日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

クライシス②

2006年04月04日 | お仕事な日々
月・火と、仕事をした。

仕事というのは、互助会の勧誘。
冠婚葬祭業のサポート。

営業の人ひとりと、
道行く人にアンケートを配る人ふたり。
合計3人でワンセット。

そのうちのアンケートのひとりが、
私となるわけだけど。

もうひとりの
アンケートを取る人がオメデタで、
時期にやめると言う。
しかも、
私が出勤する一週間は、実家に帰るため出勤しない。

つまり、状況的に、
営業の人と、
マンツー状態。

しかしそのマンツー状態も
初日から、
営業の人の予定に、
お通夜が入ったため、
その準備の合間に、
私の世話を焼くといった状態で。

営業の人が出ているあいだ、
私はずっと会社概要に関する
ビデオなどを見て過ごし、

昼からは、その営業の人が戻ってきて、
結婚式場に連れて行かれて、
披露宴会場を案内されて。

そして、納棺に行かなければならないということで、
10時~15時が勤務時間なんだけれど、
14時半には帰してくれて。

忙しいのは、わかる。
わかるし、15時までのお給料分で、
30分早く返してくれるのは、ラッキーなんだけど、
何か、違和感が残る。

私に対する、
ちょっとした世話の焼き方に、
妙な違和感が残る。

が、それが何だかわからないまま、その日は終わる。

     ★

火曜日は、月曜日お通夜だったお客さんの、
お葬式のサポートで、
営業の人は終日いなかった。

それは聞いていた。

で、となりの営業の部署の、
ベテランのパートさんにくっついて、
アンケートの取り方を、
見るだけでいいから、と
言われていた。

が、となりの部署の人は、
見るだけでいいなんて思っていない。

私も、内心
「そんなごまめちゃん扱いで、いいんだろうか」と
思っていたので、
隣の部署の人達の言われるがまま、
道具を借りて、
実践させてもらった。

途中、公園でみんなで休憩をとった時、

「あの○○さん(←営業さんのこと)、
Aさん(オメデタになってお休み中の人)がいなくなったら、
きっとあなたに、べったりになるわ」

と、ベテランのパートさんがつぶやいた。

「え?」と思ったけれど、
深く聞けずに、別の人が別の話題を持ち出した。

べったり……?

     ★

そして昼からは、
昨日営業さんは、
「お金はちゃんとつけるから、帰ってくれていいから」
と言ってくれていたけれど、

やはり、それはどうなんだろうと思っていたし、
隣の部署の人たちも、

「何も言われていないの?
一応15時までだからねぇ……」と苦く濁ったことを言う。

そんなところへ、
お葬式が一段落し、
お昼を食べ終えた営業さんから、
私のケータイに電話が入る。

「周囲の目はあまり気にしないで、
頃合を見計らって、帰ってくれたらいいよ」

という。

アバウトというよりは、やさしすぎ。
いや、甘すぎる。

経験上、上司にあたる人が、
甘すぎるとウラがあると計算する。

簡単にパターンで、人を見てはいけないよ、
と、内心、たしなめるてはいたものの。

かろうじて、パンフレットとはんこを見つけて、
ずっと捺印したりして時間をすごし、
結局15時ギリギリまでいた。

     ★

帰宅して、ごはんをつくろうかな、と、五時ごろ。
ケータイがなる。

営業さんからだった。

「いや、結局何時に帰ったか、一応聞いておこうかと思って」

ということだった。

私は簡単に答えて、
明日はお休みなんで、
ひととおり連絡事項を話して、電話を切ろうとした。

がしかし。

「元気な声やなぁ」と言ってくる。
「疲れてたんやけど、なんか元気出てきたわ」と言ってくる。
「先月は俺、休みなしやってん」と言ってくる。

どんどん芋ズル式に話し込んでくる。

なんだ、この粘り気のある内容は。
ユーモアのかけらもない母親扱いは。

ぎこちなく社交辞令のあいづちをうちながら、
警戒心発令。

     ★

それでわかった。
昨日からの、違和感。

その人が私に働きかけてくるものすべての裏に、

「褒めて!褒めて!」のメタファーがあったのだ。

例えば、

「稲田さん(ここでは仮名)が来ると思って、床、ワックスかけてんで。
他の部署見てみ。汚いやろ」
     ……私のためになんて言うなよ!ゾクッとさぶくなるんだよ!

などなどなどなど……。

この他にも、食べ物をやけに分け与えてくれたり。

どうも、仕事の本質より、
その営業さんの自己アピールばかりを感じていたから、
違和感があったのだ。

そういうのが、仕事をする上で、
潤滑油になるのはわかっているが、
まだ信頼関係も築き上げてないのに、
潤滑油ばかりというのは、
ぬるぬるして、気持ち悪い。

     ★

でねでね、こういうことを、
私だけにしかしていないというのなら、
稲田の単なる自意識過剰だと
思う人もいるだろうけど、

ケータイの話の中で、

「さっき、Aさんにも電話をしたけれど、
彼女も元気な声やったわ」

なんて言ったから、ものすごく嫌悪感炸裂したのだ。

おいおい。お休みの人にまで、電話かけるんかい!
しかも実家に戻っている妊婦さんに!

お前は、会社で一緒に働く女性に、
何を求めてるねん!!!!!!

ベテランのパートさんのつぶやきの
「べったり」の意味が、
沁みるようにわかった。

     ★

なんとかかんとか、電話を切って、
憂鬱になった。

私がこの仕事を決めたのは、
アンケートばっかりではないというところだった。

結婚式のお手伝いとか、
お通夜のお手伝いとか、
結構多彩で、
それでいて、
週4日、
一日実労4時間ということは守られるので、
休みの融通が利くし、
変化もあるので、興味を持ったのだ。

だが、それらは、基本的にあくまでサポート。

どこへ移動するにしても、
あの営業さんとふたりで移動するということ。

夜の時間帯とかで、
あの営業さんの車の助手席に乗ったりするということ。

想像すると、気持ち悪い。
おぞましい。

コノヤローという反発心の芯は、心細さのガラスの棒だ。
そこをよく自覚しながら。

夫に相談したら、聞きながら眠りこけた。
仕方がない。真夜中の二時だったからなぁ。

さて、どう乗り越えよう。

このざわめきを、
静謐な湖に戻すには。

最新の画像もっと見る