なんだけれど、
14時半には帰してくれて。
忙しいのは、わかる。
わかるし、15時までのお給料分で、
30分早く返してくれるのは、ラッキーなんだけど、
何か、違和感が残る。
私に対する、
ちょっとした世話の焼き方に、
妙な違和感が残る。
が、それが何だかわからないまま、その日は終わる。
★
火曜日は、月曜日お通夜だったお客さんの、
お葬式のサポートで、
営業の人は終日いなかった。
それは聞いていた。
で、となりの営業の部署の、
ベテランのパートさんにくっついて、
アンケートの取り方を、
見るだけでいいから、と
言われていた。
が、となりの部署の人は、
見るだけでいいなんて思っていない。
私も、内心
「そんなごまめちゃん扱いで、いいんだろうか」と
思っていたので、
隣の部署の人達の言われるがまま、
道具を借りて、
実践させてもらった。
途中、公園でみんなで休憩をとった時、
「あの○○さん(←営業さんのこと)、
Aさん(オメデタになってお休み中の人)がいなくなったら、
きっとあなたに、べったりになるわ」
と、ベテランのパートさんがつぶやいた。
「え?」と思ったけれど、
深く聞けずに、別の人が別の話題を持ち出した。
べったり……?
★
そして昼からは、
昨日営業さんは、
「お金はちゃんとつけるから、帰ってくれていいから」
と言ってくれていたけれど、
やはり、それはどうなんだろうと思っていたし、
隣の部署の人たちも、
「何も言われていないの?
一応15時までだからねぇ……」と苦く濁ったことを言う。
そんなところへ、
お葬式が一段落し、
お昼を食べ終えた営業さんから、
私のケータイに電話が入る。
「周囲の目はあまり気にしないで、
頃合を見計らって、帰ってくれたらいいよ」
という。
アバウトというよりは、やさしすぎ。
いや、甘すぎる。
経験上、上司にあたる人が、
甘すぎるとウラがあると計算する。
簡単にパターンで、人を見てはいけないよ、
と、内心、たしなめるてはいたものの。
かろうじて、パンフレットとはんこを見つけて、
ずっと捺印したりして時間をすごし、
結局15時ギリギリまでいた。
★
帰宅して、ごはんをつくろうかな、と、五時ごろ。
ケータイがなる。
営業さんからだった。
「いや、結局何時に帰ったか、一応聞いておこうかと思って」
ということだった。
私は簡単に答えて、
明日はお休みなんで、
ひととおり連絡事項を話して、電話を切ろうとした。
がしかし。
「元気な声やなぁ」と言ってくる。
「疲れてたんやけど、なんか元気出てきたわ」と言ってくる。
「先月は俺、休みなしやってん」と言ってくる。
どんどん芋ズル式に話し込んでくる。
なんだ、この粘り気のある内容は。
ユーモアのかけらもない母親扱いは。
ぎこちなく社交辞令のあいづちをうちながら、
警戒心発令。
★
それでわかった。
昨日からの、違和感。
その人が私に働きかけてくるものすべての裏に、
「褒めて!褒めて!」のメタファーがあったのだ。
例えば、
「稲田さん(ここでは仮名)が来ると思って、床、ワックスかけてんで。
他の部署見てみ。汚いやろ」
……私のためになんて言うなよ!ゾクッとさぶくなるんだよ!
などなどなどなど……。
この他にも、食べ物をやけに分け与えてくれたり。
どうも、仕事の本質より、
その営業さんの自己アピールばかりを感じていたから、
違和感があったのだ。
そういうのが、仕事をする上で、
潤滑油になるのはわかっているが、
まだ信頼関係も築き上げてないのに、
潤滑油ばかりというのは、
ぬるぬるして、気持ち悪い。
★
でねでね、こういうことを、
私だけにしかしていないというのなら、
稲田の単なる自意識過剰だと
思う人もいるだろうけど、
ケータイの話の中で、
「さっき、Aさんにも電話をしたけれど、
彼女も元気な声やったわ」
なんて言ったから、ものすごく嫌悪感炸裂したのだ。
おいおい。お休みの人にまで、電話かけるんかい!
しかも実家に戻っている妊婦さんに!
お前は、会社で一緒に働く女性に、
何を求めてるねん!!!!!!
ベテランのパートさんのつぶやきの
「べったり」の意味が、
沁みるようにわかった。
★
なんとかかんとか、電話を切って、
憂鬱になった。
私がこの仕事を決めたのは、
アンケートばっかりではないというところだった。
結婚式のお手伝いとか、
お通夜のお手伝いとか、
結構多彩で、
それでいて、
週4日、
一日実労4時間ということは守られるので、
休みの融通が利くし、
変化もあるので、興味を持ったのだ。
だが、それらは、基本的にあくまでサポート。
どこへ移動するにしても、
あの営業さんとふたりで移動するということ。
夜の時間帯とかで、
あの営業さんの車の助手席に乗ったりするということ。
想像すると、気持ち悪い。
おぞましい。
コノヤローという反発心の芯は、心細さのガラスの棒だ。
そこをよく自覚しながら。
夫に相談したら、聞きながら眠りこけた。
仕方がない。真夜中の二時だったからなぁ。
さて、どう乗り越えよう。
このざわめきを、
静謐な湖に戻すには。